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質量と重さの違いって何
質量とは物質の動きにくさの度合い、つまり慣性の大きさのことです。ですから物質の質量は地球上でも、宇宙空間でも、月面でも変わりません。質量の単位はkgです。
重さとは、物体に作用する万有引力(重力)の大きさです。力の大きさですから単位はN(ニュートン)です※。
重力の変化によって重さは変わりますから、地球上で質量60kgの人は月面では重力が地球の約1/6ですから重さは約1/6(約100N)になり、軌道上のISSの中では、ほぼ重さはなくなります。
宇宙を飛行している人工衛星も、船外活動をしている宇宙飛行士も重さはほぼ0ですが、質量は運動に関係なく普遍ですので、宇宙飛行士が人工衛星を簡単に手で掴んで移動させたりはできないのです。
※ 1Nは、1kgの物体を1m/s2加速する力
人工衛星が地球の周りを回り続けるのはなぜ
動いている物体は外から力が加わらないかぎり、いつまでも一直線に同じ速度で動き続け(等速直線運動)、静止している物体は外から力がかからないかぎり永遠に静止しようとします。これをニュートンの第1法則(慣性の法則)といいます。
ここに摩擦の無いテーブルの上を一定の速度でまっすぐ転がっているビー玉があるとしましょう。そのビー玉の進行方法に対し指で斜めにちょっと弾くと、当然ビー玉の進む方向が変わります。その先でまた、ビー玉を弾くと、さらに進む方向が変わります。
ビー玉を弾く向きをある1点に向けることで、ビー玉はその1点を中心とした多角形を描いて一周します。このビー玉を弾く回数を増やしていくことでビー玉の動きは次第に円に近づいていきます。この力を連続的にある1点に向けて加え続けることで、ビー玉は円を描くように運動します。
等速直線運動をしているビー玉に常に中心に向かう力を加えるにはどうすれば良いでしょうか。ビー玉に糸を付けて反対の端を一点に固定すれば良いのです。この中心に向けて引っ張る力を向心力といい、衛星が地球の周りを回り続ける原理となっているのです。
つまり、直線に動き続けようとする力(慣性力)と、中心へ向けようとする力(向心力)のベクトルの合成により物体は円運動を続けるのです。人工衛星が地球に落ちていても、人工衛星が水平に早い速度を持っていることと、地球が丸いため何時までも地上に到達しないのです。人工衛星の進む力を大きくすれば、地球周回軌道から飛び出し、人工衛星の進む力を小さくすれば、地球の中心に向かって落下してしまいます。
これは、物体の速度を上げると遠くまで飛び、速度を上げていくと、やがて地球のへりに沿って飛び(落ち)続けるという説明と同じことです。
遠心力ってどんな力
動いている物体は外から力が加わらないかぎり、いつまでも一直線に同じ速度で動き続け(等速直線運動)、静止している物体は外から力がかからないかぎり永遠に静止しようとします。
これをニュートンの第1法則(慣性の法則)といいます。
あなたは停止している電車に進行方向を向いて立っているとしましょう。この電車が急に走り出したら、あなたは後ろに倒れそうになりますね。電車が動きだしただけで、あなたには何の力も働いていないのに後ろに引っ張られるように感じますね。
この後ろに引っ張られる感じの力を慣性力と呼びます。
走っている電車がブレーキをかけて速度を落とすと進行方向につんのめるのも、あなたの体はそのままの速度で動き続けようとするからです。
慣性力とは動いているものを止めようとしたり、止まっているものを動かそうとするときに必要な外力に釣り合う力のことです。
電車が直線を走り、カーブに差し掛かったとしましょう。あなたは電車が曲がる方向と反対側に引っ張られ体が傾きますね。ここにも慣性力が働いています。
あなたは電車とともに直線運動をしていて、電車がカーブを曲がっても、あなたの体はそのまま直線運動を続けようとして、カーブと反対方向に体が傾くのです。
この場合の慣性力を遠心力と呼びます。
もし電車が同じ場所をぐるぐる回ったとすると、あなたの体は慣性の法則でまっすぐ進もうとしているので、常に回転する円の外側に引っ張られる感じがします。
つまり、物体を回転させると遠心力という特別な外向きの力が発生するわけではないということです。回転している当事者にしか感じられない見かけ上の力です。
例えば、重りに紐をつけて振り回し、突然紐が切れると、重りは回転の接線方向に直線に飛んでいきます。重りを引っ張っていた力(向心力)が無くなり、直線運動を続けようとするのは慣性の法則があるからです。
回転運動に関する説明を簡単にするために、回転運動に伴う慣性力を遠心力と呼んでいます。
無重力と無重量の違いって何
無重力とは重力がないという意味です。重力の原因となる星や惑星から遠く離れた空間の性質です。
しかし、重力があっても自由落下している空間は無重力と同じ状態になっています。このことに最初に気付いたのがアインシュタインで1907年のことです。
無重量とは重さがないという意味です。無重力または無重力状態の空間ではどのような物体も重さがありません。軌道を回る国際宇宙ステーション(ISS)は地球に対して自由落下の状態にありますから、ISSもその内部も無重量です。
地上で微小重力実験はできますか
私たちは通常重力に逆らっているから重力を感じているのです。地球表面の重力を打ち消すためには、重力に逆らわず、重力の中心に向かって落下すれば良いのです。
実験装置を落下させる落下塔というものがあります。落下搭の仕組みは、地球の中心に向けて真っすぐ立てたタワーもしくは掘った穴に実験装置を内蔵したカプセルを落下させるというもので、遊園地にあるフリーフォールと基本原理は同じです。
北海道空知郡上砂川町にある(株)地下無重力実験センター(Japan Microgravity Center: JAMIC)※1にある落下搭を例に説明します。この設備は旧炭坑の縦坑を利用したもので、全長710m、自由落下距離は世界最大の490m、10秒間の微小重力環境が実現できます。
落下塔の内部は空気抵抗でカプセルが減速しないように、空気抜きのダクトが設けてあります。落下終了時はこのダクトを制御することでエアブレーキにもなります。
落下カプセルは二重になっており、実験装置は落下カプセル内に取り付けるのではなく、落下カプセルの中には空間がありそこにある内カプセルに取り付け、落下カプセルに固定されてはいません。
この落下カプセルの中は真空にされています。落下カプセルの上部には空気抵抗により減速した速度を補うための空気ジェットスラスタがあります。
実験機器を搭載した内カプセルが落下カプセルの床に触れそうになったら、空気ジェットスラスタを噴いて落下カプセルを加速し常に内カプセルが落下カプセルに触れないように制御し、自由落下させます。この構造により内カプセル内は10-5gという非常に良好な微小重力環境を保つことができます。
落下搭にはガイドレールがあり、落下カプセルはそれに沿って落下します。着地時には、エアブレーキと機械式ブレーキにより緩やかに減速(8g以下)されますので、市販の実験装置や測定器が壊れることはありません。
また、岐阜県土岐市にある日本無重量総合研究所(Micro-Gravity Laboratory of Japan: MGLAB)には自由落下距離100m、自由落下時間4.5秒間の落下搭があります。この落下搭は搭内を真空にすることにより、空気抵抗を無くし落下カプセルを自由落下させています。
地上で微小重力実験はできますか(その2)
Q5で説明した落下塔よりもっと長い時間微小重力環境を作り出す方法に、パラボリックフライト(放物線飛行)という方法があります。
Q5落下塔で説明したように、落下しているカプセルの中の物体はカプセルと同じ速度で自由落下するので無重量状態になります。それと同様に、放り投げたボールの内部もボールと一緒に放り投げられたときの力と重力の合成した力に従って自由落下しているので無重量状態になります。
この放物線を描いて飛ぶことをパラボリックフライトといいます。
航空機を使用したパラボリックフライトは、放物線運動を行うように航空機を操縦して機内に無重量環境を作り出します。
ボールを投げるときできるだけ強く上向きに投げることで地面に落ちるまでの時間を長くすることができるように、航空機でもできるだけ長い無重量環境をつくるためにパラボリックフライトに入る直前で最大速度に加速して急激に機首を上げ、エンジンをアイドリング状態にします。
そして慣性と重力に任せた放物線運動を行い、安全に回復できるように機首下げ角が限界を超える前にエンジン出力を上げ、機首を引き起こして通常飛行に戻します。
日本のダイヤモンドエアサービス(株)が行っている双発小型ジェット機MU-300でのパラボリックフライトでは、1回当たり10-2g以下の微小重力環境を約20秒間作り出せます。
NASAが宇宙飛行士の訓練などに使用しているジェット輸送機KC-135Aでは、およそ1回当たり25秒間のパラボリックフライトができます。この訓練では、加速度の変化に酔って嘔吐してしまうことがあるので、このKC-135A輸送機はVomit Comet(嘔吐彗星)と呼ばれています。
空と宇宙の境目はどこですか
国際航空連盟(Federation Aeronautique Internationale: FAI)という組織が、高度100kmから上を宇宙と定義しています。なお、米国空軍は80kmから上を宇宙と定義しています。
詳細は100 km. ALTITUDE BOUNDARY FOR ASTRONAUTICS...(英文)をご覧下さい。
では大気圏とはどこまでを言うのでしょうか。
大気圏は対流圏、成層圏、中間圏、熱圏、外気圏に分けられ、外気圏は高度500kmを超えます。つまり学術的には、スペースシャトルやISSが飛行している高度400kmあたりはまだ大気圏内ということになります。
NASAではスペースシャトルが地球帰還時に高度を下げてきて高度120kmに達すると大気圏再突入(Entry Interface: EI)と呼んでいます。これは、大気による機体の加熱が始まるあたりです。
このように、地表から遙か宇宙空間まで無段階につながっているのですから、どこからが宇宙という境は実はありません。
そこで一般的には大気がほとんど無くなる100kmから先を宇宙としています。
なお、大気とは惑星に存在する気体のことで、地球の場合それは「空気」と言うことになります。そして空気の成分は高度が高くなるに従って薄くなり、高層では太陽からの紫外線等によって分解され、原子状酸素(オゾン)が増えていきます。
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