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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2014年3月14日

いま、私はロシアの「星の街」に来ています。

ちょうど日付が変わって、3月14日になりました。

ちなみに、このコラムの公開予定日も3月14日(笑)そもそも原稿の締め切りは1週間前のはずでした。

書きたてホヤホヤの情報が即日公開できるというのも、ネット社会のすごいところですね。

JAXAのHP担当者の方にはとんだ迷惑な話ですが、どうかご容赦を。

「星の街」と聞くと、それは通称であってきっと他にちゃんとした街の名前があるに違いないと思われるかもしれませんが、なんと正真正銘、ロシア語で「星の街」というのが、この小さな街の名前なのです。

モスクワから北東へ約30kmくらいの所に星の街はあります。街の端から端まで、ゆっくり歩いても15分くらいしかかからない小さな小さな街です。その街のおよそ3分の1くらいのスペースを占めるのが、「ガガーリンコスモノート訓練センター」になります。その名の通り、ロシアの宇宙飛行士の活動拠点です。

国際宇宙ステーションに長期滞在する宇宙飛行士は、国籍問わず、ここ星の街でソユーズ宇宙船と、宇宙ステーションのロシア区画に関する訓練を受けることになります。

訓練期間は、担う役割によってかなり差が出てくるのですが、先日ソユーズ宇宙船のフライトエンジニアに任命された私の場合、これから実際の搭乗までの期間の半分近くをこの街で過ごすことになります。その、いくつかのセッションに分けて実施される訓練の、最初のセッションがちょうど数時間前に終わったところで、明日は久しぶりにヒューストンに戻ることになっています。

長期間を過ごすことになるので、星の街にはNASA関連の施設もいくつかあるのですが、その中にNASAコテージと呼ばれる施設が3棟あり、私たちJAXAの宇宙飛行士も訓練中はそのコテージを間借りして、アメリカの宇宙飛行士と共に生活します。コテージとは言っても、日本人の感覚からするとれっきとした家で、リビングルームもあればキッチンもあるので、とても快適ですよ。

写真

星の街にある、NASAコテージ

私にとって、この街の唯一の難点と言えるのが、外食産業がほぼ無いに等しいという点です。レストラン、というかカフェのようなお店が1店舗あるだけです。

当然、食事は自炊が基本になります。夜は、誰か一人が作ってくれた料理をみんなで一緒に食べるというのも頻繁にあります。

普段料理をしない私にとって、これはひじょーーーーにチャレンジングです。正確に言うと、「料理ができない私にとって」と白状すべきでしょう。それなら練習すればいいじゃないかという声が聞こえてきそうですが、まあ人には得手不得手というものがあるわけでして・・・

忙しくて、なかなか料理を練習する時間も取れないと言い訳しておきましょう。

先輩飛行士の中でも野口飛行士や古川飛行士などは、なかなか料理がお上手だったようで、「ソーイチは色々と作ってくれた」ですとか、「サトシのカレーは美味しかった」などなど、肩身の狭くなるような思い出話をベテラン飛行士から聞かされることもしばしばです(汗)

かと思えば、H先輩などは私と同程度の料理スキルだったようで、H先輩と一緒にフライトしたNASAの飛行士が、「○○は日本人なのにおコメも炊けなかった。そんな日本人がいるとは思わなかった」と当時の衝撃を語っており、これにはかなり勇気付けられました。

H先輩、ありがとうございます!

余談ですが、コテージのキッチンにはいつ、どこの誰が置いていったのかわからない食材・調味料が沢山あるのですが、星の街に到着した初日、まずはお茶でも飲んで落ち着こうと思い棚を漁っていたところ、なんと緑茶のティーパックを発見。これ幸いとお湯を注いで飲もうとした時、ふとお茶の色がダークブラウンになっていることに気付きました。時間が経って茶色になっている緑茶はよく経験がありますが、お湯を注いでいる瞬間から茶色です。「あれ、ほうじ茶だったかな・・・?」と不思議に思ってパッケージを確認すると、賞味期限がなんと2010年(笑)これはと、棚や冷蔵庫の中身を改めて確認すると、他にも2年もの・3年ものがゴロゴロと。これには思わず1人で笑い転げてしまいました。

さて、ソユーズの訓練です。

私がパイロット時代に身につけた訓練に臨むに当たってのテクニックの1つに、

「とにかく先輩の話をよく聞く」

というものがあり、今回ロシアに来る前に過去に同じフライトエンジニアの訓練を受けた先輩何人かにアドバイスを聞いてみたところ、

「脅かすようですいませんが、おそらく最初からかなりの勉強量が必要で、私は受験生の頃を思い出しました」(古川飛行士談)

・・・・げ。

「It will be challenging.」(リック・マストラキオ飛行士談)

・・・・げげ!

「最初の何セッションかは、かなり大変ですよ」(油井飛行士談)

中でも極めつけだったのは、宇宙飛行士候補者訓練時代のクラスメートであり、今年夏に打ち上げを控えているリード・ワイズマン飛行士でした。

彼はアメリカでの訓練でよく一緒になったのですが、いわゆる天才タイプ、頭の回転の速さに舌を巻く事もしばしば。その彼ですら、

「最初の1年間はきつい。そこを過ぎると実践的な訓練が増えて勉強はかなり楽になるけど、とにかくそこまでは勉強が大変。週末も日曜日は1日勉強してた」

と。

これはかなり気合を入れていかないと、と気を引き締めて星の街にやってきたのが約1ヶ月前。まず最初のセッションが終わった感想ですが、確かに勉強が大変です。

毎日予習・復習、それから各システムごとにあるテストの準備で、あっという間の1ヶ月でした。それでも、皆が口を揃えて「最大のヤマ場」と話す、ソユーズの姿勢・動作制御、ナビゲーションシステムの訓練は次回以降というから驚きです。

自分の好きな分野ですから、勉強自体は楽しいのですが、いかんせん時間が1日30時間くらい欲しいという感じです。

以前、パイロットの訓練を受けていた時も、毎日勉強とフライトの準備で目の回る忙しさだったのですが、ある日、同期の部屋で訓練が大変だとぼやいていたところ、その同期が言った言葉を今でも覚えています。

「パイロットの訓練なんてたかが2,3年。これから先の長い人生の中で、朝から晩までひとつのことを考えているような、そんな時期が少しくらいあってもいいんじゃない?」

そういうポジティブな考え方があるのかと、同期ながら非常に感銘を受けたのを覚えています。その時は、「そんな時期」がまさかもう1度やってくるとは思ってもいませんでしたが、ソユーズの訓練も終わりのない訓練ではありません。星の街というこののどかな環境の中で、月並みな言葉ではありますが、これから先の訓練も頑張りたいと思います。

※写真の出典はJAXA


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