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宇宙環境がラットの補酵素NAD代謝に及ぼす影響

研究者柴田克己(教授)
研究機関滋賀県立大学人間文化学部
生活文化学科食生活専攻

研究概要
ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は約500種類の酵素(生体内で物質代謝に関与する)の補酵素(補酵素:酵素がタンパク質の他に低分子の有機化合物を持つ場合、その化合物をいう。)として機能しています。さらに、損傷を受けたDNAの修復やエネルギーの源となるATP(アデノシン5 ’-三リン酸)の生産にも必須な化合物であり、生体内代謝の最重要物質といえます。

そのため哺乳動物では、肝臓によってアミノ酸のトリプトファン(必須アミノ酸として、生体内でインドール・セロトニン・ニコチン酸などの生成に関与する生理上重要な物質)からつくられ全身に供給しているので、NADが不足する可能性は少なくなっています。しかし、きわめて強いエネルギーを持つ放射線を長時間浴びると、トリプトファンから生合成される以上のNADが消費されるために、肝臓と血液中のNAD含量が低下してきます。

今までの研究により、NAD定量方法を改良し、ラットの種々の組織・臓器中のNAD含量およびヒトの血液中NAD含量も測定し、含量が低下した状態で適量のビタミンB複合体の一つであるナイアシン(ニコチン酸)を服用することが、宇宙環境下での健康維持に重要となることが分かっています。

今回は宇宙環境下でナイアシンの必要量がどの程度高まるかを明らかにする基礎データを取得するため、地上での対照ラットと宇宙環境に曝されたラットの肝臓中のNAD含量を測定することにより、含量の低下がどの程度かを調べます。

またそれにより、宇宙環境下での最適ナイアシン量を推定し、13種類のビタミン必要量をすべて明確にする実験に発展させ、宇宙飛行士の健康維持のために必要なビタミン量を明らかにします。



最終更新日:2002年12月11日

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