JAXA宇宙飛行士活動レポート 2009年9月
最終更新日:2009年10月29日
JAXA宇宙飛行士の2009年9月の活動状況についてご紹介します。
金井宇宙飛行士候補者決定
訓練開講式で訓練への抱負を述べる金井宇宙飛行士候補者
2009年9月8日、国際宇宙ステーション(ISS)搭乗宇宙飛行士候補者として、新たに金井宣茂宇宙飛行士候補者を正式採用することが決定しました。
採用決定後に開かれた記者会見で、医師のバックグランドを持つ金井宇宙飛行士候補者は、「宇宙医学の分野で何か貢献できるようになりたいと考えている。"この分野であれば金井に聞け"と言われるように、何か専門分野をもった宇宙飛行士になりたい。」と抱負を語りました。
その後、筑波宇宙センター(TKSC)での基礎訓練開講式を経て渡米し、油井、大西両宇宙飛行士候補者とともに、2年程度NASAの宇宙飛行士候補者訓練を受け、訓練結果の評価に基づき、正式にJAXA宇宙飛行士に認定されます。
ISS長期滞在クルーとSTS-131ミッションクルーの合同訓練
緊急時に使用する機器を確認する野口(左)、山崎(中央)両宇宙飛行士
国際宇宙ステーション(ISS)の第22次/第23次長期滞在クルーである野口宇宙飛行士と、STS-131ミッションクルーの山崎宇宙飛行士は、ISSで緊急事態が発生した際の対応訓練を、長期滞在クルー・STS-131ミッションクルー合同で行いました。
野口宇宙飛行士がISS滞在中に、山崎宇宙飛行士が搭乗するSTS-131ミッションが予定されており、野口、山崎両宇宙飛行士はISSで共同作業を行う予定です。
合同訓練中の長期滞在クルーとSTS-131ミッションクルー
訓練では、ISS内での火災とアンモニアガスの漏れを想定して、対応手順や避難手順を確認しました。スペースシャトルのクルーはスペースシャトルへ、長期滞在クルーはソユーズ宇宙船へそれぞれ避難します。野口宇宙飛行士は地上と交信しながら長期滞在クルーとSTS-131ミッションクルーへ状況報告を行いました。山崎宇宙飛行士はスペースシャトルに避難後、STS-131ミッションクルーのステファニー・ウィルソン宇宙飛行士とともにハッチを閉める作業を行いました。また、アンモニアガスの漏れを想定した訓練では、ガスマスクの着用方法についても確認しました。
- 野口聡一宇宙飛行士
- JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在
ESAでのISS長期滞在訓練
ESAのWEARに関わる訓練を行う野口宇宙飛行士
ESAの実験に関わる訓練を行う野口宇宙飛行士
国際宇宙ステーション(ISS)の第22次/第23次長期滞在クルーである野口宇宙飛行士は、ドイツにある欧州宇宙機関(ESA)の欧州宇宙飛行士センター(European Astronaut Centre: EAC)で、ESAのモジュールである「コロンバス」(欧州実験棟)に関わる訓練を行いました。
生物学実験ラック(Biolab)に関わる訓練では、実験サンプルを保存するための温度制御ユニット(Temperature Controlled Unit: TCU)の初期設定やグローブボックスのフィルタ交換作業について、流体科学実験ラック(Fluid Science Laboratory: FSL)に関わる訓練では、防震マウントの設置や実験画像を処理するビデオ管理装置(Video Management Unit: VMU)の操作について訓練を行いました。
ESAの実験に関わる訓練では、Biolabを使用して行うWAICOと呼ばれる、重力が植物の根の成長に与える影響を調べる実験の目的と内容を学び、クルーが実施する作業を確認しました。また、無重力での空間認識能力の影響評価に関する実験(3D-Space実験)の機器の操作訓練を行いました。その他、コンピュータを搭載したヘッドマウント式のWEAR(Wearable Augmented Reality)と呼ばれる機器の操作についても訓練を行いました。WEARはディスプレイを備えており、このディスプレイにクルーへの作業手順などを表示することができます。手順書を持つクルーの手を空けることにより、作業の効率化を目的としています。なお、今回の訓練は、ISS長期滞在前最後のESAでの訓練となりました。
- 野口聡一宇宙飛行士
- JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在
STS-131ミッションに向けた訓練
与圧服に装備された小型の救命ボートでNBLのプールに浮かぶ山崎宇宙飛行士
山崎宇宙飛行士は、STS-131ミッションに向けて、他のSTS-131ミッションクルーとともにNASAジョンソン宇宙センター(JSC)で訓練を行っています。
山崎宇宙飛行士は、無重量環境訓練施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)での、ウォーター・サバイバル訓練を実施しました。
フライトデッキからの脱出訓練を行う山崎宇宙飛行士
この訓練は、スペースシャトルの打上げ・帰還時に異常が発生した場合を想定し、スペースシャトルからの脱出手順や、脱出した後の海上での与圧服(オレンジスーツ)に装備されているサバイバルキットの使用方法などを習得するために行われます。
また、スペースシャトルのモックアップ(実物大の訓練施設)を使用して、スペースシャトル着陸後にスペースシャトルに緊急事態が発生した場合を想定して、ハッチから緊急脱出用スライドを使用して脱出する訓練や、ハッチが開かない場合に、フライトデッキの窓からロープを伝って脱出する訓練を行いました。
無重量環境訓練施設(NBL)での船外活動訓練
水中用宇宙服を着用する星出宇宙飛行士
水中用宇宙服を着用した古川宇宙飛行士
古川、星出両宇宙飛行士は、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)にある無重量環境訓練施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)にて、技能維持・向上のための船外活動訓練を行いました。
NBLのプールの中には、国際宇宙ステーション(ISS)のモックアアップ(実物大の訓練施設)があり、水の浮力を利用して実際の船外活動に似た環境で訓練を行います。
HTVミッション中のCAPCOM業務
CAPCOMを担当する星出宇宙飛行士
星出宇宙飛行士は、宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)技術実証機の国際宇宙ステーション(ISS)への結合時やISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)による曝露パレット移設時、「きぼう」日本実験棟のロボットアームによる船外実験装置移設時に、NASAのミッション・コントロール・センター(Mission Control Center: MCC)でISSとの交信を行うCAPCOM(Capsule Communicator)を担当しました。
また、CAPCOM業務に加え、宇宙飛行士室の代表として、HTVで運んだ船外実験装置の移設に関する「きぼう」ロボットアーム運用の技術支援を行いました。
HTVがISSのロボットアームに把持されて「ハーモニー」(第2結合部)に結合される様子をMCCで見守った星出宇宙飛行士は、「無人の宇宙船をロボットアームで掴むのは未知の事だったが、日本を始め、米国、カナダの関係者、そして多国籍から成るクルーの連携がすばらしかった。関係者の間でも、日本の優れた技術を誇れる仕事だった。」と、喜びを語りました。
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