3.7 スペースシャトルの飛行管制について
3.7.1 ジョンソン宇宙センター(JSC)の概要
1961年9月にテキサス州ヒューストンに発足され、主要業務として
・有人宇宙飛行用宇宙船・関連系の設計・開発・試験
・宇宙飛行士の選抜・訓練、
・有人ミッションの企画・実施
・宇宙医学・工学と科学実験装置開発
・スペースシャトル計画のプログラム管理とオービタの開発
・宇宙ステーション開発及び計画全体の管理
・スペースシャトルと宇宙ステーション計画のインタフェース責任が行われています。
名称:Lyndon Jonson Space Center
所在地:Houston TX77058
以下に、JSC内の地図を図3-6に示します。
図3-6 ジョンソン宇宙センター(JSC)内の地図
3.7.2 飛行のための地上管制
スペースシャトルの運用は、ジョンソン宇宙センター(JSC)内のミッションコントロールセンター(MCC)から静止軌道上のデータ中継衛星を介して行われます。
地上管制の主な役割は、軌道上のスペースシャトルの飛行を支援することです。特に姿勢に対する制御等は、シャトルの搭載コンピューターシステムにはプログラムされていないので、地上で考慮しなければなりません。
3.7.3 ミッションコントロールセンター(MCC)の概要
テキサス州ヒューストン市のジョンソン宇宙センター(JSC)内にあるMCC(ビルディング30)は、1965年のジェミニ計画以来米国の有人宇宙機の管制を全て行ってきました。MCCは、JSC内のビルディング30Sに設置されており、飛行中のシャトルの状態を24時間体制でモニターしシャトルクルーを支援しています。シャトルの発射から着陸までの全期間に於いて、MCCはシャトルに対する通信および支援活動の中心となります。なお、1995年からはシャトルの運用は国際宇宙ステーションの管制のために作られた新しいMCC(ビルディング30S)に移行しています。
A.主要業務
飛行管制チームの業務としては、飛行活動の追跡、主要マヌーバ、予定変更、予期しないイベントへの備え等があります。以下に各担当毎の主要な業務を示します。
(ア)フライトディレクター(FD):シャトルミッション全体に対して責任を持つ。
(イ)キャプコム(CAPCOM):実験管制チームと宇宙飛行士間の交信の中継点として機能する。
(ウ)フライトダイナミクス・オフィサー(FDO):マヌーバ(軌道変更、姿勢制御)を計画したり、誘導担当者(ガイダンスオフィサー)と協力して、軌跡をモニタする。
(エ)ガイダンスオフィサー(GDO):シャトル搭載の航法及び誘導コンピュータのソフトウェアをモニタする。
(オ)データ処理システムエンジニア:各種データ処理システムの状況を評価する。
(カ)フライトサージャン(宇宙航空専門医):クルー活動、クルーの健康状態等をモニタする。
(キ)ブースターシステムエンジニア:メインエンジン、固体ロケットブースタ、外部タンク等についてのモニタおよび評価を実施する。
(ク)推進系エンジニア:ガスジェット姿勢制御システム及び軌道操作エンジン等についてのモニター及び評価を実施する。
(ケ)誘導、航法及び制御エンジニア(GNC):シャトル全体の誘導、航法及び制御系システムをモニタする。
(コ)電気、環境及び消耗品システムエンジニア(EECOM):シャトルの燃料電池用の低温タンクの温度、キャビン冷却系、キャビン圧力、オービタ内照明等をモニターする。
(サ)計装及び通信システムエンジニア(INCO):飛行中の通信及び計装システムを計画し、モニタする。
(シ)地上管制(GC):地上の管制システムの運用を管理する。
(ス)飛行活動オフィサー(FAO):クルー活動、各種手順書及びスケジュールを計画し、クルーを支援する。
(セ)メインテナンス、機械式アームおよびクルーシステムエンジニア(MMACS):ロボットアーム、オービタの機械システム等の運用をモニタする。
(ソ)広報担当オフィサー(PAO):広報活動をリアルタイムでサポートする。
上記(ア)〜(ソ)の担当は、各1名です。(交代勤務によるメンバー数は除く)ただし、その後方で技術的な支援を行う多数の要員がいます。
B.通信
シャトルとの通信及び追跡は、追跡・データ中継衛星システムを用いて行われます。このシステムは、3機の静止衛星からなっており、1機は予備です。地上局は、ニューメニシコ州のホワイトサンズにあります。
NASA通信網(NASCOM)によってホワイトサンズ局をはじめとする追跡局とMCCを結んでいます。
万が一、JSC/MCCが完全に機能不全に陥った場合に備えて最低限のバックアップ設備がホワイトサンズ試験施設(WSTF)にも備え付けられています。
飛行管制室の支援設備のうちで最も重要なものの1つが、ディスプレイ/コントロールシステムで、これは壁面上にある一連の大スクリーンです。これはシャトルの位置やシャトル内活動、地球観察画像等を示すことができます。
図3-7 にデータ通信の概要を示します。
図3-7 データ通信の概要
図3-8 にMCC内部の写真を示します。
図3-8 ミッションコントロールセンター(MCC)内部