7.6 EVA訓練
EVA全般に係る基礎的な訓練、例えばEVAに関する基本的な講義、船外活動ユニット(EMU)やEVA機器の使い方といった共通のものは、ミッション・スペシャリスト(MS)の訓練の中でも実施されます。
実践的なEVA訓練は、シャトルの各ミッションによって異なった操作訓練が必要なため、搭乗フライトが決まり、EVA実施担当が決まった後に、ミッション固有訓練として実施されます。
EVAの訓練内容には、EMUシステムの説明、装着方法やシャトル不具合時のEVAによる修理方法等に関する講義や、シャトルのモックアップを使用してのEVA準備、後作業等の1G訓練(通常の重力環境下での訓練)、そしてNBL(Neutral Buoyancy Laboratory)と呼ばれるEVA訓練/手順開発用の巨大なプールに宇宙服を着用して潜り、水の浮力を利用して無重量環境を模擬した環境下での操作訓練等を行います。このプールでの訓練では、実物大のシャトルのカーゴ・ベイの模型を沈め、軌道上での実際のタイムラインに沿った形で、作業を行う訓練を実施します。また、シャトルに不具合が発生し、安全に帰還するために必要となるコンティンジェンシーEVA(非常時のEVA)に備えて、ペイロードベイ(貨物室)・ドアをEVAを実施して閉める訓練やロボットアームの不具合時の収容手順等も訓練します。
このようなプールを使った無重量環境訓練は、打ち上げ直前までだいたい週に1度の頻度で繰り返し実施されます。図7-24に宇宙飛行士の訓練の大きな流れを示します。
図7-24 宇宙飛行士(MS)訓練の流れ
(出典:Flight Training Overview 1101(TD102C))
表7-4 にEVA訓練設備の概要を紹介します。これらの設備は訓練の目的、段階などにより適宜選択され活用されます。
表7-4 EVA訓練設備の概要
SAFER(Simplified Aid for EVA Rescue) WETF(Weightless Environment Training Facility) |
図7-25 にジョンソン宇宙センターの宇宙ステーション訓練用として無重量環境訓練設備(NBL:Neutral Buoyancy Laboratory)を示します。STS−87でもEVAの訓練はこのNBLで行われています。
NBL | ||||||
長さ | : | 202ft(61.56m) | 幅 | : | 102ft(31.08m) | |
深さ | : | 40ft(12.19m) | クレーン | : | 天井クレーン2基(吊り上げ能力10t) | |
水温 | : | 82−88F(27.8−31.1C) |
NBLの外観 | NBL内のプール |
NBL内プールでのEVA訓練風景 |
図7-25 無重量環境訓練設備