サイトマップ

宇宙実験サクッと解説:前庭―血圧反射編


前庭と血圧の関係って???
宇宙実験調査団のピカルが前庭−血圧反射実験を大調査!
実験提案者の森田啓之先生とも仲良しの物知りハカセに聞いてきました。

物知りハカセ

ピカル

ピカル:

こんにちは、ハカセ。ちょっと悩みがあって。おばあちゃんが、最近、立ち上がるとふらふらするから病院でみてもらったんです。

ハカセ:

それは大変じゃの。ピカルもいつになく元気がないし。で、どんな様子なんじゃ?

ピカル:

「起立性低血圧」とか「前庭がどうのこうの」ってむずかしいことをいわれたようです。はやく元気になってほしいんですけど、「前庭」とか「血圧」とかって、ぼくには良くわからない言葉がいっぱいあって。

ハカセ:

そうじゃの。まず、「前庭」というのはわしらの耳の奥の方にある器官のことで、地球上でわしらの頭のかたむきや、身体が地面に引き寄せられること(重力)を感じるところなんじゃよ。「血圧」は、血が血管を押し広げようとする力のことで、血は、血圧の高い方から低い方に向かって流れるんじゃ。そのため、心臓から出た血は、身体を廻ってまた心臓に還ってくることができるんじゃよ。「低血圧」ということは、身体を廻る血の勢いが弱いという事じゃ。病院で、腕に巻いて測る機器がおいてあるじゃろ?普段は、ああゆう機器で血圧を測定するんじゃ。

ピカル:

あれ、ぼくの家にもあっておばあちゃんが毎日測ってます。おばあちゃんの病気と関係があったんですね。じゃあ「起立性低血圧」っていうのはどんな病気なんですか?

ハカセ:

わしらが寝ているところから立ち上がろうとすると、からだの向きが変るじゃろ?そうすると、血は足のほうに集まって、心臓に戻ってくる血と、心臓から送り出される血が少なくなって、血圧が下がるんじゃ。

ピカル:

体の中心部分の血が一時的に減るみたいになって、血が流れる勢いが弱くなっちゃうんですね。

ハカセ:

そうじゃ。でもそれと同時に、さっき話した「前庭」が身体の向き、つまり重力の向きが変わったのを感じて、血圧を上げようとするんじゃよ。わしらの身体は、こういったしくみで血圧が一定に保たれとるんじゃな。これを、「前庭−血圧反射」というんじゃ。

ピカル:

へぇー。いままで知らなかったけど、僕たちの身体ってうまくできてるんですね。

ハカセ:

じゃが、ピカルのおばあちゃんくらいのお年寄りになると、このしくみがうまくはたらかなくなる人もでてくるんじゃ。

ピカル:

そうかぁ。でも、これが、宇宙とどういう関係があるんですか?

ハカセ:

宇宙飛行士の身体は宇宙ではどんな状態になっているか知っておるかな?

ピカル:

重力がないから、ふわふわ浮いています。

ハカセ:

そう、無重力では、上も下もなくなり、地上とは違ったことが身体に起きるんじゃ。まず、「前庭」に入ってくる重力刺激がなくなる。そうすると、地上では働いている「前庭−血圧反射」が、働かなくなってしまうんじゃ。ところで、宇宙飛行士は、地上に帰ってきたばかりの時は、立っているのがつらそうなのは知ってるかの?

ピカル:

テレビで、まわりの人たちに支えられているのと見たことがあります。でもしばらくすると、元気に歩いていますよね。

ハカセ:

お、いいところに気がついたもんじゃ。宇宙から帰ってきたすぐ後は、前庭は、何カ月もいた宇宙の環境にすっかり慣れてしまって、「前庭−血圧反射」がすぐには戻らないんじゃよ。これは、前庭の働きが年をとったせいで弱ってしまったおばあちゃんの症状と同じような感じじゃな。でも、宇宙飛行士はもともと健康な身体だから、だんだん地上の「重力」に慣れてきて、元に戻るんじゃ。人間の身体の適応力じゃ。

ピカル:

へ〜。でも、だんだん元に戻ってくるしくみはどうやったらわかるんですか?

ハカセ:

森田先生は、地上で、正常なネズミの前庭をわざと働かないようにして、正常ネズミと比べることで、これらのしくみを調べてきたんじゃ。人で実験するときは、前庭系を外から電気で刺激する方法を使って、重力の情報をわざと入れないようにして、前庭−血圧反射の働きを邪魔するんじゃ。

ピカル:

電気ショックで重力を感じられなくするんですか?

ハカセ:

うむ、ちょっと違うが、まあそのようなことじゃ。

宇宙飛行士に、宇宙に行く前と後で、この電気刺激の方法で前庭−血圧反射が働かないようにして、ベッドを立てたり倒したりして調べるんじゃ。

普通は、強い電気刺激をあたえると、前庭−血圧反射が働かなくなって、立った時の血圧は低くなり、電気刺激をあたえない場合は、前庭−血圧反射が正常どおり働いて、立った時の血圧は変わらないはずなんじゃ。

じゃが、宇宙から帰って来たばかりでは、まだ、無重力の時の前庭−血圧反射の働きが無くなった状態が残っていて、電気刺激のあるなしにかかわらず、立った時の血圧が低くなると思われているんじゃ。そして、日にちが経つにつれ、宇宙飛行前と同じように正常に戻ってくるはずなんじゃ。

ピカル:

飛行の後に、そういう時間変化を詳しく調べるわけですね。このしくみが詳しくわかると、人が宇宙から地球に帰ってきた時の対策や、宇宙滞在時の宇宙飛行士の健康管理にも役に立ちますよね。

ハカセ:

そうじゃ、もうわかっていると思うが、ピカルのおばあちゃんみたいなお年寄りの健康維持のためにも、大切な研究なんじゃ。

ピカル:

うちのおばあちゃんにも、おばあちゃんの起立性低血圧がよくなるように、宇宙飛行士がいろいろ実験してくれてるよって言っておきます! 今日はありがとうございました!


V-C Reflex トップページへ | 「きぼう」での実験ページへ

 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency サイトポリシー・利用規約