JAXA宇宙飛行士活動レポート 2011年10月
最終更新日:2011年11月30日
JAXA宇宙飛行士の2011年10月の活動状況についてご紹介します。
古川宇宙飛行士の活動については、JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在ページをご覧ください。
若田宇宙飛行士が野外リーダシップ(NOLS)訓練に参加
シーカヤックを漕ぐ若田宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
若田宇宙飛行士は、NASAが米国時間10月8日から10月15日にかけて実施した野外リーダシップ(National Outdoor Leadership School: NOLS)訓練に参加しました。
NOLS訓練とは、宇宙滞在に似たストレス環境下で実施される訓練で、訓練中は毎日リーダを交代し、宇宙飛行で重要な自己管理やリーダシップ、フォロワーシップなどのチームワーク、状況に応じた判断方法などを理解・習得するための訓練です。
今回のNOLS訓練は、米国ワシントン州のサンファン島近郊で実施されました。若田宇宙飛行士は、NASAと欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士7名とともに参加しました。シーカヤックによる海上移動における安全等に関する実地訓練の実施後、目的地となる異なる島々をシーカヤックで移動し、キャンプを行う野外生活をおよそ1週間にわたり行いました。
- 若田光一宇宙飛行士
大西宇宙飛行士、NEEMO訓練に参加
岩石サンプルの収集を行う大西宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA/NOAA/UNCW)
大西宇宙飛行士は、第15回NASA極限環境ミッション運用(NASA Extreme Environment Mission Operations: NEEMO)訓練に参加しました。
NEEMO訓練は、米国フロリダ州沖合の海底約20mに設置された「アクエリアス」と呼ばれる海底研究施設内で生活を行い、宇宙飛行に似た極限環境下で国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションなどで必要となるリーダシップやチームワーク、自己管理などの能力を向上させるとともに、ISSおよび有人による惑星探査に向けた新技術・ミッション運用技術の開発などを目的として実施するものです。
今回のNEEMO15では将来の小惑星探査を想定し、海中で微小重力を模擬することにより、小惑星上での移動手段や岩石・土壌サンプルの収集手段について検証を行いました。また、プライバシーのほとんどない閉鎖環境での生活を通して、クルー同士の助け合いや気配り、地上とクルーの間の円滑なコミュニケーションなど、多くのことを学びました。
- 第15回NASA極限環境ミッション運用(NEEMO15)訓練
- 大西宇宙飛行士のNEEMO日記~海底からこんにちは~
なお、油井、金井両宇宙飛行士は、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)にて各自の訓練カリキュラムに沿って訓練を実施しました。
星出宇宙飛行士、筑波宇宙センター特別公開にて講演を実施
TKSCの会場の様子(出典:JAXA)
10月15日に開催された「平成23年度『宇宙の日』筑波宇宙センター特別公開」において、米国ヒューストンで訓練中の星出宇宙飛行士がライブ中継で生出演し、筑波宇宙センター(TKSC)宇宙実験棟の大会議室に集まった多くの来場者に対し、自身の活動状況、2度目となる宇宙飛行に向けた抱負や、宇宙飛行士になる前から勤務し、その後宇宙飛行士として訓練を重ねているTKSCでの思い出などを語りました。
また、「最も大変な訓練は何ですか」という来場者からの質問に対し、「肉体的に大変だったのはロシアでのサバイバル訓練です」との回答に加え、「別の意味で、30歳を過ぎてから新しい言語、ロシア語を習得するのはかなり大変だった」との意見を延べ、会場ではその回答に大きくうなずく光景が見られました。
会場に集まった方々からは、尿を飲料水などに再生する水再生システム(Water Recovery System: WRS)への関心が高く、科学的に高度な質問も集中しました。そして、「宇宙飛行士になるのが夢」と語る“将来の後輩宇宙飛行士”の子どもたちからは、「宇宙飛行士になるために大切な点は何か」、「宇宙で何をしたいか」などの質問が寄せられました。「どうして星出さんは宇宙飛行士に選ばれたと思いますか」という質問には、「自分も分からないので、選んでくれた人に聞いてください」と、はにかむ様子に会場は和やかな雰囲気に包まれました。
現在、星出宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在に向けた訓練を継続しています。10月は、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)にて、無重量環境訓練施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)のプールを使用した船外活動訓練や、筑波やヒューストンの管制官とともに宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)のISSへのランデブやISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)によるキャプチャ運用を模擬したシミュレーション訓練などを行いました。
- 平成23年度「宇宙の日」筑波宇宙センター特別公開
- 星出彰彦宇宙飛行士
- 星出宇宙飛行士 Twitter(@Aki_Hoshide)
向井宇宙飛行士が第62回国際宇宙会議(IAC)へ参加
パネルディスカッションで意見を述べる向井宇宙飛行士(出典:JAXA)
向井宇宙飛行士は、南アフリカ共和国のケープタウンで開催された第62回国際宇宙会議(IAC)に参加しました。
IACは、世界の宇宙関係機関や企業、大学などの関係者が参加し、各国・各機関の宇宙開発計画、学術研究成果の発表の場として、学生や展示参加を含め、全世界から数千名規模の人々が参加する世界最大の宇宙関連会議です。
向井宇宙飛行士は、宇宙環境を利用した教育活動についての講演を行ったほか、NASA、ロシア、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士とともにパネルディスカッションに参加し、ユーリ・ガガーリン宇宙飛行士の人類初の有人宇宙飛行から50周年を迎えた今、有人宇宙活動の50年の歩みを振り返るとともに、今後の50年について意見交換を行いました。
向井宇宙飛行士は、ガガーリン宇宙飛行士の初飛行について、「地球は青かった、という言葉がとても印象的だった。ガガーリンの飛行は、日本の国民を新しい世界へ導いてくれた」と当時を振り返りました。今後の有人宇宙開発については、今以上の学際的なアプローチや、目に見える成果だけではなく、ガガーリン宇宙飛行士の「地球は青かった」という言葉が地球の儚さを人々の心に植え付けた出来事のような目には見えない成果にも意義を見出していくことが大切であるという意見を述べました。
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約1週間にわたり、ワシントン州サンファン島近郊で行われた海上NOLS訓練に参加しました。宇宙飛行士8名と教官2名でチームを編成し、海上航行ミッションを安全に遂行するためのルート計画や天候の把握と予測、緊急時の対応計画等をその日のリーダを中心にチーム全体で行った上で連日ミッションを実行していく事は、チームとして安全に且つ効率良く行動して目的を達成させるための自己管理、リーダシップとフォロワーシップ、チームワークと集団行動能力を鍛える絶好の訓練となりました。
今回のメンバーには、約2年後から始まる予定のISS長期滞在の際、一緒に軌道上に滞在する予定の宇宙飛行士も3名含まれており、今回の訓練で彼らと共に時間を過ごせた事は宇宙でのミッションに向け非常に有意義な経験であり、この訓練を通じて得た教訓をISSコマンダーとして活かせるよう、引き続き訓練に励んで行きたいと思います。