JAXA宇宙飛行士活動レポート 2011年7月
最終更新日:2011年8月31日
JAXA宇宙飛行士の2011年7月の活動状況についてご紹介します。
ISS長期滞在中の古川宇宙飛行士の活動については、JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在ページをご覧ください。
新たに3名の宇宙飛行士が誕生
ISS宇宙飛行士認定証を手に記念撮影する油井(中央)、大西(左)、金井(右)宇宙飛行士(出典:JAXA)
2009年より、国際宇宙ステーション(ISS)搭乗宇宙飛行士候補者基礎訓練を実施してきた油井、大西、金井宇宙飛行士候補者は、2011年7月、全ての基礎訓練項目を修了したことから、7月25日付けでISS搭乗宇宙飛行士として認定されました。
3名はJAXA東京事務所での記者会見に臨み、およそ2年間にわたり受けてきた訓練の感想や今の心境、今後の抱負を語ったほか、記者からの質問に答えました。
新たに宇宙飛行士となった3名は、今後もNASAジョンソン宇宙センター(JSC)を拠点とし、日本を含む各国で行われる宇宙飛行士としての知識・技能を向上させる訓練に参加します。
星出宇宙飛行士、「きぼう」や「こうのとり」に関わる訓練を実施
「こうのとり」の運用に関わる講義の様子(出典:JAXA)
星出宇宙飛行士は、一時帰国し、筑波宇宙センター(TKSC)にて、一緒に国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在するNASAのサニータ・ウィリアムズ宇宙飛行士と、「きぼう」日本実験棟や宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の運用に関わる訓練を行いました。
「きぼう」に関わる訓練では、「きぼう」システム全体および実験装置の状態を監視・制御する監視制御系(Command and Data Handling: C&DH)や、「きぼう」の各機器に電力を供給する電力系(Electrical Power System: EPS)、冷却水を循環させることにより機器の排熱を行う熱制御系(Thermal Control System: TCS)、温度や湿度の調整および空気循環を担う環境制御系(Environment Control and Life Support System: ECLSS)などの「きぼう」の主要なシステムについて、講義やシミュレータを使用した訓練を通して運用方法を確認しました。その他、モックアップ(実物大の模型)を使用したエアロックの操作方法の確認や、シミュレータを使用したロボットアームの操作訓練なども行いました。
「きぼう」での実験に関わる訓練では、タンパク質結晶生成実験(JAXA PCG)について理解を深めるとともに、実験に使用する蛋白質結晶生成装置(Protein Crystallization Research Facility: PCRF)の概要について学びました。その他、長期滞在中に予定されている実験や、多目的実験ラック(Multi-purpose Small Payload Rack: MSPR)、画像取得処理装置(Image Processing Unit: IPU)などの実験を支援するシステムに関わる訓練も行いました。
「こうのとり」については、運用全体やシステムの概要、クルーのタスク、曝露パレットの運用などについて訓練を行いました。
- 星出彰彦宇宙飛行士
- JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在
国際宇宙ステーション利用シンポジウム~日本の復興・再生に向けた貢献~
パネルディスカッションで意見述べる若田宇宙飛行士(出典:JAXA)
若田宇宙飛行士は、東京都千代田区の丸ビルホール&コンファレンススクエアにて開催された「国際宇宙ステーション利用シンポジウム~日本の復興・再生に向けた貢献~」に参加しました。
シンポジウムでは、国際宇宙ステーション(ISS)計画で培った安全管理や危機管理、ISSが備える様々な技術を、これからの日本の復興・再生や安全な社会創りにどのように役立たせるのか、講演やパネルディスカッションを通して、シンポジウムに参加した一般の方々も含めて意見交換を行いました。
パネルディスカッションにおいて、若田宇宙飛行士は、危機に直面した際の情報共有のあり方について、「リスクがどこにあるか、正確なデータを共有して信頼関係を築くことが大切」と、自身のISS長期滞在時に地上の管制官とのコミュニケーションにおいて認識した情報共有の大切さを重ね合わせて語りました。この他にも、安全設計やリーダーシップを論点に、立場や経験の違う他のパネラーとともに深い議論を交わしました。
JAXAシンポジウム2011 「はやぶさ」の成果と宇宙での長期滞在
トークセッションの様子(上:若田宇宙飛行士、下:野口宇宙飛行士)(出典:JAXA)
若田、野口両宇宙飛行士は、「「はやぶさ」の成果と宇宙での長期滞在」をテーマに開催したJAXAシンポジウム2011に参加しました。野口宇宙飛行士は東京で7月7日に開催したシンポジウムに、若田宇宙飛行士は京都で7月30日に開催したシンポジウムにそれぞれ参加しました。
各シンポジウムでは、「ガガーリンから50年 宇宙は挑む時代から暮らす時代へ」と題して、サイエンス作家の竹内薫氏とともにトークセッションを行いました。トークセッションでは、ユーリ・ガガーリン宇宙飛行士の打上げを振り返るとともに、初の有人宇宙飛行から50年たった今、国際協力のもと進められている国際宇宙ステーション(ISS)計画の現状や日本としての貢献、今後の有人宇宙開発の展望などについて、映像や画像を交えながら紹介しました。
若田宇宙飛行士はトークセッションの終わりに、コマンダーを務めることになる自身の長期滞在について、「先輩の宇宙飛行士たちがひとつひとつ経験の場を広げてくれた。「きぼう」、「こうのとり」と、日本は世界から信頼されるすばらしい技術がある。先輩宇宙飛行士の活躍および日本の技術に対する信頼があってコマンダーに任命されたと思っている。日本の信頼をもうひとつ高めるために頑張りたい」と抱負を語りました。
野口宇宙飛行士は、宇宙飛行という経験がもたらした人生観の変化について、「宇宙で地球を目の前にして、目に見える形で資源に限りがあるということを実感し、地球を大切に守らなければならないと強く思った」と、地球の儚さや命の尊さを感じたエピソードを語りました。
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