ミール情報（９月２８日）

ミール情報（９月２８日）

※　今回新たに追加・変更した情報をアンダーラインで示しています。

●　全体状況

スペースシャトル・アトランティスは、米国中部時間の９月２５日（木）午後９時３４分フロリダのケネディ宇宙センターより打上げられ、２日後の２７日（土）午後２時５８分ミール宇宙ステーションとのドッキングに成功した。ドッキングの数時間前にミールのコンピュータに若干のトラブルが発生したようであるが、ドッキング作業には影響が無かった模様。
アトランティスは６日間のドッキング期間中に、ミールの新しいコンピュータの搬入、装置の修理・保全用品並びに食料や飲料水等の補給、更にフォール飛行士がミール滞在中に行った実験試料等の回収を行い、１０月５日（日）にケネディ宇宙センターに帰還する予定。
アトランティスでミールに到着した米国ウォルフ飛行士は、フォール飛行士と入れ替わりでミールに約４ヶ月間滞在する予定。
米国時間の９月２５日午前１０時ＮＡＳＡゴールディン長官より、ＮＡＳＡは米国ウォルフ飛行士をミールへ滞在させる決定を行った旨の声明が発表された。
声明の中でゴールディン長官は、今回の決定は政策や感情によるものではなく、ミッションの安全性について科学的、技術的に綿密な検討を行った結果であるとした。更に、国際宇宙ステーションへ向けての知識や経験の蓄積に、シャトル／ミール計画は不可欠であるとした。ＮＡＳＡはこれまで、幾つかのグループにミールの安全性について再検討をさせており、９月２４日（水）更なる状況の悪化は考えられないとの報告を受け、最終判断を下した模様。
９月２２日（月）船外を茶色っぽい水滴のような物が漂っているのがクルーにより確認された。
ロシア航空宇宙局は、スラスタから燃料が漏れたものか、或いは閉鎖されているスペクトルモジュールから何かがリークしたと推測している。
これによるクルー及びシステムに対しての影響は無い模様。
９月１８日（木）米国下院科学委員会において、ミールの安全性についての公聴会が開かれた。
冒頭、センセンブレナー（下院科学委員会委員長）によりミールの安全性について大きな懸念があり、議会としてはシャトルによるミールへの援助は支持するが、米国人飛行士をミールへ滞在させることには反対である旨の発言があった。
これに対し、ＮＡＳＡカルバートソン（シャトル・ミールプログラムマネージャー）は、米国人飛行士をミールへ送ることには危険が伴うが、我々は適切に状況を把握・分析し、対応することができる。として、計画の続行の意志を示した。
６月にプログレス輸送船との衝突事故により損傷を受けたスペクトルモジュールの修理作業に向けた船外作業は、日本時間の９月６日（土）午前１０時０７分から開始され、６時間後の午後４時０７分に終了した。
作業にはロシアのソロブヨフ飛行士と米国のフォール飛行士が参加し、スペクトルモジュールの損害状況の調査、太陽指向制御が不能となっているスペクトルモジュールの太陽電池パネルの受光面の角度調整等を行った。
スペクトルモジュールの損害状況調査では、空気漏れの原因となるような穴は特定できなかったが、太陽電池パネルの受光面の角度調整は、損傷を免れた３枚のうち２枚の太陽電池パネルについて太陽方向への角度調整が行われた。
日本時間の８月２２日（金）に実施されたミールの電力復旧のための船内修理作業は、ケーブルの接続端子を装備したハッチを介して、スペクトルモジュールの太陽電池パドルからの電力ケーブルとの接続に成功した。しかし、太陽電池を駆動するモータが故障していたため、太陽指向制御が行えず十分な電力は得られなかった。

●　スペクトルモジュールの船外修理作業

ロシア航空宇宙局はプログレスとの衝突により損傷したスペクトルモジュールの修理作業を、以下のスケジュールで行う予定。

クバント１にドッキングしていたソユーズＴＭ２６を、ミールのコアモジュールのドッキングポートへ移動する際に、スペクトルモジュールの側を通り、ソユーズＴＭ２６からスペクトルモジュールの損害状況をビデオ等で調査した。撮影されたスペクトルモジュールの写真から、幾つか穴のようなものが見られた。
日本時間９月６日（土）午前１０時０７分より、ロシアのソロブヨフ飛行士と米国のフォール飛行士が船外に出て、６時間に及ぶ船外作業を行った。

［今回の船外作業で実施された主な作業］

６月のプログレス輸送船との衝突事故により損傷したスペクトルモジュールの損害状況の調査を行った。
ソロブヨフ飛行士により太陽電池パネルの付け根部分に亀裂が確認された。ロシア航空宇宙局はこの亀裂からスペクトルモジュールの空気が漏れた可能性があるとしている。
その他に、空気漏れの原因となるような穴や亀裂は発見できなかった。
スペクトルモジュールの損傷を免れた３枚の太陽電池のうち２枚について受光面を太陽方向へ向けた。（太陽電池パネルを駆動するモータが故障しているため、現在太陽指向制御が不能となっている。）
今後のスペクトルモジュールの修理作業のために、スペクトルモジュールに作業支援用の手摺りを取り付けた。
今年の４月に米国リネンガー飛行士の船外作業により、クバント２の外壁に取り付けられていた放射線計測装置を回収した。
スペクトルモジュールの本格的な船外修理作業は、９月２７日（土）よりドッキングしているスペースシャトル・アトランティス^※の帰還後に実施予定。

※スペースシャトル・アトランティスには、フォール飛行士と入れ替わりでミールに滞在するウォルフ飛行士が搭乗している。
　ウォルフ飛行士は昨年８月よりロシアでトレーニングを行っており、来年１月の米国ミール滞在ミッションとしては最後になるシャトル／ミールミッションに参加する予定であった。
　当初、アトランティスでフォール飛行士と入れ替わりでミールへ滞在する予定であったローレンス飛行士は、ミールが衝突事故を起こしたことにより修理作業が優先されたためウォルフ飛行士と交代となった。（ローレンス飛行士は船外活動の訓練を受けていないこと、ロシア製の宇宙服が彼女に大き過ぎることが理由となった。）
　ＳＴＳ－８６アトランティスは、日本時間の９月２６日（金）午後１１時３４分の打上げ予定になっている。

●８月２２日（金）に実施された船内修理作業

［目的］
ミールの電力回復のため。
６月のプログレス輸送船との衝突により損傷を受けたスペクトルモジュールを閉鎖する際に、止むを得ず切り離した電力ケーブルを、ミールのコアモジュールへ繋ぎ直す。
これにより、ミールの電力は通常の９０％程度まで回復する見込。
　　

［作業経過］

８月２２日（金）午後６時（日本時間）予定通り作業を開始しようとしたところ、トランスファーノード（各モジュールの連結部分）のハッチのひとつから空気が漏れているのが発見された。
処置のため作業開始時刻を遅らせた。
午後６時５９分（日本時間）トランスファノードを減圧中にロシアのビノグラドフ飛行士の宇宙服のグローブから僅かな空気漏れが発見された。ノードを加圧し、スペアのグローブとの交換を行った。
午後７時５５分（日本時間）地上管制局より作業開始の指令が出された。
午後８時１０分（日本時間）予定より約２時間遅れで作業が開始された。スペクトルモジュールの内部に入ったビノグラドフの報告では、モジュール内には予測されていた危険な浮遊物はなく、唯一白っぽいクリスタルのような物が浮遊しているのが確認された。これについて米国フォール飛行士は、おそらく自分の使用していたシャンプーであろうとしている。（スペクトルモジュールには、フォール飛行士のプライベート用品を収納する所や作業場があった。）
また、真空状態のスペクトルモジュール内で稼働している機器（ファン、ポンプ）が発見された。
午後９時４５分（日本時間）ビノグラドフ飛行士は、１１本のケーブル全てを繋ぎ終えた。作業は順調に進み、時々飛行士の笑い声が聞こえるほどであった。
また、モジュール内を見渡したが、壁に亀裂等を発見することは出来なかった。
午後１１時３０分（日本時間）作業開始から約３時間半で、今回予定していた修理作業は全て終了した。

●電力回復状況

　米国時間９月２５日（水）現在、ミールの電力はフルパワーに近いレベルまで回復し、幾つかのシステムは復旧している模様。しかしメインコンピュータの度重なるトラブルにより、全てのシステムは回復していない。

●酸素供給

　８月２５日（月）に相次いで故障したミールの酸素発生装置のメインシステムとバックアップシステムは両システムとも復旧し、現在は正常に稼働している。

●クルーの飲み水について

　米国時間９月２５日（木）打上げられたスペースシャトル・アトランティスで残り少なくなっていたクルーの飲み水が補給された。
　ミールでは、クルーの飲み水を空気中の水蒸気や廃液をリサイクルすることで賄っているが、４月に発生したクーリングシステムの不具合の際に、船内の空気中にクーリング装置の不凍液が散らばったため、空気中から水をリサイクルする装置が汚染された危険性があり、同装置の使用を控えていた。この状態が続くことにより、クルーに十分な飲み水が供給されなくなる事態が懸念されていた。
　ロシア航空宇宙局は、８月１４日に帰還したロシア人飛行士に船内の空気中からリサイクルした水をサンプルとして持ち帰らせた。今後汚染されているかどうかの検査を行う予定（検査結果についての情報は未入手）。