JAXA宇宙飛行士活動レポート 2015年5月
最終更新日:2015年6月24日
JAXA宇宙飛行士の2015年5月の活動状況についてご紹介します。
油井宇宙飛行士、ロシアでISS長期滞在ミッションに向けた最終試験を実施
ロシアモジュールの最終試験に臨む油井宇宙飛行士ら(出典:JAXA/GCTC)
ソユーズ宇宙船の最終試験に臨む油井宇宙飛行士ら(出典:JAXA/NASA/Bill Ingalls)
国際宇宙ステーション(ISS)の第44次/第45次長期滞在クルーである油井宇宙飛行士は、ソユーズ宇宙船で一緒に飛行するオレッグ・コノネンコ、チェル・リングリン両宇宙飛行士とともに、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)にて、現地時間の5月6日と7日に行われた最終試験に臨み、完了しました。
試験1日目は、ISSのロシアモジュールについて試験が行われました。油井宇宙飛行士らは、ロシアモジュールのモックアップ(実物大の訓練施設)の中で、ロシア区画内の制御を担うセントラルコンピュータの通信断や、ロシア区画内での火災発生などの事態に対処しました。
試験2日目には、ソユーズ宇宙船について試験を受け、油井宇宙飛行士らはソユーズ宇宙船のシミュレータに乗り込み、オンボード・コンピュータ・システムなどに異常が発生した事態への対処にあたりました。
油井宇宙飛行士らは、それぞれの試験において、クルー全員で協力して問題の対処にあたりました。
大西宇宙飛行士、ISS長期滞在に向けた訓練を実施
国際宇宙ステーション(ISS)の第48次/第49次長期滞在クルーである大西宇宙飛行士は、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)で、ISSの運用全般に関わる訓練を行いました。
船外活動に関わる訓練では、ISSの実物大の訓練施設が沈められている無重量環境施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)のプールを利用して、船外機器のメンテナンス作業の手順を実習しました。
大西宇宙飛行士は、NASAのロバート・キンブロー宇宙飛行士とともに、水中用の宇宙服を着用してNBLのプールに潜り、ISSのロボットアームと太陽電池パドル回転機構(Solar Alpha Rotary Joint: SARJ)のメンテナンス手順を実習しました。訓練中には、船外活動のパートナーが意識を失ってしまった状況も模擬され、大西宇宙飛行士は、パートナーを船内に連れ戻す手順についても実習しました。
QDの着脱操作を確認する大西宇宙飛行士(出典:大西宇宙飛行士のGoogle+より)
この訓練の他に、船外活動に関しては、船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)のシステムを習熟する訓練や、EMUのパーツ交換手順の訓練、船外の流体配管のコネクタ(Quick Disconnect: QD)を着脱する操作に慣れるための訓練などを行いました。
医学訓練の一環では、採血の手順を訓練しました。ISSでは、宇宙飛行士自らが採血を行うことから、この様な訓練が行われています。Ocular Healthと呼ばれる医学に関する訓練では、眼球の超音波検査を実施する手順を確認しました。これまでにISSに長期滞在した一部の宇宙飛行士の間で、視力の変化が認められており、ISSではこのような検査が行われています。
大西宇宙飛行士は、ISSで定期的に実施されているISSの飲料水の水質を検査する手順についても訓練を行いました。
大西宇宙飛行士は、日々の訓練の様子をGoogle+で紹介していますので、是非こちらもご覧になってください。
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古川宇宙飛行士、長期滞在シミュレーション訓練に参加
HERAの前に立つ古川宇宙飛行士ら(出典:JAXA/NASA)
古川宇宙飛行士は、5月4日から7日にかけて、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)で、HERA(Human Exploration Research Analog)と呼ばれる施設を利用して行われた長期滞在シミュレーション訓練に参加しました。
HERAは、148立方メートルの空間の中に、作業場・エアロック・衛生施設・運動器具・就寝スペースなどの設備を備えており、4名が長期間滞在できる施設です。
この訓練は、国際宇宙ステーション(ISS)のような有人宇宙施設に似た設備を持つHERAを利用して、ISS長期滞在ミッションを模擬し、訓練に参加する宇宙飛行士のリーダーシップ・チームワーク・自己管理能力などを向上させることが目的です。
古川宇宙飛行士は、NASAのマイケル・ホプキンス、ジャネット・ エプス両宇宙飛行士、カナダ宇宙庁(CSA)のジェレミー・ハンセン宇宙飛行士とともに訓練に臨みました。
訓練は、ISS長期滞在を模擬し、保全や実験運用、医学運用、写真撮影や運動、広報活動などの作業を、スケジュールに沿って実施しました。また、船外機器の故障に対応した緊急船外活動の準備および実施の訓練として、無重量環境施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)のプールを利用した船外活動も模擬されました。この船外活動において、古川宇宙飛行士はロボットアームの操作を担当しました。
野口宇宙飛行士、UAE宇宙庁発足記念式典に出席
Global Space and Satellite Forum(GSSF)においてスピーチを行う野口宇宙飛行士(出典:JAXA)
野口宇宙飛行士は、宇宙飛行士による国際団体である宇宙探検家協会(Association of Space Explorers: ASE)の会長として、5月25日から27日にかけてアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催されたUAE宇宙庁発足記念式典に出席しました。
UAEは、2021年までに火星に無人探査機を送ることを目標に、2014年7月に宇宙庁を設立しました。
5月26日と27日に開催されたGlobal Space & Satellite Forumという宇宙および人工衛星業界向けの国際会議においては、ASE会長として本会議に登壇しました。
野口宇宙飛行士は、UAE滞在中、アブダビ日本人学校で講演を行ったほか、ハリファ大学を訪問し、航空宇宙学科やNippon Clubの学生と交流しました。
金井宇宙飛行士、ヒューストン日本語補習校にて講演を実施
講演を行う金井宇宙飛行士(出典:JAXA)
金井宇宙飛行士は、5月16日、米国テキサス州のヒューストン日本語補習校にて、ヒューストン日本商工会の主催で開催された講演会に登壇しました。
医師のバックグラウンドを持つ金井宇宙飛行士は、「宇宙医学教室 -宇宙飛行と体の変化-」をテーマに講演を行い、宇宙に行くことでヒトの身体にどの様な変化が起こるかといった話題を中心に、宇宙医学の研究内容を紹介しました。
金井宇宙飛行士は、視力の変化・筋力の低下・骨密度の減少など、宇宙に滞在することで引き起こされる現象について説明し、それぞれの現象が起こる原因を探るために、国際宇宙ステーション(ISS)でさまざまな実験が行われていることを紹介しました。これらの実験は、宇宙に滞在する宇宙飛行士の健康を守るだけではなく、宇宙でヒトの身体に起こる現象が地上で起こる老化現象に似ていることから、地上での医学にも貢献することが期待されています。
また、金井宇宙飛行士は、宇宙環境の特徴のひとつである宇宙放射線についても解説しました。金井宇宙飛行士は、宇宙飛行中に浴びる宇宙放射線量の正確な測定が重要であることを説明し、日本が開発した線量計(PADLES)がISSでの被ばく管理において活躍していることを紹介しました。
講演会の最後には質疑応答が行われ、金井宇宙飛行士は来場者から寄せられた多くの質問に答えました。
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