JAXA宇宙飛行士活動レポート 2015年7月
最終更新日:2015年8月19日
JAXA宇宙飛行士の2015年7月の活動状況についてご紹介します。
油井宇宙飛行士、ISS長期滞在を開始
7月上旬、油井宇宙飛行士は、ロシアのオレッグ・コノネンコ宇宙飛行士、NASAのチェル・リングリン宇宙飛行士とともに、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC)で、打上げに向けた最終訓練に臨みました。
現地時間の7月8日には、正式にソユーズTMA-17M宇宙船(43S)の搭乗クルーとして認定され、同日、GCTCで記者会見を行いました。会見後には、伝統的なセレモニーが行われ、油井宇宙飛行士らは、星の街の博物館やユーリ・ガガーリン宇宙飛行士の像など、ロシアの有人宇宙開発の歴史に縁のある場所を訪れました。
現地時間7月11日、油井宇宙飛行士らは、打上げが行われるカザフスタン共和国のバイコヌールに移動しました。
バイコヌール宇宙基地にて、ソユーズTMA-17M宇宙船(43S)を確認する油井宇宙飛行士(出典:S.P.Korolev RSC Energia)
ソユーズTMA-17M宇宙船(43S)の打上げ(出典:JAXA/NASA/Aubrey Gemignani)
バイコヌールで油井宇宙飛行士らは、自らが搭乗するソユーズ宇宙船の実機の確認や、打上げ時に着用するソコル宇宙服のリークチェック(空気漏れ点検)およびシートライナーとのフィットチェック、ソユーズ宇宙船の手動操縦訓練、医学検査、ソユーズロケットの組立状況の視察などを行い、打上げに向けた最終準備を整えました。
そして7月23日、油井宇宙飛行士らが搭乗したソユーズTMA-17M宇宙船(43S)が、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から国際宇宙ステーション(ISS)へ向けて打ち上げられました。打上げからおよそ6時間後にソユーズ宇宙船はISSにドッキングし、油井宇宙飛行士らは、ISSでの長期滞在を開始しました。
油井宇宙飛行士の打上げに際しては、若田宇宙飛行士がバイコヌールまで行き、油井宇宙飛行士の家族を支援しました。
油井宇宙飛行士は、ISS滞在開始後、実験に関わる作業やシステムの保守作業などに取り組んでいます。油井宇宙飛行士の日々の活動状況は、油井宇宙飛行士のISS長期滞在ミッションページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
- 油井宇宙飛行士ISS長期滞在ミッションページ
金井宇宙飛行士、NEEMO20訓練に参加
NEEMO20訓練の様子(右端が金井宇宙飛行士)(出典:JAXA/NASA)
金井宇宙飛行士は、7月20日から2週間にわたって実施された第20回NASA極限環境ミッション運用(NEEMO20)訓練に参加しました。
NEEMO20訓練は、米国フロリダ州キー諸島沖の水深約20mの海底に設置されている「アクエリアス」と呼ばれる居住スペースを備えた海底研究室に滞在し、閉鎖環境におけるチームワーク・リーダーシップ・自己管理および異文化対応などのチーム行動能力の更なる向上を図り、ISS長期滞在に備えることを目的とした訓練です。
訓練開始前の7月13日からは、現地で事前訓練を実施しました。7月20日から、金井宇宙飛行士は、欧州宇宙機関(ESA)のルカ・パルミターノ宇宙飛行士、NASAのセレナ・アノン宇宙飛行士、NASA EVA技術者のデービッド・コーン氏らとともに、アクエリアスでの訓練を開始しました。
NEEMO20訓練では、ISS長期滞在に向けたチーム行動能力の向上を目指す一方で、ISSや将来の有人探査に向けた技術の検証・評価が行われました。船外活動では、サンプルを採取するツールの作業性や、小惑星・火星などの異なる地表・重力レベルでの作業手法が検証されました。また、メガネ型ウェアラブル端末に作業手順を表示してクルーが実際に作業を行えるかどうかや、通信の遅れがある状況下でうまく作業を実施できるかどうかなども検証されました。
訓練期間中、金井宇宙飛行士はアクエリアスから記者会見を実施し、訓練状況などを報道関係者に説明しました。
- 第20回NASA極限環境ミッション運用(NEEMO20)訓練
大西宇宙飛行士、ISS長期滞在に向けた訓練を実施
国際宇宙ステーション(ISS)の第48次/第49次長期滞在クルーである大西宇宙飛行士は、6月に引き続き、7月2日までNASAジョンソン宇宙センター(JSC)で訓練を行いました。
JSCで、大西宇宙飛行士は、ISS滞在中に緊急事態が発生したことを想定した対処手順について試験を受けました。
大西宇宙飛行士は、ISSのモックアップ(実物大の訓練施設)の中で、火災・急減圧・空気汚染といった緊急事態に対処する手順を実演し、試験を完了しました。
今回の試験を終えたことで、大西宇宙飛行士は、ISSの米国区画のシステムに関するオペレータレベルの試験を全て終了したことになります。
JSCでの試験を終えた後は、日本に一時帰国しました。
7月6日から3週間にわたって日本に滞在し、大西宇宙飛行士は、「きぼう」日本実験棟に関する訓練を行う一方で、ISS長期滞在に向けた関係者との打ち合わせや、関係各所への表敬訪問、広報対応など、さまざまな活動を行いました。
JFCTとのシミュレーション訓練の様子(出典:JAXA)
「きぼう」に関する訓練は、これまでの訓練で習った知識・技術の復習から始まり、その後、「きぼう」のエアロックに関する訓練を中心に、「きぼう」のシステムと実験について訓練を実施しました。
エアロックに関する訓練では、超小型衛星を搭載した衛星放出機構をエアロックに設置する手順などを訓練しました。また、「きぼう」の運用管制チーム(JAXA Flight Control Team: JFCT)と一緒に、超小型衛星を「きぼう」から放出する運用を想定したシミュレーションを実施し、不具合発生が模擬される中で、クルーとJFCTの連携を確認しました。
大西宇宙飛行士は、今年の5月から「きぼう」の船外で実験が開始されている簡易曝露実験装置(ExHAM)の概要についても学びました。その他、「きぼう」での日常的な作業や「きぼう」の整備・保守作業に関する訓練も実施しました。
大西宇宙飛行士は、日々の訓練の様子をGoogle+で紹介していますので、是非こちらもご覧になってください。
- Google+
HTV5運用管制シミュレーション訓練に若田宇宙飛行士がCAPCOMとして参加
日本時間の7月9日から10日にかけて、JAXAの宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の運用管制チームとNASAの国際宇宙ステーション(ISS)の飛行管制官が、宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)の運用を想定したシミュレーション訓練を合同で実施しました。
訓練には、若田宇宙飛行士が、NASAの飛行管制官の一員として、NASAのミッションコントロールセンターから参加しました。
訓練では、「こうのとり」5号機がISSに接近する場面から、ISSのロボットアーム(SSRMS)に把持され、ISSに結合後、起動するまでの運用をシミュレーションしました。
「こうのとり」5号機のリードCAPCOM(ISSとの交信担当の代表)を務める若田宇宙飛行士は、「こうのとり」5号機がSSRMSによって把持される場面において、ISSに滞在するクルーとの交信を担当します。「こうのとり」5号機を把持するSSRMSの操作は、ISSに滞在する油井宇宙飛行士が担当します。若田宇宙飛行士は、油井宇宙飛行士のSSRMS操作を地上から支援することになります。
訓練の解説をする大西宇宙飛行士と松浦フライトディレクタ(出典:JAXA)
本訓練の模様は、筑波宇宙センターで報道関係者に公開しました。帰国中だった大西宇宙飛行士が、リードフライトディレクタを務める松浦真弓フライトディレクタと一緒に、訓練の解説を行いました。大西宇宙飛行士は、HTV4ミッションにおいて、NASAでCAPCOMを務めた経験があり、自身の経験と重ね合わせながら、訓練の内容を報道関係者に説明しました。
≫JAXA宇宙飛行士活動レポートの一覧へ戻る
以前は海上自衛隊で潜水に関する仕事にたずさわっていたので、昔の職場に戻ったような懐かしい感覚を覚えました。
宇宙飛行ミッションを精密に模擬した訓練環境で、将来のミッションに役立つような様々な経験を積むことができたと思います。