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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳)

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2003年8月27日午前0時00分(日本時間)

記者会見要旨

ハロルド・ゲーマン委員長

コロンビア号のクルー(リック・ハズバンド、ウィリアム・マッコール、マイケル・アンダーソン、デイビッド・ブラウン、カルパナ・チャウラ、ローレル・クラーク、イラン・ラモーン)が誇り高く命を捧げたミッションを無駄にしないために、事故発生から7ヶ月近く私たちは調査に時間を費やし、努力を重ねた。

この6ヶ月半調査に協力してくれたCAIBの12人、120人の調査チーム、NASAの何百人ものスタッフ、デブリ回収作業に従事した約2~3万の人々、写真やデブリ等3,000もの情報を提供してくれた一般市民に感謝を述べたい。

NASAは見事な組織である。有能なスタッフが日々未知の世界を解明するために努力している。NASAの素晴らしい点をまとめたらこの報告書よりかなり分厚くなるだろう。しかし私たちの調査はあくまでも問題点を明らかにすることであった。

委員会は、スペースシャトルは本来危険ではないと結論づけている。これは現在投じられている資金や、ISSを完成させなければというプレッシャーから来る意見ではない。課題は多いが、安全なシャトル・プログラムは可能であると考えている。

勧告内容は次の3つに分けられる。

  1. フライト再開必要事項:すぐ実行に移されなければならない。これらについては少しずつ説明していく。
  2. フライト続行必要事項:初めの十数回のミッションは私たちが勧告した内容よりも厳しく、意欲的にNASAは安全性に取り組むと考えている。しかし1、2年経つとその真摯な努力は自然と薄れてしまう。それが一番私たちの恐れる事である(NASAは過去にもその事例がある)。この勧告は意識の堕落を阻止するためにデザインされている。
  3. 今回の事故に直接的な関係がない必要事項:コロンビア号事故には関係していないかも知れないが、次回の事故を回避するための事項が含まれていると考える。

それぞれの勧告内容に順位や階層はない。全て同様に重要な内容である。

 

ジョン・ログズダン委員(グループ4)

STS-107の事故は、NASAの歴史の中でも大変特異な時期に発生した。コロンビア事故調査委員会は、調査を始めた最初の段階で、この事故の発生がNASAとスペースシャトルプログラムの歴史にその根を持つと見なした。我々はまた、NASAの歴史からくる組織的原因にも同等のウェイトを置いたが、それらについては、報告書やCAIBのホームページなどでも見ることができるので触れない。

しかし、調査開始1ヵ月後に委員会から命じられたのは、その歴史をさかのぼることだった。我々は実際にそれを行った。チャレンジャー号事故からコロンビア号事故までの、スペースシャトルプログラム構築の原型となるような決定については報告書の第1章に記されている。また、チャレンジャー号からコロンビア号までの歴史については第5章で述べられている。

それらは大きく3つの概要に分けられると思う。

1つめは予算と労働力への圧力だった。NASAの他のプログラムに予算を配分するため、シャトルプログラムの予算は90年代に大きく圧迫された。予算は40%カットされ、労働人員もまた40%カットされた。我々の判断からすると、その削減は、健全な作業をするためのシステムとしては余裕が少なすぎる。それは極限状態で作業することを余儀なくした。

また、NASAはスペースシャトルに関して、誤った特徴づけ、あるいは誤った理解をしていた。1995年の報告書の記述によると、それが今日のテクノロジーが提供できる水準と比べ、安全で信頼するに足る乗り物と信じていたという誤解だ。

当時、スペースシャトルが十分に信頼のおける乗り物だと信じたため、NASAは、安全やミッション保証の責任の多くを請負業者に負わせてしまったことだ。そしてNASAは責任を負うことを止め、プログラムの監督(oversight )ではなく観察(insight)をおこなった。我々はそれが誤りであったと認識している。我々はプログラムに対して、政府からのより協力的で技術的な監督行為が必要だと思っている。

NASAは運用ミッションを行うに足るだけスペースシャトルは信頼できると考え、98年以降は主に宇宙ステーションの組み立てや物資供給をスペースシャトルに頼り、発展段階に関連した技術的なデータを収集しなかったことも間違いだったと認識している。

NASAは、国家がこのスペースシャトルをどの程度の期間使用するかについて、まったく明確な答えを持たなかった。90年代にはその期間は2006年まで、2012年までとされ、それが今は2015年、2020年、またそれ以上、と徐々に長くなってきている。

このことは、システムにどれだけ投資すべきか、地上インフラにいくら投資すべきか、などの決断を下すことを困難にし、効果的な安全システムを運営する環境ではなかったと委員会は結論付けた。

組織における文化を、我々は、その機関を特徴付ける人間の基本的価値、規範、信条、習慣と定義した。我々は、NASAの特異な有人飛行の文化の詳細について討論し、NASAの未来の有人飛行成功のためには、改善が必要だという結論に至った。

 

スコット・ハバード委員(グループ3)

簡単に言うと、断熱材が原因である。1ヶ月もの調査、多くの分析、様々な試験によって翼前縁部に対する断熱材の衝撃は破損を引き起こし、究極的にスペースシャトルの破壊とクルーの損失に繋がったという結論に至った。

この報告書について一点指摘する。この報告書には「おそらく」、「思われる」、「一番起こりそうな」といった言葉が含まれていない。我々が行った全ての論議や試験によって断熱材が原因であるという簡単な声明となった。断熱材の脱落がシャトルを失う結果となったのだ。

私自身は衝撃試験に深く関わった。私はその試験が3つのことを達成したと感じている。

まず、試験は解析結果を裏付ける証拠を提供した。

2つめに、強化カーボン・カーボン(RCC)の材質についての知識を付け加えた。その結果、不幸にも時速500マイルでこのぐらいの大きさの断熱材の衝撃に耐えられる程頑丈ではなかったことがわかった。

最後に、試験は諦めがたい疑いを払拭した。それはこの軽い物質は本当に前縁部を破壊することが可能であり、それがスペースシャトルの損失に繋がる可能性があるということである。

我々のグループは物理的な原因を証明した。それは組織的な原因についての考察に繋がり、連続した提言を行うことができるようになった。それらについては、引き続き話がなされる。また、私の報告もそれに含まれている。

 

シェイラ・ウィドナール委員(グループ3)

ご存じのように、CAIBはオービタの再突入に関するさまざまな調査を念入りにおこなった。オービタから地上に送られたテレメトリデータは、我々にとって非常に重要な情報源となった。というのも、データのおかげで事故発生に至るタイムラインを把握出来たからである。

事故調査の半ばで発見されたOEXレコーダも、事故原因解明に重要な役割を果たした。OEXレコーダはオービタ内の気圧、温度、そして異変がおきた場所を我々に示してくれた。

上記で述べたもの以外に我々は5つの解析を同時進行させていた。

風洞を使った空力解析、オービタの温度に対する耐久性、オービタの各箇所を個別に熱した実験に基づく熱解析を行った。

また市民から提供された映像や写真による解析を元に事故当時の状況を再現し、いつデブリが剥がれたか、いつオービタの破損が起きたのかを推測した。

デブリの回収により、さまざまな情報が得られた。全体的な流れ、デブリの溶け具合から推測出来る当時の温度状況等が、事故原因の解明に大きな役割を果たしたと思われる。デブリの科学的分析も重要であった。これらの情報を元に我々は事故原因を断定した。スコット・ハバード氏が先ほど述べたように事故原因は間違っていないと自信をもって言える。

ここでひとつ補足したいのだが、オービタの事故に繋がった破損箇所はオービタの再突入以前に存在したと思われる。なぜなら、オービタ内のセンサーが空気力学的要素が無関係な時間帯に異常を観測したからである。

結論からいえば、オービタの飛行制御装置が機体を安定した状態で飛行させていたが、構造が限界に達した為に制御不能になったと考えられる。この時点でオービタの損傷はひどく、仮に温度を低く保ったままオービタが飛行したとしても、無事に着陸することはできなかっただろう。

 

スティーブン・ワレス委員(グループ2)

私が説明する報告書の内容は、マテリアル関連と組織体制にあたる部分である。

第6章では次の4つの項目について述べている。

  1. 断熱材: 毎フライト30カ所のタイル損傷、過去7回バイポッド・ランプ部の断熱材脱落などが観測されている。危険信号が出ていたにもかかわらず、何故必要な対応がなされなかったのかなどを記述。
  2. 映像取得の要請: 以前にも話した映像取得の要請が通らなかった件について、E-メールや面談を元に得た情報を記述。
  3. スケジュールキープの圧力: 微妙な点であり人により意見も違うため、なるべく徹底的に公平に記述。
  4. 修理と救助: NASAに徹底した研究を依頼した。修理と救助は可能だったのかどうか、そして可能だったのならフライト中の判断は変わっていたのかどうかを検証している。

第7章、第8章は組織理論に関するさまざまな危険性の高い任務を持つ組織の成功例と比較し、第8章では歴史的観点から検証している。

 

ジョン・バリー委員(グループ1)

私のコメントは安全性の分野についてである。

産業分野での安全性は、世界的に定着している。しかし、私たちの見解は、壊れた安全性文化が有人宇宙飛行には存在しているというものだ。NASAの安全管理組織に関するチャートを参照して原因を議論してきたが、いまだにチャレンジャー号事故で記録されていた無言のセーフティプログラムの証拠がある。

NASAではコスト、スケジュール、安全性が対立すると、不幸にも安全性は多くの分野において、運用要求を満たすためにないがしろにされた。この分析でこのような文化を修正する方法を見つけるという課題は簡単ではなかった。そのためには組織的な変革を行わなければならない。我々はそうしたいくつかの提言を報告書の中に盛り込んだ。

しかし、2つ目の勧告ではリーダーシップがキーであると言及しており、NASAはその役割を担わなければならない。我々は組織の変革に関しては少ししか提言していないが、リーダーシップは明らかに重要である。

他に言及したいことは、安全管理の独立性に対する懸念事項である。それは組織に関するパートで重要な提言として提示されている。総合的な安全管理機能の欠如が見られた。

より重要なのは、スペースシャトル計画自体における安全管理の欠如である。証拠やインタビュー、調査などによって、シャトルオフィスはこの努力を怠っていたことが明らかになった。そして、そのことが安全性文化の問題を悪化させていた。

また、まったくコミュニケーションがとられていなかったことがいくつか確認された。不具合情報システムやデータベースが有効に活用されていなかったこと、そして最終的には無言セーフティプログラムの問題にまでさかのぼった。我々は無言セーフティプログラムの証拠を、飛行準備審査会(FRR)やMMTの中に発見した。その問題はいまだに存在しているのだ。

 

ステファン・ターコット委員(グループ1)

私とデュアン・ディール氏の調査の焦点は、主に整備と製造(ミシュー組立工場での外部燃料タンクや固体ロケットブースタなどの組立)に関わる点である。

コロンビア号の整備記録は全て入念に目を通した。その他のオービタに関する資料も無作為に調査した。その結論は、NASA職員も下請け業者も精一杯の努力と意欲を持って働いているということだ。

しかし、航空機工業、軍事産業の基準に合わない箇所がいくつかある。

まずQAプログラムだが、業務縮小を何回か行っており、機体点検箇所が85に設定されたままだった。機体が老朽化するにつれて点検箇所が増えることは当然であるが、必要な対応がQAプログラムには足りなかった。

腐蝕対策では、NASAは機体を分解せずに点検する方法を考え、スペースシャトルの実際の老化状態を見極める必要がある。検査用機器も22年前のものが使われており、使うべき機器について勧告を行っている。

ホールド・ダウン・ボルト・ケーブル問題(hold-down bolt cable problem)の取り組み方(技術・エンジニア面)も業界標準に合っていない。飛行機は製造・整備運用は全く異なった作業として分けられているが、スペースシャトルでは大掛かりな整備と運用準備が隣同士で行われている。従って、この2つの作業間で異物混入の分類について、標準化するよう勧告する。

 

ハロルド・ゲーマン委員長

私たちの報告書は、5つのグループに向けられている。

今朝10時、最終報告書はヒューストンのクルーオフィス、コロンビア号クルーの遺族、ホワイトハウス、議会、そしてNASA長官に届けられた。この報告書の勧告の目的は、デブリ損傷からクルー死亡に至らせないことにある。その為に、この勧告は大きく次の4つのステップに分けられる。デブリの回避、オービタのデブリに対する耐久性の向上、入念な検査と修理の実施、クルーの生存確率向上のための技術開発である。

最初の3つに関しては、報告書に記載しているが、最後の生存技術に関してはNASAにその責任を託す。勧告内容は以前述べたとおり3つに分けられる:短期、中期(2~15年)、長期(国家としてこれから宇宙開発にどう取り組むのか)。

私たちの最大の目的は、この報告書がこれから行われる国民的論議の土台となることである。これだけ入念な詳細にわたる調査は今まで行われなかっただろう。今までは事故の直接的原因のみを解決し、それに関わる数人のスタッフを解雇、あるいは研修させて対応済みとしていた。

しかしそれが原因となり次の事故が起きたのだ。今回の私たちの調査は、これからアメリカが宇宙開発にどのような目標を持つのか、その目標に対して何をすればよいのか、そのための資金を出す用意はあるのかなど、様々な議論が行われることを願っている。


以 上

最終更新日:2003年8月27日

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