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国際宇宙ステーション米国実験棟での中性子計測実験

4.宇宙放射線被曝管理技術向上のために期待される成果
国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士の宇宙放射線による被曝を適切に管理するためには、様々な種類で広範なエネルギー範囲の放射線からなる宇宙放射線による被曝線量をできるだけ正確に算定することが必要です。宇宙船内部において放射線量を実測することがもっとも確実な方法ですが、宇宙船内部においてすべてのエネルギー範囲の中性子を計測できるような機器は現在存在していません。このため、ISSにおける中性子による被曝線量の算定は、当面、中性子以外の宇宙放射線量をもとに計算モデルにより、算定する予定です。今回の中性子計測実験では0.025eVから10MeVまでのエネルギー範囲で中性子を実時間計測することができることから、このような計算モデルによる算定精度をある程度検証することが可能であり、今後の宇宙放射線被曝線量の算定精度の向上に資するものです。


5.宇宙放射線計測の実績及び今後の計画
(1)平成6年7月〜平成10年6月にかけ、第2次国際微小重力実験室、STS-79,STS-84,STS-89,STS-91において、放射線モニタ装置(RRMD)のフライト実験が行われ、陽子から鉄の粒子までの広範囲の放射線を実時間で計測しました。また、STS-91においては、人体ファントム模型を用いて線量計測を行い、人体内部の線量を把握しました。
(2)平成10年1月、STS-89において、中性子モニタ装置のフライト実験が行われ、中性子環境の計測を行いました。取得されたデータの解析結果から、南大西洋異常域やその他の地域での線量当量は、NASAのデータベースや過去のシャトルミッションで取得された受動型検出器の計測結果とほぼ一致しており、BBNDが有効であることが実証されました。図-8に、計測された中性子の線量当量を世界地図上にプロットしたものを示します。

図−8 中性子線量当量の世界マップ
(3) NASDA(現JAXA)は、平成15年打上予定の船外実験プラットフォーム装置である宇宙環境計測ミッション装置(SEDA-AP)を開発中です(図-9参照)。SEDA-APは、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームを利用するミッションのひとつとして、中性子モニタを含む各種宇宙環境計測センサを搭載した装置で、船外の宇宙環境(例えば、中性子、高エネルギー軽粒子、重イオン、微小粒子、原子状酸素など)を計測します。SEDA-APで取得されるデータは、太陽中性子の直接計測による太陽フレア加速メカニズムの解明等での成果が期待されます。

図-9 宇宙放射線計測ミッション装置(SEDA-AP)


  表−1に、今までの宇宙放射線環境計測の実績及び今後の計画を示します。

 表−1 今までの宇宙放射線環境計測の実績及び今後の計画 (PDF6KB)


6.NASA/NASDA(現JAXA)書簡取り決めの概要

6.1 枠組み
(1)ISS米国実験棟においては、NASA有人研究プロジェクトの一環として、BBNDの他に、米国、ドイツなどの大学、国立研究機関の協力により、宇宙放射線計測、神経医学、宇宙心理学の各実験の実施が計画されています。
(2) ISS計画の包括的な枠組み(IGA/MOU)の下での協力として、NASDA(現JAXA)とNASAの間で書簡取り決め(LA)を平成11年8月27日に締結しました。


6.2 NASDA(現JAXA)およびNASAの役割分担
(1)NASDA(現JAXA)の役割
  • BBNDおよび関連装置の提供
  • 装置運用の支援
  • データの処理およびNASAへの提供
  • BBNDにかかる飛行士訓練の支援
(2)NASAの役割
  • スペースシャトルの打上、運用、回収
  • 装置運用の実施
  • BBNDにかかる飛行士訓練の実施

6.3 データの取扱
(1) NASDA(現JAXA)およびNASAは、BBNDによって得られた未処理データおよびデータ解析に必要なISSの環境データおよび運用データにアクセスすることができます。
(2) NASDA(現JAXA)とNASAは、広く研究者に取得データが利用可能となるようなプロセスを作成します。


7. 実験装置開発・運用スケジュール
 
 表-2に、実験装置の開発・運用スケジュールを示します。
表-2 スケジュール

 また、運用計画は、以下の通りです。
(1)平成13年2月打上予定のスペースシャトルによるISSへのドッキング後、多目的補給モジュール(MPLM)から米国実験棟へ装置を移動し、所定の場所に設置します。その後、中性子モニタ装置を立ち上げ、計測を開始します。
(2)計測開始後、約6ヶ月間、連続してデータを計測し、記録媒体(ハードドライブ)に記録します。記録されたデータは、約1週間に1度の頻度でまとめて、地上へのデータを送信します。
(3)平成13年6月打上予定のスペースシャトルのISSへのドッキング前に、米国実験棟内で装置の取付場所を変更します。
(4)平成13年8月打上予定のスペースシャトルのISSへのドッキング前に、装置を取り外し、MPLMへ収納し、スペースシャトルで地上に回収されます。


最終更新日:2003年10月1日

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