3月下旬に一時帰国した古川宇宙飛行士は、3月21日に徳島大学を訪れて、自身の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションについて報告を行いました。
報告会では、古川宇宙飛行士によるミッション報告とともに、ISSで実施された徳島大学の医学実験テーマの代表研究者を交えて、実験の成果報告や討論が行われました。
古川宇宙飛行士は、ミッション報告の冒頭で「きぼう」日本実験棟とISSの概要を説明し、それに続けてISSでの生活の様子を紹介しました。生活の様子を紹介する中で、医師でもある古川宇宙飛行士は、微小重力環境下での滞在初期に見られる顔が丸くなる「ムーンフェイス」と呼ばれる身体の変化や、骨粗鬆症の治療薬(ビスフォスフォネート剤)を服用していたことにより、骨密度がほとんど変化しなかったことなど、医学的な側面からの自身の体験談も語りました。その後、ステージ上の大きなスクリーンに映し出されたソユーズ宇宙船の打上げから帰還に至るまでのミッションのダイジェスト映像を見ながら、ミッション中にあった主要イベントを解説しました。
ミッションの報告後には、会場からの質疑応答が行われました。これまでの訓練で苦労したことを聞かれると、ロシア語の学習をあげ、「ロシア語の学習を始めた35歳の当時は、流暢にかっこよくロシア語を話せるようになることを目標にしていた」と当時を振り返り、学習を始めてロシア語の難しさを知ると、ミッションに要求されるレベルまで学習の目標を下げたエピソードを紹介し、「ロシア文学は語れないが、ソユーズ宇宙船の中で通用するロシア語は身に付けている」と自身のほろにがい経験を笑顔で語りました。宇宙で発見したことを聞かれると、物の管理の大変さをあげました。ISSでは、無重量のため地上のように物を置くということができないので、ベルクロやベルトなどで壁に物を固定しますが、何かの拍子で手が当たったりするだけでも物が飛んでいってしまうことがあり、物の管理が思っていた以上に大変であったことを紹介しました。
質疑応答の後には、徳島大学と共同で実施した宇宙医学実験の成果について、各実験の代表研究者が成果を報告しました。
報告会の最後には、徳島大学医学部特別功労賞の授与式が行われました。古川宇宙飛行士は、徳島大学医学部との共同研究において、ビスフォスフォネート剤の効果を実証したことに加え、「蛋白質ユビキチンリガーゼCblを介した筋萎縮の新規メカニズム(MyoLab)」実験にも尽力したことで医学研究の発展に多大な貢献をしたことが称えられ、徳島大学から功労賞が授与されました。
古川宇宙飛行士は、徳島県の他に、帰国期間中は岩手県も訪れ、ミッションの報告会を行いました。その他に、秋葉原で開催された「きぼう」の船外利用実験の成果報告会や、筑波宇宙センターで開催された平成23年度「きぼう」利用フォーラム総会にも参加しました。