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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2013年2月26日

1月は様々な訓練が行われました。実は、私の誕生月が1月であることも、その要因の一つです。飛行士は誕生月に身体検査やフライトの技量チェックなど、年に一回の行事が沢山あります。(実は、試験や検査が多く、あまり楽しい月ではありません(笑))

その中で今回紹介するのは、緊急手順のシミュレーター訓練です。私達の飛行訓練を行うT-38には、チェックリストと呼ばれる手順書があり、その手順に従いながら飛行しています。そして、航空機に何らかの異常が発生した場合にも、その手順書に従って対処します。今回実施したのは、シミュレーターと呼ばれる、飛行を模擬する装置を使用して、様々な不具合を発生させ、緊急事態への対処を身につける訓練です。実はこの訓練は通常の飛行訓練より遥かに大変な訓練なのです!確かにコンピュータを使用した模擬飛行ですから、万が一墜落しても命の危険はありません。でも、飛行中に起こりうる最悪の状況が次から次へと起こる上、その対処を教官がモニターしており、自分の判断・操作が評価されるので結構な緊張感なのです!特に私は、以前テストパイロットでしたから、上手く出来て当然と見られますし、何かおかしな失敗をすると、日本人パイロット・宇宙飛行士全体の評判に響きかねません。(大袈裟な!と思われるかもしれませんが、真剣です。NASAの方々は、私の事を日本のパイロット出身者として見てくれています。多くの場合、初めて会う方は私の経歴を事前に読んでいて「あなたが、航空自衛隊で戦闘機のテストパイロットをしていた人ですね。」と言ったところから会話が始まるのです。)

写真:私が、大人になるまで知らなかった事…それは、国旗に対する礼儀作法です!これを知らずに海外にいくと、自分が恥をかくだけでなく、日本人の品位を疑われます!海外に行くお子さんがいたら、しっかり教育してあげましょう。他国の国旗を自国の国旗と同様に敬う。そんなところが、相互理解につながります。

こちらが操縦席です。「ゲームみたいで楽しそう!」と思われるかもしれませんね。自由に飛行するだけなら楽しいのですが、通常手順、管制官との交信などもしっかりと実施しながら、さらに緊急事態に対処するので、非常に忙しく大変なのです。

写真:私が、大人になるまで知らなかった事…それは、国旗に対する礼儀作法です!これを知らずに海外にいくと、自分が恥をかくだけでなく、日本人の品位を疑われます!海外に行くお子さんがいたら、しっかり教育してあげましょう。他国の国旗を自国の国旗と同様に敬う。そんなところが、相互理解につながります。

こちらが教官席です。ここから、天候を変化させたり、様々な緊急事態を発生させたりします。パイロットの動きや操作も全てモニター出来るようになっています。教官は、地上の航空管制官役も実施します。

この様な飛行訓練が、なぜ宇宙飛行士の訓練で重視されているかというと、宇宙での仕事の進め方、緊急事態への対処の方法が非常に似ている為です。宇宙で飛行士が実施する仕事も、手順書があってその手順書どおりに仕事を進めます。仕事を進める上で、クルーや地上の管制官たちと調整をしながら仕事を進めるのも一緒、更に緊急事態の際に、早く正確に対処しなければ自分や仲間の命に関わるというところも同様です。

でも、よく考えてみると、実は、チェックリストを用いた仕事のやり方や緊急事態への対処は、皆さんの日々の生活や仕事でも色々と応用できることなのです。例えば、買い物に行く際に、お店に行く順番や買うものをリストアップしておけば、効率よく買い物が出来て、買い忘れも発生しません。でも、普段の生活ではそこまで準備する方は正直少ないのかもしれないですし、絶対的に必要ではないと思います。なぜなら、買い物は買う順番を間違えたところで、大きな問題はありませんし、買い忘れがあっても、もう一度買い物に行けば良いだけです。この様なリストが重要になるのは、失敗が許されない重要なイベントや緊急事態への対処の場合です。航空機や宇宙での飛行は、スイッチを入れる順番やタイミングを間違えただけで、機材が故障したり、生命に危険が及ぶ事もありますから、手順書どおりに作業を進めることが非常に重要なのです。(物を買ってきて、説明書を読まずに先ず使ってみる様ではダメですよ(笑)。)

今回私が皆さんにお勧めするのは、緊急事態への対処を事前に準備をしておく事です。緊急事態は、その言葉の表すとおり、速やかに対処する事が求められます。しかしながら、適切に対処しようとしても、その判断に使用できる時間は非常に限られています。ですから、時間がある時に、起こりそうな緊急事態をしっかりとイメージし、その時の対処法をあらかじめ決めておく事が非常に大切なのです。例えば、交通事故にあってしまった時の対処なども、しっかりと手順を作って、それを車の中やお財布の中などに入れておけば、万が一事故を起こしてしまって、気が動転していても、早く正確に抜けなく対処できます。更に言うと、定期的に交通事故にあった場合を頭の中でイメージして、シミュレーションを行っておけば更に効果的です。私の例でいうと、私は約2年半後にISSでのミッションが計画されており、ISS滞在時には、家を6ヶ月間不在にします。その間に私の身に何かあった場合、家族に何かあった場合など色々な対処を考え始めています。そうしないと、多くの方に迷惑がかかったり、私のミッションに影響が出たりしてしまうのです。宇宙飛行士は人生の目標としてやりがいのある職業で、他の方々に夢を与えられる素晴らしい職業ではありますが、実際にやっていることは、かなり現実的な対応が多く、自分の死を含め、直視するのが不快な現実を見つめ、対応を準備するのが仕事です。

皆さんも、交通事故や自分の死などは、はっきり言ってあまり考えたくない事態とは思いますが、そのような事態こそ事前に想定しておくことが重要なのです。

話は、緊急事態のシミュレーター訓練に戻ります。

今回、私は実際のフライトとは異なり、前席(通常は機長が乗る席)で訓練を行いました。次々と発生する緊急事態に対処しながら、無事に航空機を着陸させ、滑走路上で停止させた時は、本当にホッとしました。この訓練により、私がT-38で飛行訓練を行う上での危険が更に軽減されました!「実際に起こって欲しくないことに対する準備をする」という努力をする事で、自分達の安全を獲得するのです!皆さんの場合も、「身の回りに潜む危険を見つけ出し、それに備えておく」という事は、非常に重要な事だと思います。以前にもツイッターで書きましたが、根拠なく「自分は安全だ」と考えている状態が実は一番危険で、それによって自分だけでなく、他の多くの人達を危険にさらす可能性のあることを自覚しましょう。そして、もし身近に潜む新たな危険を発見した時は、多くの人にその危険を知らせて、皆で事前に対応を考えておきましょう。人生は一度しかありません。命の危険を感じた時に、その状況を想定していなかった!となると、生き残る可能性は激減し、後悔する事になります。

今回は、少し怖い話題になってしまいましたね。でも、私の場合は、自分の死を考える所から、自分の人生の意味や生き方を見つめてきました。正直、私は自分に残された時間が有限で、本当に良かったと思っています。自分に永遠の時間があったら、正直ここまで頑張る気にはなれないですし、私達の子孫のために仕事をするという視点も生まれませんでしたから…

※写真の出典はJAXA/NASA


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