6月のNEEMOに向けて、準備訓練が行われました。今回のミッションでは、将来の小惑星探査を模擬した、さまざまな作業が計画されています。そのため、小惑星探査の重要性を学んだり、小惑星での船外活動で使用するツールの使用法について訓練を行ったりしました。小惑星探査の講義中に感じたのは、日本は小惑星探査の分野において、世界一の先進国として認められているということです。講義の中でも、「はやぶさ」の成果が数多く使用されていました。これらの成果が無ければ、有人小惑星探査の準備を開始することすら困難であったと思います。
また、今回のミッションは海中での活動が主になりますので、泳力の検査も行いました。基準は、
①400mを12分以内
②潜水水泳25m
③立泳ぎ10分間
の3つです。正直言って、水泳はあまり得意ではないのですが、名前に「亀」の字を使い、コールサインで「サメ」と呼ばれる以上、ここはしっかり基準をクリアしないといけません!クルーの皆と一緒に事前練習を行った上で本番に臨み、無事全員基準クリアーしました。
さらに、NEEMOでは、海底で何か不測の事態が発生した際に、気圧差の関係ですぐに浮上することが出来ないため、応急手当や心肺蘇生法についても訓練を受けました。これらの技能は、使用する機会が無ければ、最高なのですが、「考えたくない事態について事前に考え、準備する。」というのは、どの分野でも共通な成功の秘訣の一つです。今後も、NEEMOミッションの成功に備え、残り少ない時間を効果的に使って準備していきたいと思います。
NEEMO: NASA Extreme Environment Mission Operations
<参考>
無重力の状態を模擬するためには、いくつかの方法がありますが、それらにはそれぞれの特徴があります。
NBLでは、水による浮力を利用して、無重力の状態を模擬します。ただし、宇宙空間と異なり、水の抵抗が存在するため、移動を始めるのが大変で、止まるのは容易です。(宇宙で作業する際は、移動を始めるのは簡単ですが、止まるのが大変です。)
ARGOSでは、コンピュータで制御されたケーブルに、天井から吊り下げられる形で無重力を模擬します。NBLと異なり抵抗が少ないのは良いのですが、無重力を模擬できない姿勢があります。(頭の位置を上下する運動や、体を左右に向ける運動は模擬できません。)
これらの違いを踏まえ、適切な方法を選んで訓練をすることが重要なのです。
NBL: Neutral Buoyancy Laboratory
ARGOS: the Active Response Gravity Offload System
(写真の出典はJAXA/NASA)