ガマアンコウ


ガマアンコウ

 宇宙開発事業団(NASDA)の筑波宇宙センターでは、スペースシャトルに搭載する海水型水棲動物実験装置の開発のためにガマアンコウの飼育を行っています。今回はこの飼育を担当している村上直子さんに、ガマアンコウについていろいろとお伺いしました。


Q:なぜ、NASDAでガマアンコウの飼育を行っているのですか。
村上:ニューロラブ計画の実験の1つである「μG(微小重力)下での耳石器神経活動の連続記録」の実験では、宇宙酔いのメカニズムを解明するために、ガマアンコウの耳石器神経の活動を調査します。その実験を行うための、スペースシャトルに搭載する海水型水棲動物実験装置の開発、性能確認、適合性試験を行うために、ここNASDAでガマアンコウを飼育しています。この装置は今回のミッション(STS-90)だけでなく、今年の10月に打上げ予定の、向井宇宙飛行士が搭乗するスペースシャトル(STS-95)にも搭載されることになっています。

Q:ガマアンコウの生態について教えて下さい。
村上:ガマアンコウは海にすむ魚で、北米大陸東側沿岸に生息しています。日本の沿岸には生息していません。だいだい、水深5m〜10mの、岩場や体を隠せるところにすんでいます。寿命は4〜5年くらいです。大きさは平均で、体長30cm体重は1kg前後ほどです。大きいものになると、体長45cm、体重1.5kg弱ほどあるガマアンコウもいます。比較的水温の低い海にすんでいて、ここの水槽の水温は14度に保っています。

ガマアンコウの耳石(左)と
骨格標本(右)

Q:なぜ、実験の対象にガマアンコウが選ばれたのですか?
村上:この実験の代表研究者のハイシュタイン氏が長年ガマアンコウを研究してることと、耳石器の機能は魚類から高等動物までほとんどかわらず、宇宙飛行士に起こることが魚にも起こると考えられているからです。さらにガマアンコウは体が平べったく体に対して頭が大きく耳石が見やすい位置にあり、非常に丈夫な動物だからです。

Q:耳石器はどういう器官なのですか?
村上:加速度を関知する感覚器官です。耳石器から脳に送られる信号は、身体のバランスを保ち姿勢と運動の調節に重量な役割を果たします。平衡感覚をつかさどっている器官です。

Q:ここで飼っているガマアンコウが、スペースシャトルに搭乗するのですか?またどのようなガマアンコウが、宇宙に行くのですか?
村上:アメリカで飼育されているガマアンコウが搭乗します。宇宙に行くガマアンコウは、装置の容量の関係上、体長25cm、体重350g前後のもので、元気なガマアンコウが宇宙に行くことになります。

ガマアンコウ
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Q:宇宙に行くガマアンコウは、オスですか?メスですか?
村上:ガマアンコウは、外見からオスとメスを区別するのが非常に難しく、メスは産卵の時にお腹がおおきくなる位しか区別できません。オスとメスの耳石器の機能に差がないため、オスメス問わず、打上げ前に元気なガマアンコウが4匹宇宙に行きます。

Q:ガマアンコウは何を食べるのですか。
村上:小魚を食べます。毎日餌を食べるタイプの魚ではないため、ここでは1週間に1度小アジやイカの切り身を与えています。特にイカが好きです。一回の量は7〜8gほどです。

Q:動作は機敏ですか?
村上:えさを食べるときは機敏ですが、それ以外はじっとしていてほとんど動きません。

Q:ガマアンコウはおいしいですか?
村上:アンコウという名前がついているためか良くこの質問をされますが、ガマアンコウはほとんど食べる身がついていませんし、食用にはされていません。

飼育担当 村上直子さん

Q:ガマアンコウは鳴くと聞いたのですが。
村上:ガマアンコウを別の水槽に網ですくって移すときに、ゲコゲコと鳴くことがあります。最初聞いたときはびっくりしました。


 水槽のそばによると、ガマアンコウがそばに寄ってきて、とてもかわいいとおっしゃっていた村上さん、インタビューご協力どうもありがとうございました。



Last Updated : 1998. 4. 9