4.着陸について

 

4.1 概要

 地球への帰還は、まずペイロードベイ(貨物室)のドアを閉じることから始まります。次に姿勢を変え、後部を進行方向へ向けます。この姿勢で軌道制御用エンジンを作動させることにより、オービタは減速され、地球周回軌道から大気圏突入のための楕円軌道に突入します。

 エンジンの作動が終了すると、オービタは再び機首を進行方向に向け、大気圏突入に備えることになります。この時、オービタは仰角(水平面に対する機軸の傾きの角度)40度になるように機首を引きおこします。これは、大気抵抗により十分減速できるようにすると同時に、オービタが加熱され過ぎないようにするためです。この時の高度は約120 キロメートル、速度は秒速7.6 キロメートル、着陸地点から約8千キロメートル離れています。

 高度が約53キロメートル、速度が秒速4キロメートルまで減速してきた時、ここまで仰角40度を保って降下してきたオービタは、これより後次第に仰角を減少させ、高度23キロメートル、速度が秒速0.76キロメートルに達した時には、仰角は約10度にまで下がっています。

 以後、普通のグライダと同様に大気中を滑空しながら着陸地点に接近していきます。こうして、大気圏に突入してから約40分後、スペースシャトルの地球への帰還は終了します。(着陸時のタイヤ接地速度は約350km/h )。

 オービタは、フライト開始当初は、エドワーズ空軍基地に着陸することが多かったのですが、最近ではKSCへの着陸が普通になっています。今回のSTS-87でも、オービタはKSCに着陸予定です。

 図4-1に軌道離脱より着陸までのオービタの概念図と表4-1 に、オービタの帰還時のタイムシーケンスの例を示します。

 

 表4-1 オービタ帰還時のタイムシーケンスの例

注)L-:着陸までの時間

この表は一例で、帰還がいつもこの通りに行われるわけではありません。

 

ブラックアウト:オービタと大気との摩擦による高温でオービタ周囲の大気が電離し、これにより形成されたプラズマでオービタが包まれて電波がさえぎられ、10数分間通信が途絶える。

 

図4-1 軌道離脱マヌーバからオートランド・インタフェースまでのイベント

 

4.2 代替着陸地

 天候その他の理由により、KSCに着陸できない場合は、代替着陸地としてカリフォルニア州のドライデント飛行研究センターあるいはニューメキシコ州のホワイトサンズ試験施設(WSTF)が指定されています。

 

4.3 緊急着陸地

 緊急着陸地としては、ニューメキシコ州のホワイトサンズ試験施設(WSTF)、スペインのモロン空軍基地、モロッコのベリンゲリル基地、ガンビアのバンジュル基地、セネガルのダカール空港、グアムのアンダーセン空軍基地、その他多数があります。