
第17詩の公募で、最終候補に残った他の方々の作品です。ご応募ありがとうございました。
光と風が流れゆく時の中に もう きみの姿はなく
乾いた想い出と傾く夕陽だけが 残照となって輝く
植物のように 太陽に向かって両手を広げてみた
だんだん だんだん 心と身体があたたまってゆく
大地がすべてを受けとめ 光をエナジーに変換するように
太陽は傾いて
空にはきれいな赤と青のグラデーション
子供達が
名残惜しそうに家路へとつく
「あ、いちばんぼ〜し〜 み〜つけた。」
お昼が済んで、芝のうえで昼寝してみた
大地からの温もりが心地よい
蟻が耳の中に迷い込んでこそばゆい
彼らにすれば、ぼくの体でさえ大地にそびえる大きな山?
まどろみながら、地球の自転の気配を感じていた
富士山から南下すると ここはマリアナ海溝
もぐってみると沈黙と暗闇の世界
私はプランクトンのように波間にたゆたう
光のさす方へ浮上し 陸にあがると
真っ白い砂浜にブーゲンビリアが咲き乱れている
丸い一つのテーブルを囲って
黒い眉毛の男の子は焼き魚を食べている
青い瞳の女の子はハムエッグを食べている
クロスのしわに窓の陽が落ちた瞬間!
床では影たちが手を繋ぎ遊んでいるよ
カレーのにおいをかぐと 思い出す風景がある
いつどこで見た風景だったのかは思い出すことができない
行ったことのない場所 会ったことのない人たち
しかし私はたしかに覚えている
きっとそこは最後に還る場所なのだろう
ざわつくお弁当の時間も移ろい 静寂が訪れる
生徒達の華奢な手に混ざり 粘土をこねる
指にからまる心地よい手触りと 思い通りにならないもどかしさ
土の中から生まれる新たな息吹
大昔から土のアートの仕上げは 偶然の神と炎が司る
窓を開け放ち
体の中まで早春の空気をいっぱいにして
ふりそそぐ日の光をあびる
凛とした風の中
梅は匂う
図書室で見つけた お気に入りの本
南極の氷 恐竜の化石 銀河のかたち
時を忘れて 何度も読み返した
もっと広くもっと遠く この世界を見てみたい
あの頃のまっすぐな思いが 今の私の原動力
いっせいに飛びたった海猫
学童たちの放った紙飛行機
潮騒 海猫たちの鳴き声
子供たちの歓声
見てごらん 飛び交っているのは光だ
君のホームランボールが吸い込まれていった2月の空
「放課後」と「草っ原」の消えた このくにから 君も飛び立っていったのか
夕陽の沈むくにから 葉書が届く
僕はグローブをかざし、走る
西の地平線をめざし、一人で。