このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
 
JAXAトップページへ
 JAXAトップページへ宇宙ステーション・きぼう広報・情報センターサイトマップ
 

土井 隆雄
デイビッド・ウルフ
宇宙飛行士
宇宙飛行士
インタビュー


左:土井 隆雄宇宙飛行士
右:デイビッド・ウルフ宇宙飛行士
 1998年10月 2日に実施した両宇宙飛行士のインタビューを紹介します。

Q1:今回の試験について一言お願いします。
土井:
 久しぶりに筑波に戻って来られて、一緒に働いていた仲間と会うことができ、また今週は素晴らしい仕事をすることができて、本当に喜んでいます。
 筑波宇宙センターに訓練用のプールが出来ていたのは知っていましたが、私は今までここで訓練を受けたことが無かったので、日本の船外活動の訓練がどの程度のレベルに来ているのか解りませんでした。今回の訓練で実際に潜ってみて、レベルの高さに驚きました。設備やダイバーの質および道具の管理の仕方などがNASAと同等か、ある一部はそれ以上のレベルに達していました。
デイビッド・ウルフ:
 私達は今週重要な船外活動(EVA)各部品の試験をパスすることが出来ました。私達は日本のJEMモジュールを使ってEVAの仕事をしたわけですが、今回のように日本とアメリカで共同作業をすることが正しいやり方であり、このような共同作業を続けて行くことで私達は国際宇宙ステーションを完成することが出来るのです。JEMは国際宇宙ステーション全体のなかで非常に重要なモジュールの一つです。日本との協力関係で国際宇宙ステーションの仕事ができることを非常に嬉しく思っていますし、この協力関係を続けることによって国際宇宙ステーションを絶対に成功裏に完成することができます。

Q2:STS-95ミッションで、ジョン・グレンさんが77歳という高齢で飛行することについてどう思われますか?
土井:
 宇宙は、年齢などには捕らわれず全ての人々に開かれるべきであると思っています。今までは、私達のように30~40歳代か、歳を取っていても50歳代の者しか行けませんでした。
 この度のミッションで、70歳代後半のジョン・グレンさんが宇宙に行くということは、どんな年齢層の者にでも宇宙が開かれていることを示すものであり、これは大変素晴らしい事であると思っています。

Q3:ウルフさんは、ミールで船外活動を行っていますが、何の作業をどのくらい行ったのか教えてください。
デイビッド・ウルフ:
 ミール宇宙ステーションの鏡状の表面が、長期間でどの程度変化したかを調べるために、4時間の船外活動を行いました。この実験によって得られる結果は、宇宙ステーションの表面を保護する新しい材料の開発に使われることになります。
 この時に、エアロックのハッチの空気漏れも修理したのですが、船外での作業時間に加え、更にエアロック内でも4~5時間の作業を行いました。空気漏れを起こしているエアロックですので、真空に近い状態で宇宙服を着て、ミールから空気や電源の供給を受けながらの作業となりました。

Q4:NASA・日本・ロシアの船外活動について、内容や思想の違いなどは感じますか?
デイビッド・ウルフ:
 ロシアは、船外活動や宇宙の長期滞在について、非常に多くの経験を持っています。
 船外活動の訓練に関しては、基本的な作業を重点的に訓練する方法と、細かな状況に対応することを重点的に訓練する方法の2通りがあります。
 ロシアは船外活動の訓練に関しては、基本的な作業を重点的に訓練し、宇宙での具体的な作業を想定しての訓練は行いません。そのために私達は宇宙に出てからも続けて訓練を行います。
 それに対してアメリカや日本は、宇宙で起りうる事態を、事前に可能な限り予想し、対応するための訓練を地上で十分に行います。

Q5:船外活動において、困難なことや危険なことは?
土井:
 いくつか危険なことがあります。
 船外では命綱を付けて活動していますが、他にもハンドレールを握ったり、テザー(紐)を使ったりして、体が常にスペースシャトルにつながっているように注意します。これは、シャトルから切り離され、宇宙を漂っていってしまうのを防ぐためす。
 STS-87のミッションでスパルタン衛星を手で捕まえる作業を行いました。この時もし、スパルタンを捕まえそこなって、衛星が私の宇宙服や命綱を引っかけ、そのまま宇宙へ飛んでいってしまったら、私はスパルタンと共に宇宙を漂っていたかもしれません。この時は危険を可能な限り避けるために、通常の船外活動では宇宙服に取り付けてある道具類を全て取り外して、手だけで衛星を捕まえました。
 後は酸素の問題です。宇宙服の酸素は8時間から9時間持ちますが、宇宙服が破れる可能性もあります。このような事態に備えて予備のボンベもついており、万が一の場合にでも対応できるようになっていますが、船外活動の前にシャトルの尖っている部分を全てチェックして、宇宙服を破らないように気を付けています。

Q6:お正月に日本で公開が予定されているアルマゲドンという映画についてお聞きします。映画の中では、一般人ががわずか12日間の訓練で、宇宙へ行き船外活動や隕石に穴を掘るなど複雑な作業を行います。実際にこのような事は可能であると思いますか。また、このような作業の際には、どのような危険が考えられますか。
土井:
 私も見ましたが、あれは映画の中の話といいう事で楽しんで見てもらえれば良いと思います。
 現在の技術レベルでは12日間の船外活動の訓練だけで、あのような複雑なミッションを達成するには不可能です。実際にあのシナリオで1年間以上の訓練を行ったとしても、いろいろな問題が出てきます。1つは、映画にも出てきましたがどのようにして、天体とランデブーして着陸するかが問題になります。有人で月には着陸しましたが、残念なことに、私達はまだそのような技術を持っていません。無人ならともかく、有人では彗星や小惑星に行くのは無理です。また、小惑星などに穴を掘るには、その構造を無人のロボット宇宙船などで事前に十分に調査しておく必要があります。映画のようにいってすぐに穴を掘り始めるのは不可能です。

Q7:実際に巨大隕石が地球に接近するような事態が発生したらどうされますか?
土井:
そのような事態は実際には起らないと思いますが、実際に起ったときには人間は送らずに、無人のロケットを送って隕石に穴を掘ってくっつけ、隕石の軌道を少し変更するのが妥当な手段であると思います。

Q8:宇宙飛行士になる前と、宇宙から任務を完了して帰ってきたときの自分自身で変わったことはありますが。

デイビッド・ウルフ:
多くの宇宙飛行士は、宇宙から帰ってくると、私達が住んでいる「宇宙船地球号」によりいっそうの感謝を覚えるようになります。
土井:
 宇宙に行く前に自分自身にかしていた質問は、実際に宇宙空間で人間が生きて行けるのだろうか確かめてみたいということでした。実際に宇宙に行って一週間ぐらい経って完全に体が宇宙に順応すると、本当に地上と同じように体を動かすことが出来るし頭も良く働くし、全く地上と同じように生活をすることが可能でした。
 地球上で45億年間進化してきた生命が、宇宙という新しい環境でもちゃんと仕事をする能力を持っている、私自身は人間の能力に感動を覚えました。

Q9:順調に行けば2004年に国際宇宙ステーションが出来ますが、土井さんも宇宙ステーションに行きたいと思われますか?
土井:
 是非、国際宇宙ステーションに滞在して様々な仕事をしたいと思います。前回のシャトルミッションでは約2週間(16日間)宇宙に滞在しましたが、宇宙環境に精神的・肉体的に完全に慣れるのに、1週間は必要です。この為、100%の仕事が出来たのは1週間程度であり、少し短い印象を受けました。現在の予定では国際宇宙ステーションの滞在期間は3ヶ月間あり、自分のやりたい仕事を落ち着いて行えると思います。

Q10:いろいろな国の人が長期間閉ざされた環境で生活するということの意味は?
土井:
 実際地球上では非常に多くの人々が生活しています。その地球を小さくしたのが宇宙ステーションということになります。そこで私達はお互いの文化や生活習慣、思想など、いろいろなことを学ぶことが出来ると思います。それは小さなグループでは簡単ですが、地球レベルになるとまだまだいろいろな問題が起ります。それらの大きな問題を解決するために宇宙ステーションでいろいろな文化や言葉を持った人たちが協力して仕事をする技術を学ぶことが出来れば、将来的には地球全体の全ての人類が平和に暮らして行くための知識や技術を宇宙経験から得ることが出来ると思います。

Q11:土井宇宙飛行士はNASAでは具体的にどのような仕事を行っているのですか。NASAで船外活動の訓練を続けているのであれば、どんな事を行っているのですか。
土井:
 前回のミッションから帰ってきてからは、NASAでの船外活動の訓練は行っていません。今回がミッションから帰ってきて初めての訓練でしたので、水中と宇宙との違いを改めて確認することが出来て良かったと思っています。前回のミッション以降、NASAでやっている仕事は2つあります。1つは国際宇宙ステーションでこれから活躍するために新しく選ばれる宇宙飛行士のための訓練のカリキュラムを作っており、これは出来上がっています。今度選ばれる日本の宇宙飛行士も、最初の訓練はこの新しいカリキュラムに沿って筑波宇宙センターで行うことになっています。
 2つめの仕事はJEMのロボットアームの開発に少し携わっています。まだ始めたばかりであり、今はスペースシャトルのロボットアームの勉強をしていますが、今回私が日本にいる間にJEMのロボットアームについても勉強していきたいと思っています。

Q12:水中と宇宙の違いを改めて確認したというのを具体的に説明してほしいのですが。
土井:
 水中の作業というのは確かに宇宙での作業の良いシュミレーションになっており、宇宙で役に立つということを改めて確認しました。ですが、水中と宇宙ではは違いが在ります。これは今までも言ってきたことですが、水の抵抗や粘性によって水中での移動は非常に速度が小さいですし、大きな力が必要です。宇宙では速度はいくらでも大きくできるし力も要りません。その違いが一番大きいと思います。また水中では一つの姿勢をとるとそのまま体が安定してますが、宇宙では不用意な力を入れることで体がすぐに不安定になってしまいます。これらの違いを改めて感じました。

Q13:36年前のグレンさんの飛行を覚えていますか。宇宙飛行士になった今の目から、グレンさんが今回再度飛行することについてはどう思われますか。
デイビッド・ウルフ:
 36年前は6歳でした。それは私のいろいろな記憶の中で、非常に鮮やかな記憶として残っています。
 当時は白黒テレビしかなかったんですが。今考えてみると36年間になんと高度に宇宙技術が発達したかについて非常に感銘を覚えます。今回、彼のフライトが10月29日に在りますが、それが示すところは年齢に関係なく年を取った人にもすばらしい活動が宇宙でできるということを示しています。
 ジョン・グレンは今回、シャトルの正式メンバーとして飛ぶわけですし、彼は年を取った人たちが宇宙で生活し活躍することができることを明瞭に示す非常に良い飛行になると思います。

Q14:ジョン・グレンさんの最初のフライトが与えた影響は大きな物でしたか。
デイビッド・ウルフ:
 彼のフライトは私に大きな影響を与えましたが、それは2番目の影響で、一番大きな影響を受けたのはエド・ホワイトの宇宙遊泳を見た経験です。その時に自分も宇宙遊泳をやってみたいと思いました。それから32年後に自分が実際にミールで宇宙遊泳ができて非常にうれしく思っています。
土井:
 ジョン・グレンのファーストフライトは全く記憶に在りません。私が一番最初に影響を受けた飛行はアポロミッションです。確か中学校2年生の夏だったと思いますが、アポロ10号でジョン・W・ヤングが月を回ったその時から宇宙飛行や月、宇宙、そういったものに対して非常に興味を持つようになりました。


最終更新日:1998年 11月 30日

JAXAトップページへサイトポリシー