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2.13 成果総括


 単熱炉は7つの電気炉に各々実験試料を搭載した複数炉方式による電気炉である(図 2.13−1)。単熱炉での実験は、ブリッジマン法によるCdTeの非接触結晶成長と溶液成長法によるAlGaAsの結晶成長の2件の化合物半導体結晶成長実験(7個の実験試料)を行った。

 単熱炉は軌道上での実験期間において、計画通り正常の動作した。

 結晶成長実験では、7個全ての試料が宇宙にて溶融・凝固し、結晶成長が行われたことを確認した。今後、さらに詳細な結晶評価を進めるととも微小重力における結晶成長の総合的検討を行う予定である。

図2.13−1単加熱炉(Isothermal Heating Furnace)

(1)電気炉

 単熱炉は計画した実験を予定通り実施し、所定の機能性能を満足したことを確認した。
 回収後の飛行後点検の結果、約10カ月の軌道上飛行において、装置の劣化や異常等が生じていないことを確認した。

(2)実験

(a)ブリッジマン法によるCdTeの非接触結晶成長

 宇宙の微小重力下でボルト形状のCdTe単結晶の先端部分を融解、再結晶させる実験を温度条件を変え5回行った。地上実験では融解したCdTe融液は重力方向に垂れ下がり、アンプルと接して球状の結晶体は得られなかったが、宇宙実験では融液とアンプルが接触することなく、球状の結晶体が得られた。(図2.13−2)
 非接触で凝固した試料の結晶では双晶及び結晶粒界が確認されず良好な単結晶であった。


図2.13−2宇宙で成長したCdTeの球状結晶

(b)溶液成長法によるAlGaAsの結晶成長


 成長方法は溶解度の温度依存性を利用した徐冷法であり、図2.13−3のように6枚のGaAs基板を箱形に組み合わせ、内部に低融点金属Ga(融点29℃)とAlを入れたものである。これにより溶液の自由表面が無くなり、表面張力差に起因するマランゴニ対流の発生を防げるため、微小重力下では無対流での実験が可能となる。


図2.13−3 AlGaAsの結晶成長試料図


 回収した試料の成長表面モホロジと成長膜厚の評価を行った結果、地上では基板の位置によりモホロジが異なり、下側より上側の基板が表面凹凸が大きかったが、宇宙では位置での差が無く、かつ凹凸が小さかった。また、徐冷速度の遅い実験では表面平滑度が高かった。
 成長膜厚は地上では対流の影響により上と下の基板で各々約230m、100μmと大きな差があったが、宇宙では同一るつぼ内の6枚の上と下の基板上の膜厚に差はほとんど見られなかった。今回の実験は無対流で結晶成長が行われたことを示している(図2.13−4)。

宇宙実験

実験1

試料1

150 

試料2

130 

実験2

試料1

150 

試料2

130 

地上実験

実験1

上側基盤

230 

下側基盤

90 

実験2

上側基盤

240 

下側基盤

110 

図2.13−4 AlGaAsの地上と宇宙での成長膜厚の比較(単位μm)

3.成果総括

  1. SFUの打上げ、軌道上実験運用、回収に成功し、わが国で初めての再利用型衛星の途を開いた。

  2. 宇宙実験・観測を実施し、ほぼ予期通りの科学的及び技術的成果を得ることができた。

  3. 日米二国の異なる輸送システムを用いて、世界初の国際宇宙輸送に成功した。

  4. 回収されたSFUシステムの飛行解析により、今後の衛星開発に資する技術的知見を得た。

  5. 宇宙プラットフォームによる今後の宇宙環境利用に役立つ軌道上環境データを得た。

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