ハスの葉やよくワックスをかけた自動車のボディの表面では、水は滴(しずく)になります。
これは、水に“表面張力”があるためです。
表面張力は、水などの液体に働く“表面積をできるだけ小さくしようとする力”です。
ところで、この表面張力は液体の温度や溶けている物質の濃度によって変わりますが、普通は温度が低い方が大きいのです。
そのため、表面上の左右や表面と内側に温度差がある場合、水の表面に油やアルコールを落とした時のように濃度差がある場合、表面張力の小さい方から大きい方に向かって流れが発生します。
図1はその様子を説明しています。
液体の表面が流れれば、それに引きずられて液体内部にも流れ(対流)が起きます。
この現象は19世紀にイタリアの物理学者マランゴニによってはじめて詳しく研究されたので、「マランゴニ対流」と呼ばれています(図1)。
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マランゴニ対流は、半導体材料であるシリコン結晶を作るときや、パソコンの放熱に利用されるヒートパイプにも発生し、結晶の品質や放熱性能に影響を与えています。
そのために、マランゴニ対流について詳しく知ることは、流体の性質についての知識を深めるだけでなく、半導体材料の製造や宇宙用に機器開発などに重要な意味を持っています。
マランゴニ対流について研究するには、その影響をはっきりととらえる必要があることは言うまでもありません。
しかし、地上では重力が作用して生じる熱対流(浮力による対流)に隠れてしまい、マランゴニ対流の影響を観察することが難しいので、微小重力環境である宇宙での実験が役に立ちます。
この3つのテーマはFPEF(流体物理実験装置)を使って行う実験で、いずれもマランゴニ対流に関する研究を目的にしていますが、それぞれのテーマの観察方法や解析方法は異なり、特徴があります。
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