大西先生は、日本がスペースシャトルで実験をスタートした1990年代から継続して、放射線と生物との関わりについて実験を重ねて来られました。
その経験から放射線については「正確に知って正しく怖がる」ことが重要だと説いています。
むやみに怖がるのではなく、正確な情報を得て正しい対策をとるべきだということです。
生物の体はきわめて優れたシステムからできあがっています。
宇宙で放射線をあびる量が増えて細胞がもしダメージを受けたとしても、p53を中心とした遺伝子群がきちんとはたらいて、細胞分裂を停止して、その間に傷ついた遺伝子を修復したり、修復が間に合わない場合には細胞にアポトーシスを起こしたりして、結果的に生物は放射線障害を取り除く能力をもっていることが知られています。
そのはたらきを正確に知れば、むやみに放射線を怖がる必要はなくなります。
まずは、p53を中心とした遺伝子群の宇宙でのはたらきを「正しく知ること」が、将来月・火星・さらにその先へとめざす時のためにも、宇宙放射線の防護対策研究の第一歩となるのです。
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オゾン層破壊の後の地球環境を予測するために、宇宙空間でオゾン層破壊のシミュレーションを行うための研究を、バナナを用いた実験により進めている。
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宇宙放射線とは太陽のフレアーや銀河系から届く重粒子線のこと。
これから人類が宇宙進出をするためには、宇宙放射線研究が不可欠となる。
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