ミール情報(10月 8日)
※ 今回新たに追加・変更した情報をアンダーラインで示しています。
● 全体状況 - ミールのバックアップコンピュータ等の補給品を搭載したプログレスM−36は、モスクワ時間の10月8日(水)夜ミールとのドッキングに成功した。今回のドッキングでは、新型の誘導アンテナを用いた新しいドッキングシステムが使用された。このシステムは、これまで2度試されたが2度とも失敗し、手動でのドッキングに切り替えられた経緯がある。
今回のドッキング成功は、新しいシステムを用いての初めての成功となった。 - ミールとのドッキング解除に失敗していたプログレスM−35は、日本時間の10月7日午後9時4分にドッキング解除に成功した。
原因はミールとプログレスを接続している16個の留め金のうちの一つがうまく外れていなかった模様。 - 日本時間の10月2日(木)早朝、ミールにドッキング中のスペースシャトル・アトランティスのクルーにより、約5時間に渡る船外活動が行われた。
船外活動に参加したのは、米国人パラジンスキー飛行士とロシア人チトフ飛行士の2名で、ロシア人飛行士がシャトルクルーとして船外活動を行うのは、今回が初めてとなる。また、ロシア人飛行士が米国製の宇宙服で船外活動を行うのも今回が初めてとなる。
- 日本時間10月2日(木)これまで度々トラブルを起こしていたミールのメインコンピュータに替わり、アトランティスにより運ばれてきた新しいコンピュータがコアモジュールに設置され、ジャイロによる姿勢制御が開始された。
- 米国時間の9月25日午前10時NASAゴールディン長官より、NASAは米国ウォルフ飛行士をミールへ滞在させる決定を行った旨の声明が発表された。
声明の中でゴールディン長官は、今回の決定は政策や感情によるものではなく、ミッションの安全性について科学的、技術的に綿密な検討を行った結果であるとした。更に、国際宇宙ステーションへ向けての知識や経験の蓄積に、シャトル/ミール計画は不可欠であるとした。
NASAはこれまで、幾つかのグループにミールの安全性について再検討をさせており、9月24日(水)更なる状況の悪化は考えられないとの報告を受け、最終判断を下した模様。
- 9月18日(木)米国下院科学委員会において、ミールの安全性についての公聴会が開かれた。
冒頭、センセンブレナー(下院科学委員会委員長)によりミールの安全性について大きな懸念があり、議会としてはシャトルによるミールへの援助は支持するが、米国人飛行士をミールへ滞在させることには反対である旨の発言があった。
これに対し、NASAカルバートソン(シャトル・ミールプログラムマネージャー)は、米国人飛行士をミールへ送ることには危険が伴うが、我々は適切に状況を把握・分析し、対応することができる。として、計画の続行の意志を示した。
● スペクトルモジュールの船外修理作業
- (これまでの経過)
- クルー交代のために日本時間の8月8日(金)よりクバント1にドッキングしていたソユーズTM26を、ミールのコアモジュールのドッキングポートへ移動する際に、スペクトルモジュールの側を通り、ソユーズTM26からスペクトルモジュールの損害状況をビデオ等で調査した。撮影されたスペクトルモジュールの写真から、幾つか穴のようなものが見られた。
- 日本時間9月6日(土)午前10時07分より、ロシアのソロブヨフ飛行士と米国のフォール飛行士が船外に出て、6時間に及ぶ船外作業を行った。
- [船外作業で実施された主な作業]
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- 6月のプログレス輸送船との衝突事故により損傷したスペクトルモジュールの損害状況の調査を行った。
ソロブヨフ飛行士により太陽電池パネルの付け根部分に亀裂が確認された。ロシア航空宇宙局はこの亀裂からスペクトルモジュールの空気が漏れた可能性があるとしている。その他に、空気漏れの原因となるような穴や亀裂は発見できなかった。
- スペクトルモジュールの損傷を免れた3枚の太陽電池のうち2枚について受光面を太陽方向へ向けた。(太陽電池パネルを駆動するモータが故障しているため、現在太陽指向制御が不能となっている。)
- 今後のスペクトルモジュールの修理作業のために、スペクトルモジュールに作業支援用の手摺りを取り付けた。
- 今年の4月に米国リネンガー飛行士の船外作業により、クバント2の外壁に取り付けられていた放射線計測装置を回収した。
- 日本時間の10月2日(木)早朝に実施された米ロのシャトルクルーによる船外作業に於いて、スペクトルモジュールの穴を塞ぐための機器「ソーラアレイキャップ」がミールのドッキングモジュールに仮置きされた。
この機器はアトランティスにより運ばれてきた直径約90cmの円錐形の機器で、ミールのハッチよりも大きく船内に入れることが出来ないため、ドッキングモジュールに仮置きされることになった。
- 米国時間10月3日(金)ミールとアトランティスのクルーにより、スペクトルモジュールのリーク箇所の特定を試みる作業が行われ、破損した太陽電池の付け根あたりから僅かなリークが確認された。
作業はミールとアトランティスのドッキングを解除した後に、ミールのクルーがスペクトルモジュールに空気を送り込み、外からアトランティスで観測するというもので、今回の観測では太陽電池パネルの付け値以外からのリークは確認されなかった。
- (今後の予定)
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- 日本時間10月2日(木)のシャトルクルーによる船外作業で、ドッキングモジュールに仮置きされた「ソーラアレイキャップ」を用いてスペクトルモジュールの穴を塞ぐ船外修理作業を、10月20日(月)に予定。
●8月22日(金)に実施された船内修理作業
- [目的]
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- ミールの電力回復のため。
6月のプログレス輸送船との衝突により損傷を受けたスペクトルモジュールを閉鎖する際に、止むを得ず切り離した電力ケーブルを、ミールのコアモジュールへ繋ぎ直す。
これにより、ミールの電力は通常の90%程度まで回復する見込。 - [作業経過]
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- 8月22日(金)午後6時(日本時間)予定通り作業を開始しようとしたところ、トランスファーノード(各モジュールの連結部分)のハッチのひとつから空気が漏れているのが発見された。
処置のため作業開始時刻を遅らせた。 - 午後6時59分(日本時間)トランスファノードを減圧中にロシアのビノグラドフ飛行士の宇宙服のグローブから僅かな空気漏れが発見された。ノードを加圧し、スペアのグローブとの交換を行った。
- 午後7時55分(日本時間)地上管制局より作業開始の指令が出された。
- 午後8時10分(日本時間)予定より約2時間遅れで作業が開始された。
スペクトルモジュールの内部に入ったビノグラドフの報告では、モジュール内には予測されていた危険な浮遊物はなく、唯一白っぽいクリスタルのような物が浮遊しているのが確認された。これについて米国フォール飛行士は、おそらく自分の使用していたシャンプーであろうとしている。(スペクトルモジュールには、フォール飛行士のプライベート用品を収納する所や作業場があった。)
また、真空状態のスペクトルモジュール内で稼働している機器(ファン、ポンプ)が発見された。 - 午後9時45分(日本時間)ビノグラドフ飛行士は、11本のケーブル全てを繋ぎ終えた。作業は順調に進み、時々飛行士の笑い声が聞こえるほどであった。
また、モジュール内を見渡したが、壁に亀裂等を発見することは出来なかった。 - 午後11時30分(日本時間)作業開始から約3時間半で、予定していた修理作業は全て終了した。
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