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最終更新日:2015年4月13日

もっと詳しい説明


JAXAと東北大学のチームは、これまでにモデル生物である線虫を用い2004年にISSでの国際共同実験に参加し、線虫を用いて、「宇宙環境下でも地上と同様に DNA損傷時のアポトーシスつまりプログラムされた細胞死が実行できること」を 世界に先駆けて検証しました。これは、生物が自然界で生きていくのに不可欠なアポトーシスが、微小重力や宇宙放射線の影響を受けないということを示しているものです。

この結果を受けて、2009年には「きぼう」でも宇宙実験を行い、「宇宙の微小重力環境でもRNAiが有効に機能すること」、ならびに「線虫の筋タンパク質の遺伝子発現量・タンパク質発現量」が宇宙の微小重力環境で育てることにより低下するという現象を、再現性を持って確認しました。特に、微小重力による筋肉の低下は、代謝の低下を引き起こし、代謝が下がると寿命にも影響を及ぼす可能性があります。

●2004年の実験で注目した細胞死が宇宙でも実行できたとは具体的にどういうことを示しているのでしょうか。
プログラム細胞死が正常に起こらないと、正常な発生過程で消えてなくなるべき細胞が残ったり、途中で傷ついた細胞が除去されないため、形態が変わったり、がんや免疫系の病気が生じることがあります。宇宙で発生が正常に進まないと将来宇宙で子孫を残すことができないという心配もあります。そこで線虫の生殖腺や卵細胞の成熟に伴って正常に起こるアポトーシスが宇宙でも正常に機能するかを確認することは宇宙で生物の発生が正常に進むかを議論するうえで貴重な情報となります。

●細胞死の機能が正常だということが宇宙で検証できたことは、どういうことをもたらす可能性があるのでしょうか。
減数分裂期の相同染色体間の遺伝子組み換え修復の欠損時に、アポトーシスが生じます。
生物が宇宙放射線により被ばくした場合も、傷ついた細胞は本来の生物が持つ機能であるプログラムされた細胞死により除去され、分裂後の細胞に遺伝的変異が蓄積しにくいという可能性があると考えられます。その場合、将来、人間が宇宙に長期滞在するときの心配事が一つ減ったともいえるかもしれません。

●2015年1月〜2月に実施したエピジェネティクス実験では、線虫の筋量が低下する過程での遺伝子の変異や、エピジェネティックな制御(DNAの塩基配列は変わらずに、その周りの化学修飾によって遺伝子の働く量が変わること)も含めた遺伝子発現の変化、またその遺伝子の変異や変化が世代を経て子孫に受け継がれる可能性を4世代に渡って調べます。宇宙での培養実験は成功し、宇宙で得られた試料は無事に日本に戻り、現在解析中です。


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