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2.4 2次元展開/高電圧ソーラーアレイ実験 (2D/HV) の成果

(1)実験目的

  1. 直交して伸展するマストにより、小さく折り畳まれた(三浦折り)ブランケットを2軸方向に同時に展開し、逆操作により収納することを確認する。

  2. アレイの一部に貼られた太陽電池セルの直列結合により高電圧を発生させ、電離層プラズマとの干渉の有無を調べる。

(2)2D/HVシステム

 図2.4−1に 2D/HV展開部の構造を示す。

図2.4-1 2D/HV展開部の構成

 構成要素は上方から、折り畳んだアレイを収納・確保する一対のプレッシャーボード、展開・収納のアクチュエータ及び展開後の支持構造体としての主・副マスト、全体の構造を支持する下部プレート、及びSFU本体と結合するためのベースプレートとから成る。アレイは主・副マストによりプレッシャーボードから引き出され、図2.4−2に示すように直角二等辺三角形状の膜面構造体として宇宙にて展開される。

図2.4-2 2D/HV薄膜面の展開時の形態

 制御及びデータ計測は2つの独立する電子機器により実施される。ベースプレートには、収納異常時に展開部分を切り離し放出するための機構が装備されている。

(3)実験運用と結果

 SFU打ち上げ後、1995年3月28日に収納状態でのチェックアウトを実施し、2D/HVの全てのテレメトリデータが正常に取得できた。2D/HVアレイの展開収納実験は 1995年 5月 27日に行われた。図2.4−3(a)はモニタテレビによる全展開の映像で、(b)は地上試験時に同じ角度から撮った写真である。


(a)軌道上全展開の図


(b)地上試験状況
図2.4-3 2D/HV軌道上全展開と同じ角度で見た地上試験状況

 このような柔軟な膜面構造物においては重力が作用する地上での試験は困難であり、今回は軌道上の展開途中の映像も十分に取得することができたので、地上試験への数多くの検討事項を明確にすることができた。

 モニタテレビ画像、マスト伸展長などのテレメトリデータは正常であり、完全展開が確認された。しかし展開中のアレイ加速度、太陽電池セルの温度と出力のテレメトリデータは時間的に変化がなく、異常であった。そのため高電圧アレイ実験を中止した。その後、同日中に収納実験を行い、テレメトリデータにより正常な収納を確認した。8月3日にはシャトルの安全性要求に対応するためプレッシャーボードのロックを実施した。

(4)テレメトリ異常の原因解析

  1. 異常のあった全てのテレメトリデータは二個の分離コネクタ(37ピン及び 61ピン)のうち37ピンの分離コネクタを通っている。
  2. マスト伸展を駆動する電力は61ピンの分離コネクタを通って供給される。
  3. 打上げ直後のチェックアウトにおいてすべてのテレメトリデータが正常であることを確認して以降、異常を発見するまでの間に赤外望遠鏡 (IRTS) のサンシールド展開及び投棄が行われている。
  4. サンシールド展開前後で 2D/HV 火工品取付部温度が31℃から70℃に、2D/HVに隣接する姿勢制御推進系 (RCS) スラスタモジュール #3 の温度が40℃から80℃に上昇した。



図2.4-4 SFUにおける2D/HV展開部の装置位置

 これらの事実に基づいて、サンシールド展開後その裏面からの太陽反射光による予想外の熱入力が 2D/HV系にあったものと推測し、詳細な熱解析を行った。図2.4−4はサンシールド展開時のSFU の形態を示す。図2.4−5は切り離し機構の説明図である。(a)図において、一次ケーブルを火工品で切断すると、一段プーリーが回転しそれにつながる二次ケーブルが緩んで、タイダウン機構や分離コネクタを解放する。(b)図は分離コネクタの外観で、37ピンのコネクタが右側、61ピンのコネクタが左に写っている。熱解析の結果、(a)図の二次ケーブルの温度は90℃に至ることが判明した。これによる二次ケーブルの伸びを求めると、37ピンの分離コネクタは外れ、61ピンの分離コネクタはケーブル長にして 0.3mm の余裕で辛うじて分離されずにとどまったものと推定された。



図2.4-5 切り離し機構

(5)飛行後解析

 飛行後の外観検査から 37ピンの分離コネクタは外れ、61ピンの分離コネクタは外れずにいることが確認された(図2.4−5 (b) )。又、ベースプレートの銀・テフロン表面にはワイヤハーネス、ケーブル、プーリー等の影が太陽紫外線(UV)等の照射で焼き付けられていた。37ピンの分離コネクタを抑えるプーリの影を観察した結果、明瞭な(正常位置の)影のほかにプーリがより開く方向に動いたと思われる薄い影が認められ、ケーブルの伸びを助長した可能性があることが判明した。また、アレイブランケットは正常に収納されていることが確認された。

(6)結論

  1. 2次元展開機構は正常に動作し、アレイブランケットも正しく展開し、元の状態に折り畳まれた。

  2. 高電圧アレイ実験に関わるテレメトリデータは分離コネクタの異常分離により実施できなかった。今後の対策としては、分離機能を損なうことなく熱制御カバーを設置することや、展開物反射面の特性を適正に選んだりすることによる熱入力の大幅な変化に耐える設計が必要である。

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