セントリフュージ(Centrifuge:
生命科学実験施設) | |
セントリフュージ(生命科学実験施設, Centrifuge)は、宇宙での生命科学の研究を目的とした施設で、国際宇宙ステーション(ISS)を構成する要素のひとつです。
これまで宇宙に運んだ生物が地上とは異なる振る舞いをしても、それが無重量のためなのか、宇宙放射線などの影響も受けたためなのか明瞭に区別することが困難でした。しかし、この施設では宇宙に運んだ生物に人工重力を与えることができるため、宇宙で無重量においたままの生物や地上においた生物などと比較することによって、これらの影響が区別できるようになります。また、これまで難しかった大型の動植物など従来よりも大きな生物が扱えるだけでなく、長期にわたり生物の成長や世代交代の様子を観察できます。
この施設ではほ乳類から、魚類、昆虫、培養細胞、植物まで、幅広い種類の生物を用いた実験が行えることも特徴です。さらに地上の重力より小さな月や火星の表面の重力で生物を育ててその効果を調べるなど、この施設によって初めて可能となることが多くあります。
セントリフュージは、人工的に重力を発生する装置(重力発生装置:CR)、隔離空間で生物試料を処理するための装置(生命科学グローブボックス:LSG)、生物飼育箱搭載ラック、冷凍庫ラック、保管ラック、およびそれらを搭載する与圧モジュール(重力発生装置搭載モジュール:CAM)で構成されています。これらのうちJAXAは重力発生装置(CR)、生命科学グローブボックス(LSG)、および重力発生装置搭載モジュール(CAM)の開発を担当しています。
| 重力発生装置 CR | 生命科学グローブボックス LSG | 重力発生装置搭載モジュール CAM |
質量 | 約2トン | 約1トン | 約10トン |
最大寸法 | 直径2.5m、奥行き1.5m | 縦2m、横1m、奥行き2m | 外径4.4m、長さ9m |
収容能力 | 生物飼育箱搭載個数:4個(最大) |
生物飼育箱搭載個数:4個(最大) |
ラック搭載個数:15ラック |
備考 |
発生重力:0.01〜2.00G(0.01G刻み) |
作業空間の容量:450リットル |
供給電力:6,250W×2+3,000W×1 |
| 重力発生装置(CR) |
| |
CR回転部の内部構造 | CR回転部のエンジニアリング・モデル(試作品)を用いた試験の様子 |
重力発生装置は、ISSでは最大の重力を人工的に発生させる装置です。重力発生装置には最大4個の生物飼育箱を搭載することができます。それらを回転させることによって、地表の重力の0.01倍から2倍までの重力(遠心力)を動植物に与えることができます。
|
生命科学グローブボックス(LSG) |
| |
LSGの外観 | LSGのエンジニアリング・モデル(試作品)を用いた毛利宇宙飛行士による操作性確認試験の様子 |
生命科学グローブボックスは、船内から隔離された空間で、マウスや細胞などの観察、植物の種まきや収穫などをおこなうための装置です。
450リットルの作業空間はこれまでで最大のものであり、ふたりの搭乗員が同時に作業することもできます。
| 重力発生装置搭載モジュール(CAM) |
重力発生装置搭載モジュールは、生物実験専用の与圧モジュールで、重力発生装置や生命科学グローブボックスを始めとして、NASAなどが開発する生物飼育箱、生物飼育箱搭載ラック、冷凍庫ラック、交換部品や実験用具を収納するための保管ラックが搭載できます。
* 2005年9月にNASAのISS計画見直しの一環としてセントリフュージは打ち上げないことになり、開発は中止しました。
最終更新日:2005年12月20日
|