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ミール情報(8月18日)


● 全体状況

  • 米国時間の8月18日(月)早朝、ミールのメインコンピュータが、プログレス輸送船とのドッキング中に故障を起こした。

    これによりミールは一時的に姿勢制御機能を失い、太陽電池パドルの太陽指向が不能となった。

    現在クルーはソユーズ緊急避難カプセルのスラスタによりミールの姿勢を制御し太陽電池パドルの太陽指向性を確保している。

  • ミールの飲み水が限界に近づいている。

    現在の状況では、9月〜10月には底をつくことになる。

    ロシアと米国は、9月のSTS−86と10月のプログレス輸送船に飲み水を搭載することを検討中。

  • ロシアのツィビリエフ、ラズートキン両飛行士を乗せたソユーズTM25は、日本時間の8月14日(木)午後5時56分にミールより切り離され、中央アジアに軟着陸した。
  • 故障のため電源がOFF状態のままになっているエレクトロン酸素発生装置の修理作業について、ロシア地上コントロールセンターより、作業手順の確認が行われ、ミールのクルーへ手順が伝えられた。
  • エレクトロン酸素発生装置の修理作業中に、酸素発生装置と空気タンクの間のパイプに傷が付いているのが発見された。これについて、現在ミールに替わりの部品がないことから、9月のSTS−86アトランティスで修理品を輸送することが検討されている。
  • ロシア航空宇宙局は、9月3日(月)に予定されているスペクトルモジュールの外壁の船外調査に、米国フォール飛行士の参加を望んでいることを表明をした。

    これについて、NASAはフォール飛行士を参加させる方向で検討を行っていると表明した。最終的な決定は、数日中に発表される予定。


● メインコンピュータの不具合

 米国時間の8月18日(月)早朝、プログレス輸送機とのドッキング中(ドッキングまで13分の状態)に、自動ドッキングシステムに異常が発生した。

 地上管制局からの指示により、クルーはドッキングシステムを手動に切り替えて、ミールとのドッキングを行った(6月25日には、この操作でプログレス輸送船がスペクトルモジュールへ衝突した。)。

 その後ミールのメインコンピュータにも異常が発生し、ミールは姿勢制御機能を失い、太陽電池パドルの太陽指向が不能となった。そのため、発生電力が急激に低下し、クルーはミールのシステム(生命維持システムを除く)を全てOFF状態とした。

 故障の原因について詳細は不明。故障原因の究明及び修理には少なくとも2日はかかる見込み。現在はソユーズ緊急避難機のスラスタによりミールの姿勢制御を行い、太陽電池パドルの太陽指向を確保している。


● クルーの飲み水について

 ミールでは、クルーの飲み水を空気中の水蒸気や廃液をリサイクルすることで賄っているが、3月に発生したクーリングシステムの不具合の際に、船内の空気中にクーリング装置の不凍液が散らばったため、空気中から水をリサイクルする装置が汚染された危険際があり、同装置の使用を控えていた。

 この状態が続くと9月の終わりには飲み水が底をつくことになる。

 ロシア航空宇宙局は、先日帰還したロシア人飛行士に船内の空気中からリサイクルした水をサンプルとして持ち帰らせた。今後汚染されているかどうかの検査を行う予定。

 また、ロシア航空宇宙局とNASAは、9月に打上げが予定されているSTS−86アトランティスと10月に打上げが予定されているプログレス輸送船にミールのクルーの飲み水を搭載することを検討している。


● ソユーズドッキング中の不具合について

 日本時間8月8日(金)にミールにドッキングしたソユーズTM26は、当初、自動ドッキングシステムでドッキングを行う予定であった。

 ところが、ミールから13mの距離まで接近した時点で、自動ドッキングシステムに異常が発生したため、安全のために一時ミールから25mの距離まで後退し、その後、手動でドッキングを行った。

 これについて、NASA側の見解としては、今回の事態はトラブルではなく、より安全のために行われた処置としている。

 NASAに報告された情報では、自動システムでミールまで10数mの距離まで接近した時、ソユーズ側からミールのドッキングターゲットが見えにくかったため、安全のため自動でのドッキングを中止し、手動でターゲットが確認できる方向からドッキングを行ったとのことである。


● 船内修理作業

 ミールの電力回復のための船内修理作業は、8月20日(水)に行われる予定であるが、8月18日に発生したメインコンピュータの故障のため、早くても今週末になる模様。


● 船外修理作業

 プログレスとの衝突により損傷したスペクトルモジュールの船外修理作業について、ロシア航空宇宙局は以下のスケジュールを考えている。

  1. クバント1にドッキングしていたソユーズTM26を、ミールのコアモジュールのドッキングポートへ移動する際に、スペクトルモジュールの側を通り、ソユーズTM26からスペクトルモジュールの損害状況をビデオ等で調査する。(完了)
  2. 9月3日(月)にロシア人飛行士により最初の船外修理作業が行われる。この作業では、スペクトルの外壁の調査だけで、穴をふさぐ作業は行わない。また、ロシア航空宇宙局はこの作業に米国フォール飛行士の参加を希望していることを表明した。

    これに対し、NASA側もフォール飛行士を参加させる方向で検討を行っていることを表明した。最終的な決定は数日中に行われる予定。

  3. 9月打上げ予定のSTS−86アトランティスのデイヴィッド・ウルフ飛行士の到着後、スペクトルモジュールの穴をふさぐ作業を行う。

 ウォルフ飛行士は昨年8月よりロシアでトレーニングを行っており、来年1月のミール滞在ミッションとしては最後になるシャトル/ミールミッションに参加する予定であった。

 現在ウォルフ飛行士は、ロシア宇宙飛行士訓練センターで船外修理作業の訓練を行っている。

 STS−86は、ウォルフ飛行士の訓練のために、一週間程度打上げスケジュールが遅れ、9月25日(火)頃の打上げになる予定。

 STS−86には、当初、フォール飛行士と入れ替わりでミールに滞在する予定となっていたウェンディ・ローレンス飛行士も搭乗する。ただし、ローレンス飛行士は、船外活動に必要なロシア製宇宙服のサイズが合わないこと、船外活動の訓練を受けていないこと等から修理作業には参加せず、科学実験等を行い、フォール飛行士とともににアトランティスで帰還する予定。その間に万一ウォルフ飛行士が病気等で修理作業が出来くなった場合は、ウォルフ飛行士に替わりローレンス飛行士がミールに滞在し修理作業のバックアップを行う。ただし、船外作業は行わない。


● 酸素供給

  • ミールのクバント1に設置されているエレクトロン酸素発生装置は、依然として回復していない。同装置(6月にクーリングシステムのレギュレータバルブの不具合によりオーバーヒートを起こし、時間的な制限付きで稼働させていた)は、7月末頃からシステムが勝手に立ち下がる状態が数回起こっていた。原因として、ガス検知器の中に汚物等が入り込んでいるためと考えられている。

    ロシア航空宇宙局は、同装置の復旧のための作業手順をミールのクルーに指示した。

    また、クバント2に搭載されているエレクトロン酸素発生装置(電力不足のため6月の衝突事故以来OFF状態となっている。)にコアモジュールから電力を供給し、稼働させることについても検討を行っている。

    ロシア航空宇宙局は、仮にこの作業が失敗しても、クルーは酸素発生キャンドルを使用することで約2ヶ月間は必要な酸素が得られるとしている。このため同局は、現在の状況は直ちにクルーの生命に影響を及ぼすものではないと見ている。

  • 現在ミールの酸素は、酸素発生キャンドルにより賄われている。

    このキャンドルは、2月の火災事故の原因になっていることから、使用する際は、すぐ側に消化器とガスマスクを常に準備している。

  • エレクトロン酸素発生装置の修理作業中に、同装置と空気タンクの配管に傷がついているのがクルーにより発見された。この修理については替わりの部品がないために、9月のSTS−86で修理品を運ぶことが検討されている。
  • 二酸化炭素除去装置は正常に稼働中


● その他

 来年1月のシャトル/ミールミッションのウォルフ飛行士の代役について、NASAは、1、2週間のうちに決定する予定。


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