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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2013年10月25日

皆さんこんにちは。いつもは、ロシアの話題が多い私の日記ですが、今回はアメリカでの訓練についてです。

9月の訓練で、はじめて「ルーチン・オプス・シム」と呼ばれる訓練を受けました。これは、ISSでの日常的な活動についての訓練です。

実際にISSに一緒に滞在する米国の飛行士と共に、訓練を行いました。

ISSでは、毎朝、各国のコントロールセンターと通信を繋いで全体会議を実施します。それに先立って、地上から予め、その日の作業を実施する上で必要な情報や、緊急事態対処の為に必要な情報、クルーに対する質問事項やクルーからの質問に対する回答などが纏められてファイルとして送られてきます。

今回の訓練は、朝起きて、その情報を読み、その日の準備を開始するところから始まります。早速、そのファイルを確認すると、私に対する質問事項もあったので、回答を準備して朝の全体会議に臨みました。会議ではその日全体の大きな流れや、注意事項について説明があり、全員の疑問点がなくなったところで、早速その日の仕事に取りかかります。

私と私の同期生でもあるチェル飛行士は、今回の様な訓練が初めてということもあり、物品管理の基礎を確認する為に作られた課題を実施しました。「朝食を食べようとしたら、◯◯が切れている事に気づいた。」「ゴミを捨てようとしたら、ゴミを入れる袋が満杯だ」「計算機を使おうとしたら壊れている。どうする?」といった日々起こり得る状況が与えられ、それらを解決していきます。その後は、工具の在庫チェックをしたり、作業台の移動をしたりと、比較的単純な作業が続きました。

私:「(最初の訓練なので、あまり複雑なタスクはないのかな?)」

などと思っていると…その直後に来ました!今回の訓練の山場が!

ISS内の空気は、空気の品質を保つ為に常に循環しているのですが、その際に湿度のコントロールもしています。今回は、除湿の結果生まれた水の品質をチェックすると共に、貯まった水を別のタンクに移すというタスクが私に与えられました。作業自体はそれ程複雑では無いのですが、しっかりと手順を読んで理解して操作する必要があります。まず、必要な道具を集めるところから開始します。ところが早速そこで問題が!水を移すための容器を探しに行ったところ、指示にある物品番号の容器がありません。早速地上の管制室に確認です。

私:「指示された物品番号の容器が無いんだが、その代わりに物品番号◯◯の容器を使用しても良いか?」

しばらくして、

ヒューストン:「それで問題ない」

という回答がきました。実は容器は同じでも、中身の水や以前入れた水の種類が違うと、問題が発生するので指示された物品番号の容器を使うのがとても大切なのです。(皆さんも、一度汚い水を入れた容器に、飲料水を入れるような事はしませんよね。また、ロシアの飲料水と米側の飲料水は、消毒の方法が異なっているので、混ぜる事が出来ないのです。)

その後も、様々な問題や疑問点が生まれます!

私:「(あれっ地上から送られて来た指示によると、このホースを直接接続する事になっているけれど、この1時間前に作業準備をした際に、T字型のアダプターを付けたんだよな…ここに来てアダプターをわざわざ外す指示は少し変だな…地上に確認したいけど、あと5分間は地上と連絡が取れないし…)」

その間にも時間はどんどん過ぎていきます…それでも

私:「(急ぎの作業でもないし、焦って間違うよりは、正確に!)」と覚悟を決めて、通信の回復を待って地上に確認します。

私:「作業指示によると、このホースを直接接続する様になっているけれど、本当にこれでいいのかな?この作業準備の段階で、T型のアダプターを装着したけれど、本当にここでアダプターを外していいの?」

ヒューストン:「確認するので、少し待ってくれ。」

しばらくしてから

ヒューストン:「君の言うとおりだ。アダプターをつけたまま作業を続けてくれ。」

私:「(ホッ。確認して良かった!)」

しかし、安心する間もなく、次の疑問点が!こんなやり取りを何度もしているうちに時間は、どんどん過ぎていき、作業が終わった時には既に予定の時間を30分もオーバーしています。でも、遅れた作業の実施は、仲間のクルーが助けてくれました(感謝です)。

今回の作業は、本当に時間がかかってしまい、大いに反省しました…少し落ち込みながら、訓練後のブリーフィングに望みましたが…教官の私の作業に対する評価は良かったです。曖昧なまま作業を進める方がリスクが大きく、結果として更に時間やお金がかかる事がある旨を強調されました。

一方で、私が学んだのは、事前準備の重要性です。実は、訓練前日に手順を予め確認するつもりだったのですが、インターネットの不調で、手順を読んでおく事が出来ませんでした。もし、事前に手順を確認しておく事が出来れば、幾つかの疑問点は事前に地上に確認しておき、スムーズに作業が実施できた筈です。自信を持って早く正確に作業を実施する為には、事前の準備がとても大切という、極めてありふれた教訓ですが、日々実施するのは難しいことです。皆さんも、テスト勉強の準備が間に合わず、準備不足のまま試験を受けたり、皆の前でプレゼンテーションを発表をする際に準備不足だったりすると、実施中も不安で失敗する可能性が高くなってしまいますよね。それと同様です。

失敗した時の対処に備えるのも大事ですが、失敗しないための準備も大切ですよね。私も2015年のミッションに向けて、しっかりと着実に準備を進め、自信を持って仕事ができるように頑張ります!

写真:この大きな建物中に、ISSの実物大の模型が入っていて、宇宙飛行士の訓練を行っています。見学コースの一部になっていますから、ご覧になられた方もいるかもしれませんね。

この大きな建物中に、ISSの実物大の模型が入っていて、宇宙飛行士の訓練を行っています。見学コースの一部になっていますから、ご覧になられた方もいるかもしれませんね。

写真:この場所から、教官が我々の活動を見守っています。左に見えるのは、日本の「きぼう」ですね。

この場所から、教官が我々の活動を見守っています。左に見えるのは、日本の「きぼう」ですね。

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この写真は、おまけです。JSCには沢山の動物が住んでいます。先日も、リスと鹿がいたので、写真をとってみました。鹿は少し近づいたら逃げて行ってしまいました。(苦笑)

※写真の出典はJAXA



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