誰もが一度はセーターに降った雪やガラス窓に凍りついた水蒸気を見たことがあるでしょう。
それらは、微妙に異なる木の枝のような形が集まってきれいな六角形になったり、同じ形が等間隔で現れたりしている結晶であることがわかります。
雪や氷の結晶ができるときの温度や湿度、風の強さ、塵の量などの条件のわずかな違いが、このような形の違いを生み出しています(図1)。
氷の結晶ができる過程(結晶成長過程)は複雑で、でき方の詳しい仕組みには、まだわからないところが残されています。
氷の結晶成長は、円盤状の結晶が成長するところからはじまります。
結晶成長が進むにつれて、この円盤の縁の形が不安定な状態になり、デンドライトとよばれる樹枝状の結晶が成長していきます(図2)。
これまでの研究で、樹枝状結晶の成長過程については、枝が分岐する仕組みなどがある程度わかってきました。
しかし、なめらかな形をした円盤状の結晶に凹凸ができる、つまり不安定な状態になる過程についてはよくわかっていません。
この過程を詳しく調べるためには、結晶周辺の水の温度分布とその時間変化を正確に計測する必要があり、流れのない安定した静かな環境が必要です。
ところで、水を火にかけたり、部屋でストーブを焚いたりしたとき、水や空気が上下に流れる現象(熱対流)が見られます。
こうした熱対流は、加熱によって水や空気の密度が変化したところに重力が作用して生じる現象です。
このような熱対流は地上では避けられない現象であり、例えば氷が成長するときは「潜熱」と呼ばれる熱が発生するため、熱対流が起こり、氷周辺の環境を乱してしまいます。
国際宇宙ステーションの中は微小重力環境であるため、このような熱対流は生じません。
したがって、円盤状の結晶が不安定化する過程を詳しく、精度良く観察するためには、宇宙で実験を行うことが欠かせないのです。
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図1 結晶の形(雪)
写真提供:北海道大学 古川義純教授
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