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  List: 日本人宇宙飛行士紹介 / スペースシャトルに搭乗する宇宙飛行士になるためには / ミッションスペシャリスト(MS)になるための訓練 / ファミリアライゼーション訓練 / 飛行訓練 / スペースシャトルシステム訓練 / ロボットアーム訓練 / 水中での船外活動訓練 / バーチャルリアリティ訓練 / ミッション固有の訓練/ 日本で初めての本格的な宇宙飛行士訓練
 
 
 
1985年に毛利衛、向井千秋、土井隆雄の3名が宇宙科学実験を担当するNASDA(現JAXA)の宇宙飛行士第1期生として選抜されました。その後1992年に若田光一が、1996年に野口聡一が選抜されました。 また、1999年2月には古川聡、星出彰彦、角野直子の3名の宇宙飛行士候補者が選抜されました。この3名は国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在を目的として選抜された宇宙飛行士です。(?参照) JAXA宇宙飛行士8名は、上段左から、野口聡一宇宙飛行士、古川聡宇宙飛行士、星出彰彦宇宙飛行士、若田光一宇宙飛行士、毛利衛宇宙飛行士、土井隆雄宇宙飛行士 前段左から、向井千秋宇宙飛行士、山崎直子宇宙飛行士です。
 
 
 
スペースシャトルに搭乗する宇宙飛行士になるためには、NASAが行っているMS基礎訓練コース、通称ASCAN訓練(宇宙飛行士候補者 AStronaut CANdidate)またはPS訓練を修了した後、ミッション割り当て待機期間中の訓練を経て、搭乗が決まったミッションに合わせた訓練を受けることになります。  スペースシャトル搭乗宇宙飛行士の主な役割を以下に示します。

(1)船長 (Commander: CDR) スペースシャトルの操縦を行い、スペースシャトル飛行中の安全・保全の最終責任を有す。

(2)パイロット (Pilot: PLT) スペースシャトルの操縦を行い、船長を補佐する。

(3)ミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者) (Mission Specialist: MS) スペース シャトルの運用全般を担当し、ロボットアーム操作などのスペースシャトルのシステム運用や船外活動、パイロットの補佐などを行う。国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てには、MSが中心的な役割を担う。

(4)ペイロードスペシャリスト(搭乗科学技術者) (Payload Specialist: PS) 高度で専門的な知識を必要とする特殊ペイロードによる宇宙実験を行う場合にスペースシャトルに搭乗する技術者。スペースシャトルの運用には参加しない。

写真は、2004年6月に、アメリカ・フロリダ州ペンサコーラ海軍飛行場で行われたNASAミッションスペシャリスト宇宙飛行士候補生訓練(MS ASCAN Class)の低圧環境適応訓練の様子です。古川聡宇宙飛行士、星出彰彦宇宙飛行士、山崎直子(旧姓角野)宇宙飛行士が参加しています。
 
 
 
米国テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターを中心に行われているASCAN訓練に、NASDA(現JAXA)からMS候補者として若田光一宇宙飛行士が1992年8月〜1993年8月のコース、土井宇宙飛行士が1995年3月〜1996年5月のコース、毛利宇宙飛行士と野口宇宙飛行士が1996年8月〜1998年4月のコースに参加し、それぞれMSとして認定されました。  古川宇宙飛行士、星出宇宙飛行士、山崎宇宙飛行士が2004年6月から訓練を開始しました。  ASCAN訓練は主にファミリアライゼーション(基礎)訓練、飛行訓練、スペースシャトルシステム訓練から構成されています。 MSになるためのASCAN訓練はシャトルシステム全般に関する専門知識の修得と訓練を行います。(参考:それに対し、ペイロードスペシャリスト(PS)の訓練はある特定ミッションの実験運用に関する専門知識の修得に主眼がおかれています)  写真は、2004年8月に撮影されたNASAミッションスペシャリスト宇宙飛行士候補生訓練(MS ASCAN Class)、地上サバイバル訓練に参加している山崎直子宇宙飛行士です。
 
 
 
(1) オリエンテーション:NASA組織や訓練に関するオリエンテーションおよび各センターの施設見学

(2) 一般教養訓練:宇宙科学、宇宙医学、軌道力学など、宇宙飛行士として必要な基礎的な知識について学ぶ。

(3) 無重量体感訓練:KC-135Aという大型のジェット機で弾道飛行をすることで得られる20秒程度/回の無重量状態を利用し、無重量状態の感覚を体験する。

(4) スキューバ訓練:MSに特徴的な活動である船外活動(EVA)の訓練は模擬宇宙服を着用して大型のプールに潜って行います。その予備訓練として、スキューバダイビングの訓練を行う。  

写真は、2004年6月、NASAミッションスペシャリスト宇宙飛行士候補生訓練(MS ASCAN Class)で、KS-135ジェット機での無重力体感をしている古川聡宇宙飛行士、星出彰彦宇宙飛行士、山崎直子(旧姓角野)宇宙飛行士です
 
 
飛行訓練は、ASCAN訓練の大きな部分を占めており、T-38という二人乗りの小型訓練ジェット機による飛行訓練を、最初の2年間は年間100時間、それ以降は年間48時間以上行うことが義務づけられています。 パイロットは前の座席で操縦を担当し、それ以外のMS候補者は後ろの座席で地上管制官との通信やナビゲーションを担当します。また、この飛行訓練の前に、緊急時適応訓練として、低圧環境体感訓練や緊急時のための緊急脱出訓練、パラセイル訓練、陸上・水上サバイバル訓練、水泳訓練、そしてもちろん講義も行います。  写真は、飛行訓練を行う野口聡一宇宙飛行士です。
 
 
 
スペースシャトルの構造・特性に関する概要説明や誘導制御・環境制御・通信・搭乗員などの各システムに関する講義から始まり、操作手順や緊急対処時の訓練を7段階に分けて行います。これらのASCAN訓練を約1年かけて修了すると、正式にNASAからMSとして認定されます。写真は、Shuttle Mission Simulator(SMS)でのスペースシャトル上昇時の手順訓練前にスタッフのアシストを受け座席シートを着用している野口聡一宇宙飛行士です。
 
 
 
若田宇宙飛行士はSTS-72ミッションでロボットアームを操作して日本の宇宙実験フリーフライヤSFUを回収しましたが、ロボットアームはこのように衛星の放出や回収に使われるほか、船外活動中の宇宙飛行士を先端にのせて移動させることもできます。 このロボットアームの操作訓練は、実物大のスペースシャトルのモックアップについているロボットアームで風船状の衛星を扱ったり、コンピュータグラフィックを使用したシミュレータにより行われます。 写真は、2000年5月、バーチャルリアリティ・ラボで、ロボットアーム訓練を行う若田光一宇宙飛行士です。若田光一宇宙飛行士は、同年10月にウイリアム・マッカーサー宇宙飛行士(左)と共にSTS-92ミッションに参加し、シャトルのロボットアームを操作して、ISS へのZ1トラスとPMA-3の取り付けや、船外活動を支援しました。日本人宇宙飛行士としては、初めての国際宇宙ステーション(ISS)組み立てへの参加でした。
 
 
 
この訓練では、宇宙の無重量環境を模擬するために、宇宙で着るのと同じような宇宙服をつけてプールに潜り、おもりを使って水から受ける浮力と重力をバランスさせて「中性浮力」の状態を作り出します。水の抵抗は残りますが、実際に宇宙で船外活動を行うのとかなり近い感覚で訓練をすることができます。 JAXAの筑波宇宙センターにも、無重量環境試験設備という大きな水槽が整備され、ISSの「きぼう」日本実験棟のモックアップを沈めて「きぼう」日本実験棟の設計確認試験などが行われています。 土井宇宙飛行士はSTS-87ミッションで日本人としてはじめて船外活動を行いました。土井宇宙飛行士はこのミッションで船外活動を担当するために、事前に大きな水槽に潜って船外活動の訓練を行いました。  野口宇宙飛行士はSTS-114ミッションで船外活動の主担当として、ISSの部品交換、取り付け作業、またスペースシャトルがより安全に飛行するための技術検証試験を実施するため訓練を行いました。 写真は、2004年10月に、野口聡一宇宙飛行士訓練が、無重量環境訓練施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)で、スペースシャトル耐熱システム・インスペクション訓練を行っている様子です。Mechanical Contour Gaugeという深さを測るツールで破損したタイルの傷の深さを計測しています。
 
 
 
バーチャルリアリティ訓練では、宇宙飛行士は頭にヘッドマウントディスプレイというゴーグルのようなディスプレイを付け、手にはセンサー付きのグローブをはめて、コンピュータグラフィックスの中で実際に船外活動などの作業をシミュレートします。プールに潜る船外活動訓練に比べ、無重量の感覚を得ることはできませんが、費用も安く、手軽に行え、作業手順などを復習するのに非常に有効な訓練です。写真は、2004年1月に撮影された野口聡一宇宙飛行士(手前)とスティーブン・ロビンソン宇宙飛行士がバーチャルリアリティ訓練をしている様子です。
 
 
 
MSがASCAN訓練修了後に特定のスペースシャトルミッションへの搭乗を任命されると、その後は搭乗クルーとともにスペースシャトル共通訓練とミッション固有訓練に参加することになります。 スペース シャトル共通訓練は全てのスペースシャトルミッションに共通するスペースシャトルシステム訓練、緊急脱出訓練などが行われます。ミッション固有訓練は、それぞれのミッションにて搭載するペイロードの講義から始まり、その操作や運用の訓練、実際スペースシャトルが飛行している場合のタイムラインを模擬した総合シミュレーション訓練までが行われます。 写真は、ジョンソン宇宙センターのCrew Compartment Trainer(CCT)を使用した緊急脱出訓練をするチャールズ・カマーダ宇宙飛行士、ウェンディー・ローレンス宇宙飛行士、野口聡一宇宙飛行士の様子です。
 
 
 
1999年2月10日に、古川、星出、山崎の3名の国際宇宙ステーション搭乗日本人宇宙飛行士候補者が選定されました。これまでの日本人宇宙飛行士はNASAで訓練を受けていましたが、今回選ばれた宇宙飛行士候補者は、最初に実施される約1.5年間の訓練(基礎訓練と呼びます)を主に筑波宇宙センターで行いました。NASDA(現JAXA)は初めてこうした本格的な宇宙飛行士の養成訓練を実施しました。基礎訓練は、国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)に搭乗する日本人宇宙飛行士候補者に対し、最初に実施される訓練です。宇宙飛行士候補者は、基礎訓練を終了した後、ISS搭乗宇宙飛行士として認定されます。その後、ISSに関する運用訓練(アドバンスト訓練)を受け、特定の飛行に割り当てられた後、ISSに滞在する各宇宙飛行士の役割に応じた固有の訓練(インクリメント固有訓練)を受けて、ISSに搭乗することになります。そして、ISSに長期間(3〜6ヶ月程度)滞在し、「きぼう」日本実験棟を含むISSの操作、保守、及び様々な実験を行います。写真は、筑波宇宙センターで行われた「きぼう」アドバンスト訓練で、「きぼう」船内実験室内部の説明を受ける若田宇宙飛行士とペドロ・デューク宇宙飛行士です。