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実験の背景


放射線が人体に与える影響の一つに、DNAが損傷を受けたあと、修復がうまくいかずに起こるがん化があります。



がんは正常な細胞が遺伝子の変異により異常な細胞となって過剰に増殖してしまい、周囲の正常な細胞、組織を侵害して個体に致命的な影響を及ぼします。

地上でのがん研究の進展はめざましいものがあります。

がん患者のがん細胞を調べると、「p53」という遺伝子が正常でないことが多く、p53はがん研究のキー遺伝子になっています(図1)。



大西武雄先生は、1993年にスペースシャトル・コロンビア号で宇宙飛行をしたラットの筋肉や皮膚に、このp53タンパク質が蓄積されていることを見いだしました(図2)。

このp53が、今回の実験の焦点です。

図1 がん抑制遺伝子産物p53のはたらき


図2 宇宙飛行したラットの筋内のp53の量

1993年にスペースシャトルで宇宙飛行をしたラット4匹の筋肉にはp53が地上のラットに比べて約3.5倍蓄積していた。



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