7.5 EVAの運用概要
EVAは単に宇宙服を装着して船外に出て仕事をして戻ってくるといった簡単なものではなく、船外に出るには実際には、何時間もかけて周到な準備をする必要があります。作業を終わって船内で通常の状態に戻るためにも定められた手順を経なければなりません。
EVAの準備から実施そして後始末までには、図7-23のような作業が行われます。
psia : Pounds par Square inch absolute |
図7-23 EVAの開始から終了までの概要
(出典:EVA Prep/Post Training Workbook(EVA P/P2102)Rev.A JSC-23901 の内容を集約)
・プレブリーズ(Prebreathe)
宇宙服を着用した状態で精密な作業をするには、宇宙服内の圧力を下げて、宇宙服が膨れ上がるのを防止する必要があります。そこで、現在のNASAの宇宙服は約1/3気圧の圧力で作業を行うよう設計しています。しかし、圧力を下げると、シャトルの船内圧力から宇宙服着用時の圧力へ低下させる時に減圧症を生じる可能性が発生します。
我々が通常呼吸する大気の中には窒素が含まれていますが、圧力を急激に低下させるとこの体内にとけ込んだ窒素が血液中に微少な泡となって生じ、細い血管を詰まらせるベンズと呼ばれる減圧症の一症状を引き起こします。
プレブリーズは、この減圧症を防ぐために実施される手順であり、EVAの実施までに体内にとけ込んた窒素成分を体外へ追い出すものです。
現在主として使用されている手順は、以下のようなものです。
・ヘルメットをかぶって100%の酸素を約60分呼吸した後、シャトルの船内気圧を1気圧(14.7psia)から約0.7気圧(10.2psia)に下げ、12時間以上その状態に保ちます。(船内)
・宇宙服内の窒素を追い出し、100%の酸素を40〜75分間呼吸した後、宇宙服を約1/3気圧(4.3psia)に減圧し、EVA作業を実施します。(エアロック)