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第3章 EarthKAMプログラムの概要


★EarthKAMプログラムについて紹介します。

3.1 概要
 EarthKAMとは"Earth Knowledge Acquired by Middle School Students"の頭文字をとったもので、米国の中学校の生徒らが参加して、スペースシャトル搭載の電子カメラを使って地球の写真を撮り、それらを活用して理科・社会科分野の諸テーマで研究を行う教育プログラム(*1)です。
 参加校の生徒たちは撮影地点を選定し、インターネットを利用して、撮影指示コマンドをシャトルに送り、撮影された電子写真は数時間後に地上に送信され、インターネット上で閲覧が可能となります。
 これまで4回の飛行の実績(*2)があり、参加校は数十校以上にのぼり、既に2000枚以上の地球の写真を撮影しています。また将来は国際宇宙ステーションに搭載して実施する予定です。

 (*1)EarthKAMの教育目的
本プログラムへの参加により以下のような学習・教育効果があります。
・地球観測・地球科学・地学・宇宙科学(シャトル飛行・地球運動)等の理科分野、地理学・環境問題・社会問題等の社会科分野での研究・学習
・コンピュータ・インターネットの活用並びにグループでの企画力、問題解決力
・他グループとの協力の育成等
(*2)EarthKAMの実績
 これまで4回の飛行(STS-76/STS-81/STS-86/STS-89)において実施されました(内3回はKidSatの名称でNASA ジェット推進研究所(JPL)が主体となって実施)。
 7月に予定されているSTS-93に続き、STS-99が6回目の飛行となる予定。
 参加経験学校数は数十校(参加校は順に3校/17校/約50校/40校弱であり、次回STS-93では84校が参加予定。リピート校も多い。)

3.2 実施体制
(1)実施主体
 米国航空宇宙局NASA
 資金提供の他、シャトルフライト・EarthKAM機器の搭載、JSCミッションコントロール等実施(フライト・機器等面での実施・運用)
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)
 実際の運営(教育プログラムとしての)とりまとめ。Sally Ride教授(米国初の女性宇宙飛行士)を中心とするグループで、カレッジ学生、高校生がサポートする。

(2)協力機関
米国航空宇宙局NASA
NASAは、NASA本部の資金協力の他、JPL等他のセンターが協力
TERC(Technical Education Research Center)
 非営利目的の教育研究機関。

(3)スポンサー
30数社

(4)参加校
参加単位となるグループ(SMOC)60程度、参加校数90校程度となる見込み。

(5)運用イメージ

3.3 EarthKAMのカメラと写真について
 
★電子カメラの概要と、EarthKAM写真はどんな範囲が撮れるか説明します。

(1)スペースシャトルに搭載される電子カメラの概要
 電子カメラの解像度は約620万画素です。

(2)電子カメラで撮影できる範囲
 カメラはシャトル軌道の真下の地点(地球の中心方向に向けて設置されています。)を撮影します。

 EartKAMの電子カメラで撮影できる範囲は、シャトルの軌道高度によって異なります。
 軌道高度が高いと広い範囲が撮れます。(皆さんも写真を撮るとき被写体が撮影範囲に収まらない時は後ろに数歩さがるのと同じです。)逆に、軌道高度が低いと狭い範囲が撮れます。その分より細かな部分まで拡大して見えることになります。
 今回STS-99の軌道高度126海里(233.5Km)の場合はこれまでに比べ低めの軌道なので、地上の様子をより詳細に見ることができます。
 焦点距離50mmのレンズを使うと縦横約130Km×86Kmの範囲の写真が撮れます。
3060×2036画素(ピクセル)の画像が撮影できます
(この画像は撮影イメージです)

 また同じ軌道高度でもレンズを変えることによって撮影範囲は変わります。85mmのレンズ使用の場合76Km×51Kmの範囲、180mmレンズ使用の場合36Km×24Kmの範囲が撮影されます。毛利宇宙飛行士のミッションでは50mmレンズを使用しての撮影が予定されてます。
50mm85mm180mm
それぞれのレンズで撮影した場合のイメージ

3.4 写真取得手順
★ Earthkamプログラムに実際に参加する学校は写真を取得するためにどんなことをするのかを紹介します。

 まず各参加校はEarthKAMプログラムでの研究目的・テーマを設定します。
 学校の生徒がシャトルの軌道条件等を考慮しそれぞれの研究目的にあった撮影地点をセレクトし、インターネット経由でカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)に撮影のリクエストをします。UCSDは各校から寄せられた撮影要求をとりまとめ、「撮影指示コマンド」にして、NASA JSCミッションコントロールセンター(MCC)経由でシャトルにコマンド送信します。軌道上のクルーはラップトップPCを操作し受信されたコマンドがカメラに対し自動的に発信されるよう設定、カメラは撮影場所を順次自動撮影します。写真撮影は昼の間におこなわれ夜の間に撮影した画像は地上に送られます。但し、シャトルは約90分で地球を一周しますから、およそ45分ずつ昼と夜がきます。そして一日24時間でほぼ16周しますので、昼と夜も16回きます。
 そしてこの「撮影−画像伝送」が周回毎に一日に16回繰り返し行われることになります。
 撮影リクエストから数時間後にはシャトルから撮影された地球の写真がNASA JSC MCC経由、UCSDのwwwにアップされ、各校が写真を入手することが可能となります。
 実施単位はSMOC(Student Mission Operations Center)と呼ばれ、1校(Individual SMOC)あるいは複数校グループ(Group SMOC)で構成されます。
 SMOCを構成する各学校毎にミッション期間(8日間のオペレーション期間)を通じて25枚程度の撮影が認められます。

 今回、日本には2つのSMOCが割り当てられ4つの中学校・高等学校が参加します。1つは3つの中学校が協力するGroup SMOCで、もう1つは1つの学校(中高6年一貫教育校)内で中学生・高校生が協力するIndividual SMOCとして参加します。
SMOC Student Mission Operations Centerでの実施におけるフロー

 軌道の昼撮影、夜データ転送(地上へ送信)を周回毎に繰り返します。(※基本的には次周回分をリクエスト、あるいは複数周回分をまとめてリクエストする。)
(*3) 天候チェックについて
 その地点の天候が悪く雲がかかっていると地上の写真はうまく写りません。また夜間の撮影は光の量が不足するため、写真にはうまく写らないので、昼のみ撮影をすることになります。EarthKAMプログラムに実際に参加し撮影をしようとする場合はこれらの点を考慮に入れて、撮影地点を決めることとなります。
(*4) MET
METとは Mission Elapsed Timeのことで、ミッション経過時間すなわち打上げから何日何時間何分経ったかということです。METは、日/時間:分:秒と表します。シャトルの軌道上でのスケジュール(TIMELINEと言う)はこれを使って表されます。
 例:01/02:03:04
これは、打上げから1日と2時間3分4秒経過したことを表します。

【実習】 METや米国東部夏時間(EDT)を日本標準時(JST)に換算しよう。
 STS-99(エンデバー)の打ち上げ時刻は1999年9月16日 午前8時47分米国東部夏時間(EDT)=同日午後 12時47分世界標準時(GMT)の予定です。日本標準時(JST)は東経135度の時刻であり、GMTよりも9時間進んでいます。
  1)METの01/12:47:00は、JST何時何分でしょうか?
  2)シャトルが地表のある地点Aの上空を通過する時刻を9月18日午前1時30分JSTとします。
   このときのMETは?
  3)打ち上げが1時間遅くなった場合
   3-1) A地点通過するMETは?
   3-2) A地点通過するJSTは?


最終更新日:1999年 7月 6日

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