研究者 | : | 田之倉
優(教授) |
研究機関 | : | 東京大学大学院農学生命科学研究科 |
| 実験内容 |
生命現象において中心的な存在であるタンパク質は、ヒトでは3 万種類にも上るといわれており、それら一つひとつがきちんと決まった構造を成しています。その立体構造に基づいて、まるで鍵と鍵穴の関係のようにタンパク質同士は相互作用し、その機能を発揮しています。つまり、生命現象を理解するにはタンパク質の機能と構造を合わせて把握することが非常に重要といえます。
本研究では、さまざまなタンパク質のうち、体に有害な活性酸素から細胞を保護する役割などをもつと考えられているニトロ還元酵素(NfsB
)の高品質結晶化により詳細な構造解析を行い、そのはたらきについて解明します。
このニトロ還元酵素NfsB は、ガンの薬物治療への応用研究も活発に行われています。例えば、ガン細胞に特異的な抗体にニトロ還元酵素を結合させておき、ニトロ化合物のプロドラッグ(そのままの形では不活性であるが、生体内で化学的変化を受けて初めて活性を示すようになる薬物のこと)を投与すると、ガン細胞のみが、活性化され毒性を持ったプロドラッグにより除去される仕組みなどがあります。
本研究の成果は、こうした仕組みの効率化などにも役立てることができます。
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水色が酵素本体である。補酵素であるFMN
が電子供与体であるNADH から2 電子を受け取り、それをニトロ化合物に渡して還元する |
ニトロ還元酵素NfsB
の結晶と立体構造 | NfsB の反応モデル |