国際宇宙ステーション(ISS)の第38次/第39次長期滞在クルーである若田宇宙飛行士は、7月前半はNASAジョンソン宇宙センター(JSC)で、7月後半は日本に帰国して筑波宇宙センターでISS長期滞在に向けた訓練を行いました。
JSCでは、船外活動訓練やロボットアームの操作訓練、ISSでの緊急事態発生を想定した訓練などを行いました。
船外活動に関わる訓練では、JSCの無重量環境訓練施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)にあるISSのモックアップ(実物大の訓練施設)が沈められているプールに訓練用の宇宙服を着用して潜り、ISSの船外機器のメンテナンス作業を模擬した訓練を行いました。
ロボットアームについては、キューポラに設置されているロボットアーム操作卓でSSRMSを操作し、ISSに接近した補給船を把持する運用を訓練しました。キューポラは、SSRMSの操作卓とISSの船外を見渡すことができる大きな窓を備えており、ISSの地球側に設置されています。訓練は、ドーム型のスクリーンに囲まれたキューポラのシミュレータを使用して行われ、スクリーンにISS船外の視野を模擬したCG映像が映し出される中で行われました。
ISSのモックアップで行われたISS滞在中の緊急事態を想定した訓練には、第38次および第39次長期滞在クルーのそれぞれ6名全員で臨みました。訓練は、火災、急減圧、空気汚染を想定して行われ、クルー全員で協力しながら緊急事態への対処にあたり、手順の理解やチームワークを深めました。第39次長期滞在クルーの緊急事態対応訓練はコマンダーとしてのリーダーシップが試される重要な訓練でした。また、訓練には大西宇宙飛行士が立ち会い、緊急事態発生時のコミュニケーションの取り方や対処方法など、多くのことを経験豊富な宇宙飛行士から学びました。
7月上旬には、第37次/第38次長期滞在クルーがJSCでの公式訓練を終了したことを関係者で祝うケーキカットセレモニーが行われ、若田宇宙飛行士ら第38次長期滞在クルーの6名も参加しました。
7月下旬に日本に帰国した後は、筑波宇宙センターで「きぼう」日本実験棟に関わる訓練を行いました。「きぼう」のスペシャリストとして、「きぼう」の機器が故障した場合や、「きぼう」で何かしらの異常が発生した際の対処に必要不可欠な知識・技術を復習したほか、ISS滞在中に計画されているシステム運用について訓練を行いました。また、「高プラントル数流体のマランゴニ振動流遷移における液柱界面の動的変形効果の実験的評価(Dynamic Surf)」、「植物の重力依存的成長制御を担うオーキシン排出キャリア動態の解析(CsPINs)」、タンパク質結晶生成実験(JAXA PCG)、「国際宇宙ステーションに長期滞在する宇宙飛行士の筋骨格系廃用性萎縮へのハイブリッド訓練法の効果(Hybrid Training)」などの実験テーマについても訓練を行いました。
今回の帰国は、若田宇宙飛行士にとってISS長期滞在前最後の日本滞在となりました。訓練のほかに、今回の帰国に合わせて記者会見を筑波宇宙センターで行いました。記者会見では、冒頭で若田宇宙飛行士が自身のミッションについて紹介した後、質疑応答が行われました。第39次長期滞在においてコマンダーを務めることから、それに関連した質問が多く寄せられました。質問に答える中で若田宇宙飛行士は、これまでに積み重ねてきた訓練を通してチームワークがしっかりと形作られてきたことや、ミッションへの意気込みなどを語りました。