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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2013年9月24日

皆さんいつも私達の日記を読んでいただき、どうも有難うございます。

ツイッターを読んでくださっている方は「ロシアでのとっておきの話題とは一体何だろう?」と少し期待してくださっているかもしれませんね。また、私はロシアの事を書くことが多いと思われる方も多いかもしれません。実は、その通りで、少し意図的にロシアについての日記を多く書く事にしているのです。それは、日本に住んでいる皆様には、アメリカの情報よりも、ロシアの情報の方が入りづらくて、貴重ではないかと思っているからなのです。

予告したとっておきの話題とは、モスクワで行われたあるイベントについてです。今回の訓練期間中、私は幸運にもМАКС(マックス)と呼ばれる国際航空見本市を見学する事が出来ました。車に興味のある方は、モーターショーに行く事もあるかと思いますが、その航空宇宙版といった感じのイベントです。また、自衛隊の航空祭的な面もあり、沢山の航空機の飛行展示も行われます。勿論、私の訪問の主目的は、ヨーロッパの宇宙機関であるESAとロシアの宇宙協力について学んだり、ロシアの次期宇宙船を見学したりすることでした。でも、ついつい航空機に目が行ってしまうのは、きっと私の前職のせいでしょうね。首から下げた一眼レフカメラで、一心不乱に航空機やその装備品の写真を撮る日本人の姿は、きっとかなり怪しかったのではないでしょうか(笑)?

写真:お天気は、最高でした!この他の日は、天気が悪かった様です。本当に幸運でした!

お天気は、最高でした!この他の日は、天気が悪かった様です。本当に幸運でした!

私が今から約20年前に初めて渡米した際に感じたのは、日本を圧倒する国力でした。(米国は、多くの国々の軍から留学生を招待していました。その直接的な目的は、勿論、米軍の戦略・戦術或いは、航空機の操縦等の知識・技能を学んでもらい、お互いに協力して仕事をしやすくする事だとおもいます。でも、それ以上に、将来各国の軍で重要な地位を占める人材を米国で育成すると共に、その人達に米国の圧倒的な国力を見せつけて、米国と戦う気を削ぎ、味方にする事では無いかと思ったものです。)

そして、今、ロシアでも同様の印象を受けます。ロシアの国力は強力です。それを、このМАКСで垣間見ることが出来ました。戦闘機をはじめとする兵器の性能は、圧倒的に日本に優っています。その性能を実際に目にしてしまうと、やはり日本の事が少し心配になってしまいます。しかし私は現在、国際宇宙ステーションに携わる一員として、日々ロシアで訓練を受けています。そして、その訓練を受ける中で、ロシアの方々と直接触れあい、ロシアの宇宙開発だけでなく、文化や歴史も同時に学んでいます。さらに訓練に全力を尽くすことで、私を通じて日本人の気質や国民性を、ロシアの方々に理解して頂こうと努力しています。前回の日記にも書きましたが、その様な相互理解の努力を行うことにより、日本・世界の平和と安全を高めていければ良いと思いながら、頑張っているのです。

さて、難しい話は少しまた後にするとして、今回の見本市で私が具体的に何を見学したか、もう少しお話しましょう。見本市の会場はとても広くて、とても一日で全てを見学できるようなイベントではありませんでした!ですから、興味のある装備品を優先的に一生懸命見学させて頂きました。前職が戦闘機乗りで、テストパイロットですから、装備品を見る目もどうしても専門的になってしまうのです。特に、ミグ、スホーイ、ツポレフ、カモフの戦闘機、爆撃機、ヘリコプター等は、以前から見学したかった航空機ですから、つい細かいところまで分析してしまいます(苦笑)。「これが、○○だな。性能は、○○と聞いていたが…」「ここにその装備品が、ついているといる理由はきっと○○だな。でも、航空力学的には、○○という影響がでそうだな…」などと考えながら、写真をとっていました。さらに、展示飛行では、航空機に目が釘付けで、「おおこれが、あの有名な○○という機動か!これは、○○が装備されているからできるんだよな…」「この航空機に対抗するには、○○が必要だな…」などとつい考えている自分に気づき、「おっと、今の自分の仕事はこれじゃなかった!」と反省しました(笑)。

こんな事ばかり嬉しそうに書いていると、本来の仕事をしてきたのかと、疑問に思われてしまいますね。ご安心を!しっかり本来の仕事もしましたよ(笑)。ヨーロッパとロシアの宇宙開発分野の協力関係は距離が近い上に、既に20年以上の歴史を持っているだけあって、私が想像した以上に多くの協力が行われていました。様々な文化の違いはあるとはいえ、相互理解に努め、相互の良いところを出しつつ協力を行っており、本当に素晴らしいと感じました。繰り返しになってしまいますが、その様な協力を行い相互理解を深めることが、どれだけ平和に貢献しているか考えれば、単なる宇宙開発分野の協力に限らない、多くの成果を挙げている事になります。一方で、日本とロシアの宇宙開発分野での協力は始まったばかりで、今後の発展の余地があるように感じました。

また、ロシアが開発中の次期有人宇宙船のモックアップ(実物大模型)に乗込み、内部のデザインを見学する事が出来ました。操縦桿のデザインや情報の表示方法も、米国とは少し異なっていて、どちらが使いやすいか個人的に評価することも出来ました。(すぐ評価をしたくなるのも、以前テストパイロットだったからだとおもいます…)

※写真の出典はJAXA

ただ、実際のところ今回の航空見本市でも、多くの人々の目を惹いていたのは、戦闘分野の展示です。各国とも戦闘機、戦闘ヘリコプター、ミサイル、搭載電子機器に多くの予算と最新技術を投入しており、その売込みにも力が入っていました。皆さんは、そんな戦争の道具にお金を使うなんて、理解出来ないとお考えですか?世界平和の実現という理想だけをみれば、確かにその通りかもしれませんね。でも、夢を叶えるためには、まず理想を踏まえた上で、現実を直視するという活動が不可欠なように、世界平和という理想を実現する為には、しっかりと厳しい現実を直視する必要があるのです!

兵器を開発する事と宇宙開発分野での協力を進める事、どちらが良いとか悪い、どちらを優先すべき等という単純な問題では無いのです。どちらも、平和を保つ為には重要であるというのが、現実なのです。

私が、自分で恵まれていると思うのは、その厳しい現実を知った上で、世界の平和の為に働くことが出来る事なのです。個人の夢を叶えるのと同様に、現実を知った上で、理想を見つめて努力しないと、単なる理想論や机上の空論になってしまいますからね。自分で言うのも何かと思いますが、最近は私ほど平和を保つ方法に詳しい人は、日本にはあまりいないような気がします。(自惚れかもしれませんね)

2015年に予定されている私の長期滞在では、ISSでの実験や機器のメインテナンス等の活動を成功させるのはもちろんですが、少し視点を広げ、ISSの存在意義を考えた上で立派な仕事が出来る様に頑張りたいと思っています。今後とも応援の程よろしくお願いします。

(最後に「とっておきの話」に対する、私の妻の反応です…)

妻「この話の何処がとっておきなの?難しすぎて良く分からない!」
私「それじゃどんな話なら良かったの?」
妻「例えば、モスクワのレストランの料理の話とか!」
私「…(それって、宇宙と関係ないでしょ(苦笑)。でも、書き直す時間は無いし…写真を沢山つけて許してもらおう!)」

写真 写真

スホーイ35とミグ29の展示飛行は、本当に素晴らしかったです。私もF-15で展示飛行をしていた頃の事を懐かしく思い出しました。

写真 写真 写真

地上展示も本当に充実していました!全てをお見せできないのが、とても残念です。
妻:「普通の人は、こうゆうのには興味ないから!」
私:「そんなことないだろ?綺麗じゃない?」

(期待して下さっていた皆様、本当に申し訳ありません…)


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