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宇宙実験サクッと解説:Rad Gene編

p53ってなに?


宇宙実験調査団のピカルが宇宙放射線実験を大調査!

実験提案者の奈良県立医科大学大西武雄教授とも
仲良しの物知りハカセに突撃取材です。

物知りハカセ

ピカル

ピカル:

お久しぶりです、ハカセ。早速ですが、p53ってなんですか?

ハカセ:

いきなりするどい質問じゃの。 p53を一言で言うと「遺伝情報の守護神」なんじゃ。

ピカル:

遺伝情報ってなんですか?

ハカセ:

遺伝情報とはDNAの中に刻まれた我々の体の設計図じゃ。 この設計図に傷ができたら大変なんじゃ。 傷が残れば細胞は死んでしまうし、傷がまちがってなおされたら設計図が狂ってしまうんじゃ。 そこで、この設計図に傷ができるとp53がはたらきだすんじゃ。p53は子分を次々に作り出すよう指令を出して、傷をなおしたり、傷がつきすぎた細胞が増えないようにしたりと、大活躍する。 p53の子分はたくさん知られており、それぞれ専門の仕事をまかされておるんじゃよ。 これらのp53によって調節される子分のことを、p53調節遺伝子群と呼ぶのじゃよ。

ピカル:

ちょっと難しいけど、p53ってとっても大切なものみたいですね。

ハカセ:

p53はがんをつくらないようにするはたらきから、がん抑制遺伝子とも呼ばれているのじゃよ。

ピカル:

宇宙で、なんでp53を調べるのですか?

ハカセ:

まず、宇宙はどういう環境なのか知っておるかな?

ピカル:

無重力!

ハカセ:

そうさな。 地球上の重力のある環境で生まれた生物にとって、無重力環境はこれまで経験のない特殊な環境といってよい。 それ以外で宇宙の特殊な環境を知っておるかな?

ピカル:

・・・?

ハカセ:

無重力以外にも知っておいて欲しいのじゃが、宇宙では地上の約100−200倍の放射線が飛び交っておる。 普段我々は地球をとりまく磁場や大気で守られているけれど、宇宙では銀河の彼方や太陽から降り注ぐ放射線や、地球の磁場でたまった放射線をまともにあびてしまうんじゃ。 特に、宇宙の放射線には鉄などのエネルギーの高い重粒子線が含まれておる。 X線を水鉄砲に例えると、重粒子線は大砲のようなものじゃ。 重粒子線が通過したところに傷ができ、この傷はなおりにくいことも知られておるのじゃ。

ピカル:

うわぁ! 宇宙ってこわい一面もあるんですね!

ハカセ:

そんなにこわがることもないんじゃよ。 放射線に多くあたらないのが良いのは当然じゃが、まっ、人類が宇宙で長く暮らすためには、宇宙放射線を正しくこわがることが大切なんじゃよ。

ピカル:

正しくこわがるってどういうことですか?

ハカセ:

まだまだ、宇宙放射線についてわからないこともいっぱいあるんじゃ。 例えば、重粒子線を含むいろいろな放射線にじわじわとあたり続けることの影響や、無重力と宇宙放射線の相互作用など、地上ではなかなか確かめることが難しいため、宇宙で実験しなければならないんじゃよ。 そして、宇宙放射線の生物影響を正しく知ることが、これから人類が長期間宇宙に進出していくために必要なことなんじゃ。

ピカル:

これまでに宇宙でのp53のはたらきはどこまでわかっているんですか?

ハカセ:

宇宙飛行したネズミの皮膚や筋肉にp53がいっぱいたまっていることを大西先生達が見つけたんじゃ。

ピカル:

もうそれがわかっているんなら、実験しなくてもいいんじゃないんですか?

ハカセ:

おいおい、そうあわてるでない。 科学とは、一つわかると新たな疑問が次々とわいてくるものなんじゃ。 例えば、宇宙飛行したネズミのp53は何が原因で増えたと思うかね?

ピカル:

これまでの話の流れから当然、宇宙放射線でしょ?

ハカセ:

そうともいいきれないんじゃ。 宇宙放射線と無重力の相互作用かもしれないし、宇宙にいく時や、地球に戻ってくるときの加重力が影響しているのかもしれないからな。

ピカル:

この実験では、無重力や加重力の影響と宇宙放射線の影響を区別できるんですか?

ハカセ:

まず、無重力について説明しよう。 日本の宇宙実験棟「きぼう」には、細胞を育てる機械があって、それには空洞の部屋と遠心機付きの部屋があり、遠心機を回すと宇宙でも地球と同じ1g(「ジー」、重力加速度)の重力環境を作り出すことができるんじゃ。 これによって宇宙放射線だけの影響をみることができるように工夫したそうじゃ。

ピカル:

日本の宇宙実験棟ってすごいんですね。

ハカセ:

次に、加重力の影響を取り除くために、宇宙にいく時や、地球に戻ってくるとき、細胞を凍らせて眠らせることにしたそうじゃ。 眠らせておけば、p53が増えることもないからな。

ピカル:

いろいろ考えておられるんですね。 ところで、この実験はぼくたちの生活にどう関わってくるんですか?

ハカセ:

ネズミの実験ではp53のみの増加を確認したにすぎないが、今回は3万種類にもおよぶヒトの全遺伝子をくまなく調べて、特にp53によって調節される遺伝子群の発現変化を見ようとしておる。 このような研究をすすめることで、君たちが安全に宇宙に飛び出していけるように、正しい知識を得ようとしておるんじゃよ。

ピカル:

なるほど、よく分かりました! 実験が成功するといいですね。 ハカセ、今日はどうもありがとうございました!

文責:

高橋 昭久 (たかはし あきひさ)
奈良県立医科大学医学部医学科生物学教室
講師


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