アメリカは、1965年にジェミニ4号で初めて船外活動(EVA)を行いました。その後、35年間で計84回のEVAを行いました。しかし、ISS組立のためには、これからの5年間でその2倍の約160回のEVAが必要となります。米国の宇宙服を着て行うEVAだけで約960時間、さらにロシアも300時間以上のEVAが必要と見積もられており、ISSの組立、保全にはEVA作業は欠かせないものとなっています。
STS-92では、4名のEVAクルーが2人一組みになり、2回づつ計4回のEVAを行います。シャトルがISSにドッキング中に行われるEVAでは、通常1人がロボットアームの先端に足を固定して移動式の足場として利用し、もう1名は、ISS外壁の足場やハンドレールを利用して、移動し、作業を行います。ISSはとても大きく、外壁すべてをカバーできるほど足場や手すりを配置できないため、このような手段を必要とします。
EVA作業時には、スペースシャトルのロボットアームを操作する船内クルーとの連携が重要なため、事前に、ジョンソン宇宙センター内の無重量環境訓練施設(NBL:Neutral
Buoyancy Laboratory)を使ってEVAを模擬した訓練が入念に行われます。
また、船外活動時には2名とも非常時に備えてSAFER(Simplified
Aid for EVA Rescue)と呼ばれるセルフレスキュー用の小型推進装置を装備しますが、これは、万が一の場合を除いては使用することはありません。
以下にSTS-92でのEVA作業内容を示します。なお、現在も見直しが行われているため、作業手順は変更される可能性があります。
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スペースシャトル
ペイロードベイ(貨物室)での作業
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PMA-3に関する作業 |
Z1トラスに関する作業 |
EVA1
飛行5日目 |
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SLP(スペース・ラブ・パレット)に固定されたEVA工具箱1個を取り外しZ1トラスへ運搬する。 |
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Sバンドアンテナの取付位置の変更。 |
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Z1トラスとユニティとの間の配線を接続する。 |
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Kuバンドアンテナの取付とブームの展開 |
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Z1トラスに運搬した、EVA工具箱を設置する。 |
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EVA2
飛行6日目 |
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PMA-3をロボットアームでユニティに取り付ける作業をモニタし、ロボットアーム操作を支援する。 |
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PMA-3とユニティとの間の配線を接続する。 |
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EVA3
飛行7日目 |
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ペイロードベイに固定されていたDDCU(直流変圧器)を取り外し、Z1トラスへ運搬する |
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SLP(スペース・ラブ・パレット)に固定された残りのEVA工具箱1個を取り外し、Z1トラスへ運搬する。 |
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PMA-3とユニティとの間の配線(残り分)を接続する。 |
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DDCU(直流変圧器)2個の取付。
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Z1トラスに運搬した、EVA工具箱を設置する。 |
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Z1トラスとユニティとの間の配線(残り分)を接続する。 |
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EVA4
飛行8日目 |
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グラプルフィクスチャ等の移設。 |
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Z1トレイの展開。 |
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5Aフライトでのデスティニー(米国実験モジュール)の接続に備えた準備作業。 |
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写真撮影。 |
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EVA4では、ISSの組み立て作業が終了した後、SAFERの機能確認試験と動けなくなったEVAクルーをもう一名のEVAクルーが運搬する方法を実証試験します。