サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター
宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センタートップページ
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2013年8月16日

皆さん、こんにちは。7月は、私も久しぶりに日本に帰国する機会がありました。勿論、日本で仕事をするのは非常に楽しくて、やりがいがあります。一方で、日本に帰国した際に思うのは、「私達の仕事の内容やISS(国際宇宙ステーション)での成果が、日本の皆様方に十分に伝わっていないのではないか?」という事です。いつも申し上げている様に、ISSに参加している国々からは、日本の技術力、「きぼう」や「こうのとり」の運用能力、飛行士や管制官に対する訓練の質などが非常に高く評価されています。ですから、日本でISSの存在意義や、将来の有人宇宙活動への投資について疑問が投げかけられる度に、私達が説明責任を果たしていない事を痛感し、本当に申し訳ない気持ちになります。

ISSの成果は沢山あるのですが、比較的皆様方に知られているのは、私が大好きな全天X線監視装置「MAXI」によるX線新星の発見や高品質なタンパク質結晶等ではないでしょうか?ただ、それらの一般に知られている成果以外にも、「きぼう」のモジュールで培った、有人宇宙開発技術やHTV「こうのとり」やH-IIBと言った宇宙船やロケットの技術、さらにそれを運用する技術やノウハウも蓄積されています。何より、それらの予算は、日本国内で使用され、雇用を生み出しつつ、最先端の技術を磨くという成果をあげています。

写真:全天X線監視装置 MAXIは、ISSの中でも最も大きな成果をあげている装置の一つです。4年間で12件ものX線新星を発見し、世界のX線宇宙観測に大きく貢献しています。(従来は、年間で1個発見のペースでした。)

全天X線監視装置 MAXIは、ISSの中でも最も大きな成果をあげている装置の一つです。4年間で12件ものX線新星を発見し、世界のX線宇宙観測に大きく貢献しています。(従来は、年間で1個発見のペースでした。)

写真:微小重力下でたんぱく質の結晶を作ると、質の高い結晶が出来、細部まで結晶構造を解析できます。これによる新薬や新しい触媒の開発等が期待されています。1サンプル当たりの単価も比較的低いので、多くの国々が実験に参加できる可能性もあります。現在は、ロシア、マレーシアが実験に参加しているのですが、今後もっと多くの国々と共同で研究が出来ると良いですね。

微小重力下でたんぱく質の結晶を作ると、質の高い結晶が出来、細部まで結晶構造を解析できます。これによる新薬や新しい触媒の開発等が期待されています。1サンプル当たりの単価も比較的低いので、多くの国々が実験に参加できる可能性もあります。現在は、ロシア、マレーシアが実験に参加しているのですが、今後もっと多くの国々と共同で研究が出来ると良いですね。(写真の出典はJAXA)

ここまでの話は、宇宙開発に興味のある方々にとっては、特に新しい内容ではなく、そして多くの方々が、この成果を認識しつつも、年間400億円を投資することに対して疑問を投げかけているのだと思います。(ISSに年間400億円というと、子供達も含め、日本国民全ての方々が、毎日約1円ずつ投資をしているのと同じ額になりますね。私はその期待に応えるだけの仕事を毎日しなければならないと思い、頑張っています。)

実は、私がISSの最大の成果と考えている事項は、これまでの議論の中にあまり含まれていませんでした。せっかくの機会ですので、個人的な考え方と前置きした上で、私の考えを述べさせて頂きたいと思います。

私が考えるISSの最大の成果は、我が国の平和と安全への貢献です。

皆さんは、私が以前航空自衛隊で戦闘機のパイロットとして勤務していた事はご存知でしょうか?私が戦闘機のパイロットだった時に、何を目指していたかといえば、それは最強の戦闘機パイロットになる事でした。「最強であれば、負ける事はない!誰にも負けない実力を備えたパイロットが沢山いれば、誰も日本を攻めようとは思わない!」という考え方に基づき、日々努力していました。

その後、テストパイロットとして勤務していた際には「空の勝利は技術の勝利」と言う合言葉のもと「性能が良く、使いやすい装備品をパイロットに提供すれば、自衛隊が強くなり、誰も日本を攻めようとは思わない!」という考え方に基づき、テストパイロットとしての仕事に全力を尽くしました。

更に、統合幕僚監部で日米間の調整の仕事を行っていた際は「アメリカとの関係を良好に保ち、いざという時に米国と一緒に仕事を出来る環境を整えておけば、それを認識した他国は、日本を攻めようとは思わない!」と信じて仕事をしていました。

そうです。私は宇宙飛行士になるまで、国民の皆様方の安全をいかにしてお守りするかということに、全力を尽くして来たのです。その私が、日々感じているISS最大の成果が、我が国の平和と安全に対する貢献なのです。いえ、我が国だけでなく、アジアあるいは世界の平和にも結びつく素晴らしい成果だと思っています!

一つの例を挙げると、私が自衛官だった頃、ロシアのイメージは、決して良いものではありませんでした。そもそも、ロシアに関する良い情報は、なかなか日本に入ってきませんし、私が戦闘機パイロットだった時に、その様な情報は、不要でした…(国民性や相手の戦法等は重要な情報でしたが、相手が良い人たちだと言う事を、現場のパイロットが知っていても、仕事がしづらくなるだけです。)

でも、ISSの搭乗をアサインされ、ロシアでの生活が長くなると、私の過去の考え方が、本当に恥ずかしく思えます。私は、日本が世界で最も平和的な国だと信じていましたし、その事に誇りを持っていました。ですから、ロシアに親日の方々が多いのに、日本はそうではないという事実を知った時「国際平和を誠実に希求する国民」としてかなり恥かしい事の様に感じました。

私は、ロシアの本当の姿を見て、ロシアとのパートナーシップの重要性を認識することができました。そして、現在、ロシアの方々にも、日本とのパートナーシップの重要性を理解して頂けるように、日々全力を尽くしています。

この様に、互いの国が互いの実力を認め合いながら、共通の目的に向かって努力する事で、両国の関係は良好になり、結果として平和な関係を築く事ができます。ISSは、まさにそのような形で、ISS参加国の間の平和に寄与しているのです。

ところで、皆さんは、現在の日本周辺の国際環境をみて、どう思われますか?最近のニュースをみて、少し不安に思われる方々もおられるかもしれません。でも、ISSを通じた活動によって、我が国の安全は大きく向上していますし、今後も、ISSをうまく利用できれば、更にその効果を高めることができると私は考えています。

皆さんもご存知のとおり、日本は自ら戦争をする事は決してありません。つまり、相手の国が日本を攻撃しない限り、戦争にはならないのです。そして、日本の宇宙開発が目指すべきは、他国が日本を攻める気をなくさせる様な方向性に導く事だと考えています。

例えば、我が国の「きぼう」モジュールで多くの国々の実験が行われるようになれば、その国々との信頼関係が深まり、戦争は起こりづらくなります。また、その様な努力を継続し、日本がアジアの宇宙開発をリードしている状況になれば、他国も日本を攻撃して、多くの国々の非難を浴びる危険を冒せなくなるでしょう。

難しい話ばかりになってしまったので、簡単な例えで説明しましょう。

町内会や学校のクラスに、知的・冷静で、思いやりがあり、武道の心得もある方が、その能力を決してひけらかす事なくリーダーとして皆を導いているとしたら、そして、町内会やクラスの運営がうまく行っているとしたら、そのリーダーを尊敬しますし、そのリーダーに何かあったら困ってしまいますよね。そして、そのリーダーに対して反抗的な態度をとって、皆からの非難を浴びる事は避けるでしょう。

日本が、この例のように、世界の人達にとって必要不可欠な存在であれば、日本は安全になるのです。そして、その世界の人達への貢献の一つとして日本の宇宙開発があるのだと思うのです。

私には、2015年のミッションに向けての夢があります。私は、「きぼう」を利用して、多くの国々の実験をしたいと願っています。そして、可能であれば、ISS滞在中に多くの国々の方々と交信イベント等を行いたいと思っています。

「我々日本人の税金を使っているのだから、油井飛行士は日本の為にもっと働いてくれ!」といったご意見もあるかもしれません。でも、私はせっかく国際宇宙ステーションで仕事をするのですから、多くの国々の為に仕事がしたいのです。そして、それが結果的に我が国の安全に大きく貢献する事を知っています。お金に換算することが出来ないほど重要な成果!それが、ISSの平和に対する貢献なのです!ぜひご理解のほど、宜しくお願いします。


≫バックナンバー一覧へ戻る

 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency サイトポリシー・利用規約