MAXIがまた明るいブラックホールX線新星を発見!〜MAXI J1348-630は典型的なブラックホールX線新星〜

公開 2020年10月19日
理化学研究所、JAXAを中心とするMAXIチームは、国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟船外実験プラットフォームに搭載されている全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image:MAXI)を用いて、ブラックホールX線連星MAXI J1348-630(以下、J1348)を発見しました。
その観測成果をまとめた論文が米国天体物理学専門誌「アストロフィジカルジャーナルレター」に掲載されました。(掲載論文

ブラックホールX線新星は、いつどこで出現するか予想することができないため、MAXIは常時全天を見張り、24時間体制でチームメンバーが交代で天体探査当番に就いています。その当番メンバーがいち早く国際天文電報(The Astronomer's Telegram)へ新天体の発見を報告することで、MAXIの名前がついた天体として認められます。MAXIは2009年以降の11年間に14個の新しいブラックホールを発見してきました。2017年9月から2019年1月の約1年半の間はMAXIにとって非常に忙しい期間で、MAXI J1535-571[注1]、MAXI J1820+070[注2]、そして今回報告したJ1348という、14個の中でもトップ3の明るいブラックホールを立て続けに見つけました。

J1348は2019年1月26日に発見され、その特徴についてまとめたのが今回の論文です。本研究では発見後半年間に渡るMAXIの観測データを主に使用し、天体の光度変動、スペクトル変動を解析することでJ1348の振る舞いを調べました。J1348はかすかな明るさで見つかりましたが、急速に明るさを増し14日目には発見時のおよそ100倍まで明るくなりました。その後は急激に暗くなっていき、130日後に再び少し明るくなった後、消失しました。図1はX線光度曲線と疑似カラー画像を示します。この間にX線のスペクトルは大きく変化し、高エネルギーX線が多い状態(青色)と低エネルギーX線が多い状態(赤色)の間を移り変わっています。これは一般的に見られるブラックホールX線新星の特徴に一致します。低エネルギーX線が多い状態ではブラックホールの最小安定軌道まで降着円盤が形成されていると考えられます。

MAXIや米国のガンマ線バースト観測衛星(Swift:スウィフト)のエネルギースペクトルを調べた結果、J1348の降着円盤は、明るさの割に低い温度で光っていることがわかりました。J1348の質量は太陽の約7倍より重く、その正体はブラックホールであると判明しました。ブラックホールのサイズが小さい場合は、狭い領域に吸い込まれる直前の物質が集められ、高速回転により生じる物質同士の摩擦熱で温度が上昇します。J1348の降着円盤の温度はやや低いため、J1348は比較的大きいブラックホールであると結論付けました。明るかった原因は、J1348が地球から近い距離にあるためと考えられます。

J1348はこれまでよく知られていた典型的なブラックホールX線新星の描像に当てはまる天体でした。一方で、この論文に使ったデータ以降に繰り返し弱い活動を示すという珍しい特徴も見せています。MAXIでの発見以降、多数の観測衛星や地上望遠鏡がJ1348を観測していますが、本研究で得られた全体像に基づいて、状態遷移の過程など様々な現象のより詳細な研究が行われています。

図1:MAXI J1348-630の観測波長域ごとの光度変動(1,2,4段目)、波長ごとの強度比(3段目)と、擬似カラー(赤:2-4keV、緑:4-8keV、青:8-20keV)による観測イメージ図(最下段の写真)。青(高エネルギーX線が比較的多い状態)から赤(低エネルギーX線が比較的多い状態)へ、そして再び青へ遷移する様子がわかります。
ブラックホールX線新星

通常は非常に暗く検出できないが、ある時急激にX線で爆発的な増光現象を示し、その後ゆっくりと減光していき、再び消えていく天体。ブラックホールと普通の恒星がお互いの周りを回っている連星系だと考えられています。

論文情報

雑誌名
Astrophysical Journal Letters
論文名
著者名
富永愛侑(宇宙航空研究開発機構)、中平聡志(宇宙航空研究開発機構)、志達めぐみ(愛媛大学)、大枝幹(東京工業大学)、海老沢研(宇宙航空研究開発機構)、菅原泰晴(宇宙航空研究開発機構)、根来均(日本大学)、河合誠之(東京工業大学)、杉崎睦(中国科学院国家天文台)、上田佳宏(京都大学)、三原建弘(理化学研究所)
掲載日:
2020年8月13日
DOI
10.3847/2041-8213/abaaaa

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