ポイントその1
氷の結晶成長過程に対する理解を深めます。
今回着目する円盤状氷は、分子的に平坦な面である円盤の面と、分子的に荒れた面である円盤のふちの面(外周部)との組み合わせからなっており、それぞれ層成長とラフニング成長という代表的な2種類の結晶成長様式で成長します。
対流のない微小重力環境において、それぞれの面がどのように成長するかを詳しくしらべることで、結晶の形ができるしくみを明らかにします。
ポイントその2
過冷却水からの氷結晶の成長は、融解した金属から結晶が成長するのと同じように、融液からの結晶成長です。
半導体の基盤として活用されるシリコンなどの結晶は、その典型的なもののひとつです。
物質は異なっていても、結晶の成長のしくみは共通なのです。
氷は、融点が低いので、その成長の様子をたやすく観察できます。
氷の結晶の成長のしくみを理解することは、金属結晶の成長のしくみを理解することにもつながります。
ポイントその3
氷点下の環境でも凍らずに暮らす生物がいます。
これらの生物は不凍タンパク質と呼ばれるタンパク質を持っており、生体内でできる氷結晶の成長を食い止めることができます。
たとえば、タラ、カレイ、ニシンなどはこのタンパク質を持っています。
また、大根や人参など、冬野菜にも含まれています。
過冷却水から氷が結晶成長する機構を調べることは、これらの生物の生体反応を理解することにつながります。
ポイントその4
氷の結晶成長の知識は、臓器移植のための生きた臓器の保存や冷凍食品の品質保持など、わたしたちの将来の生活にも役立ちます。
ポイントその5
氷の結晶成長機構は、地峡温暖化ガスを大量に封じ込めているクラスレート・ハイドレート(水分子のカゴの中にガスが入っている化合物)の生成過程と深く関係しています。
これらを理解し、制御する技術の開発に役立ちます。
ポイントその6
氷の結晶は、地球表面に最も大量に存在する結晶体です。
その地球表面で起こる様々な自然現象は、氷の結晶が成長したり、融けたりすることを通して起こります。
たとえば、雪や雨が降ったり雷が起きるなどの気象現象、海氷の生成や消滅、南極の氷床の生成、氷河の流動などの自然現象、さらには生命の発生や進化なども、氷の結晶と深く関連しています。
また、最近注目を集める環境問題である酸性雪の生成やオゾン層の破壊現象なども、氷の結晶の生成と密接に関係しています。
氷の結晶成長のしくみを理解することは、このような自然現象の起こるしくみを解明することにも結びつくのです。
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