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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2012年6月21日

みなさん、こんにちは。

いつのまにか、前回のレポートから一ヶ月。時が経つのは早いものです。年をとるにつれて、月日が経つのが早くなっていくような気がしますが、気のせいでしょうか。以前、友人がその理由についてこう語っていました。

「例えば5歳の子供にとって、1年というとそれまでの自分の人生の5分の1になるだろう?そりゃ長くも感じるだろうさ」

彼の理論が正しければ、この先時間の進み方は早くなる一方ということになりますが・・・

いずれにしても、1日1日を大切に過ごさなければいけないなと感じる今日この頃です。

前回のレポートでは、T-38ジェット練習機による操縦訓練について書きました。文量が多くなりすぎて、まさかの「次回に続く」という形で終わってしまっていたので、今月はその続き、飛行中のことについて書こうと思います。

写真:2010年2月、宇宙飛行士候補者時代に撮った写真です

T-38はその気になれば音速を超えることも可能ですが、さすがにいつもそんなことをしていては燃料がいくらあっても足りないので、通常の訓練飛行では大体音速の8割くらいの速度で飛行します。具体的な数字では、高度によって変化しますがおおよそ時速850Kmくらいです。

燃料はいつもタンクを満タンにして出発しますが、それでも不測の事態に備えた予備燃料を除くと、せいぜい1時間半くらいしか飛べません。余分な燃料はそれほど多くないので、飛んでいる間は目的地の天気を頻繁にチェックします。万が一、予報より悪くなっても、早めに気付けばそれだけ多くの選択肢があるからです。

写真:2010年2月、宇宙飛行士候補者時代に撮った写真です

現在、油井宇宙飛行士が参加しているNEEMO訓練に、以前私が参加したときにも、天気図を読めることが役立ちました(写真は、NEEMO15ミッション中の2011年10月26日時点の米国東部の天気図)

普段の訓練フライトでは、1時間から1時間半で行ける距離の空港に飛んでいって、そこで燃料が残っていれば離着陸の練習をするというのが一般的です。

その後燃料を給油して、もう一度離陸するまでには大体1時間弱かかります。

実際この日の訓練では、4区間を飛んだので飛行時間は合計5時間を超えて、エリントン飛行場に帰ってくる頃には夕方になっていました。

私は宇宙飛行士になる前、旅客機のパイロットをしていたのですが、その頃操縦していた旅客機とT-38を比較した場合、いくつか大きな違いがあります。

その1つがT-38には自分たちパイロット以外、誰も乗っていないという点です。そんなの当たり前だろう、と言われればそうなのですが、これは大きな違いです。飛行機が多少揺れても、操縦が荒くなっても全く問題ないからです。旅客機では自分たちの後ろに何百人というお客様が乗っています。機内では、熱い飲み物が配られていたり、トイレに立つお客様もいらっしゃいます。そんな時に飛行機が急に揺れたりしたら、大きな怪我や火傷につながりかねません。なので、飛行中は飛行機がなるべく揺れないよう、パイロットはかなり気を遣って飛んでいます。T-38の場合は、揺れるのをそんなに気にしなくて良いので、その点はとても楽だと感じます。

反対に、T-38の方が難しいと感じるところももちろんあります。その最たるものが、自動操縦装置の有無です。一般的な旅客機には自動操縦装置がついていて、離陸以外の操縦は機械に任せることも可能です。その分、パイロットは操縦以外のことにより気を配れるわけです。その自動操縦装置が、T-38にはついていません。従って、1時間半近い飛行中、パイロットは常に操縦桿を握って、飛行機のわずかな姿勢の変化も逃さず、針路と高度を維持しなければならないのです。

それに加えて飛行中、パイロットは操縦以外にもやらなければいけないことが沢山あります。先述の天気の確認もそうですが、他に自分の位置の確認、色々な機器の操作、地図の読み取り、管制機関との交信などがそうです。

離陸直後や着陸前などは、それはもう目の回る忙しさです。

これらを全て1人でこなすのは、宇宙飛行士にとってとても大事な訓練になります。私たちの世界では、この同時に複数の仕事をこなすことをマルチタスキングと呼んで、宇宙飛行士に求められる資質の1つとして重視しているからです。実際の国際宇宙ステーションでの仕事でも、ロボットアームの操縦などに活かされてきます。

もちろん、せっかくパイロットが2人乗っているわけですから、作業を2人で分担することも可能です。例えば、1人が操縦を担当して、もう1人がそれ以外の仕事を担当するといった具合にです。この場合、マルチタスキングの訓練という観点からは、効果が薄くなるでしょう。ただ、その代わり2人で協調して仕事をする、言わばチームワークを身につけられるという利点が出てきます。何より、作業を分担することによって、疲労が軽減できます。

私の場合、2区間のフライトまでは離陸と着陸の操縦以外の全てを自分1人でやるようにして、3区間以上になる場合は、前席のパイロットと作業を分担するようにしています。経験上、そのくらいが集中力を維持して、安全に飛行機を飛ばせる限界かなと思っています。

話が随分と一般的になってしまいました。というのも、その4月の飛行訓練では、特に変わったこともなく、平穏に訓練を終えることが出来たからです。またこの先の飛行訓練で、例えば飛行中に装置が1つ故障するなどの経験をすることがあれば、この場でご紹介したいとは思いますが、今日のところはひとまずこのへんで、T-38の飛行訓練についての話を終わりたいと思います。

ご愛読、どうもありがとうございました!

※写真の出典
上:JAXA/NASA
下:NASA Goddard MODIS Rapid Response Team


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