第10回NASA極限環境ミッション運用(NEEMO)訓練現地レポート
若田宇宙飛行士は、米国フロリダ州キー・ラーゴ沖のNOAA海底研究室「アクエリアス」で訓練を行っています。現地で若田宇宙飛行士をサポートしている技術者からのレポートをお送りします。以下に登場する「Superlite-17」とは、海中で使用するヘルメット潜水器具です。ミッション中は、アクエリアス内・船外のライブカメラでリアルタイム映像を見ることができます。 7月27日(ミッション6日目)
午前中はクルー全員で交代しながら遠隔操作によるローバー(Remotely Operated Vehicle: ROV)を操作して「アクエリアス」の外観検査を行い、午後は明日(28日)の浮上に向けてアクエリアス内の片付けを行いました。また撤収に向けて、アクエリアス内を減圧し、体を一気圧に慣らすための準備を始めました。これで海底での作業は全て終わり、明日(28日)、地上に戻ります。 7月26日(ミッション5日目)若田宇宙飛行士は、午前中は船外活動を行うメンバーの支援をアクエリアス内部から行い、午後はカレン・ナイバーグ宇宙飛行士と共に船外活動を行いました。午前中の船外活動では引き続き宇宙服の重心確認試験が行われ、穴掘り、はしごの上り下り、膝をついた状態からの立ち上がり、うつ伏せからの立ち上がり、石拾いといった作業が行われました。若田宇宙飛行士が実施した午後の船外活動では、月面探査の際に必要となるマッピング(地図作り)作業を行いました。 7月25日(ミッション4日目)若田宇宙飛行士は、午前中はアンドリュー・フューステル宇宙飛行士とともに船外活動を行い、火星の重力(3/8G)を模擬した宇宙服の重心確認試験を実施しました。内容は、穴掘りをしたり、はしごの上り下りをしたり、小走りになったり、火星でジャンプするとどれくらい高く飛べるかなどを確認したりといったものです。午後は、「アクエリアス」内のクルーによる遠隔操作で動くROVとともに、海底にあるマーカー(目印)を探すという協調作業を実施しました。 7月24日(ミッション3日目)若田宇宙飛行士は、午前中は船外活動を行うメンバーの支援をアクエリアス内部から行い、午後はカレン・ナイバーグ宇宙飛行士と共に船外活動を行いました。この船外活動では、最も作業性の良い宇宙服の重心位置を確認することを目的として、おもりを入れるポケットの付いた「つなぎ」をウェットスーツの上に着用し、背中には重心位置を確認するための金属製フレームを装着しました。そして、今後月を探査する際に必要となる、マッピング(地図を作る)作業のための活動を行いました。 7月22日(ミッション1日目)若田宇宙飛行士ら第10回NEEMO訓練メンバーは、22日朝、「アクエリアス」に到着し、訓練を開始しました。午後には若田宇宙飛行士とフューステル宇宙飛行士がSuperlite-17を用いてアクエリアス船外での第1回目の船外活動を行いました。 7月20日(潜水2日前)
若田宇宙飛行士は、アクエリアスに実際に入って中の様子を確認し、Superlite-17を使用した最終訓練を行いました。また、ROVからNASAジョンソン宇宙センター(JSC)にあるミッションコントロールセンター(MCC)へのデータ転送方法についての訓練も実施しました。 本日をもって若田宇宙飛行士の地上における全ての事前訓練は終了し、NEEMO訓練への準備が整いました。 7月19日(潜水3日前)若田宇宙飛行士は、「アクエリアス」でのSuperlite-17を用いた月面・火星探査を想定した訓練の準備のため、アクエリアス近郊の水深10m程度の海底にてSuperlite-17を装着した事前訓練を実施しました。潜水訓練後はROVの操作訓練として、実際に使用するROVを使用してカメラ操作方法、動かし方、注意事項などについて訓練を実施しました。 7月18日(潜水4日前)
若田宇宙飛行士は、一緒に潜水する潜水技術者から「アクエリアス」の設備についての説明やSuperlite-17などについて訓練を受けました。また海中で遭遇する可能性のある海中生物(エイなど)についてどのように注意するべきかなどの説明も受けました。 訓練写真集実施イベント交信イベント「くんれん中の若田宇宙飛行士と話そう」
日本時間7月27日午前9時から40分間、「アクエリアス」の若田宇宙飛行士は、電話回線を通じて、さいたま市青少年宇宙科学館に集まった地元の小中学生160名との交信イベントに臨みました。 若田宇宙飛行士は、訓練の様子や感想、自身の今後の目標など、会場からの質問に対してひとつひとつ丁寧に答え、今後予定されている「きぼう」日本実験棟の組立て・運用ミッションなど宇宙活動に関することや、イベント参加への感謝など心のこもったメッセージを参加者に送りました。 共同インタビュー
日本時間7月25日、「アクエリアス」の若田宇宙飛行士は、電話回線を通じて共同インタビューを行いました。JAXA東京事務所に集まった記者からの質問に対して、海底での一連の作業が自身が経験した宇宙飛行に似ていること、チームをまとめるコマンダーとして非常に貴重な経験を積んでいることなどを答えました。 NEEMO訓練概要
NASA極限環境ミッション運用(NASA Extreme Environment Mission Operations: NEEMO)訓練は、米国フロリダ州沖合の海底約20mに設置した米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration: NOAA)の「アクエリアス」と呼ばれる閉鎖施設内で生活を行い、リーダーシップやチームワーク、自己管理等の能力を向上させることを目的に、他の長期滞在訓練をさらに発展させた訓練です。これまでに9回のNEEMO訓練が行われています。 第10回NEEMO訓練は、米国時間7月22日から28日にかけて行われ、若田宇宙飛行士がコマンダーとして参加します。コマンダーは、チームのリーダーとして、訓練の指揮・取りまとめを行います。
訓練では、月・火星探査で使用するための次世代宇宙服開発関連の試験などを行います。アポロ時代の経験から宇宙服のどこに重心を持ってくるかが、今後の月面・火星探査の船外活動で重要となることから、重心位置を変えることができるバックパックを背中に装着し、歩行、ジョギング、採掘、採集、転倒からの回復などの運用性試験を行います。また、遠隔操作によるローバー(Remotely Operated Vehicle: ROV)を使用した構造物の建設、通信や航法の技術確認を行う予定です。
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最終更新日:2006年7月28日
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