世界初!地上で実現することが極めて難しい高融点酸化物の浮遊・溶融に成功!~静電浮遊炉利用実験:Fragility~

公開 2020年3月 5日

2020年2月、国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟に設置された唯一無二の静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace:ELF) を用い、『新奇機能性非平衡酸化物創製に向けた高温酸化物融体のフラジリティーの起源の解明(Fragility)【代表研究者:小原真司(物質・材料研究機構 主幹研究員)】』テーマの宇宙実験を実施しました。微小重力下において地上で実現することが極めて困難な高融点酸化物(La2O3-Nb2O5系)の浮遊・溶融に成功し、これまでにない精密な密度の導出に必要な実験データを得ることができました。この実験の成功は世界初です。

今回の実験で使用したLa2O3-Nb2O5系のガラスは、広い光透過性、高屈折率、高弾性率、高誘電率、高破壊耐性など、これまでのガラスとは一線を画する優れた特性を有しており、革新的な機能を発現する新材料の開発につながることが期待されます。
本実験は、「きぼう」の静電浮遊炉を用いて、高温液体、とりわけ波及効果が高く、静電浮遊炉でしか測定できない酸化物の物性を精密測定することを目的とします。宇宙実験の測定結果と地上の設備で測定する構造データを計算機シミュレーションで解析し、データ科学の援用により、新しい学理創製、新奇ガラス材料などの非平衡材料創製へのフィードバックを世界にさきがけて行うことを目標としています。

図1 溶融した試料

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図1に溶融した試料の写真を示します。静電浮遊炉ではレーザを使用して試料を加熱し、溶融させます。試料の周囲には、試料の位置を制御するために試料に高電圧(最大3kV)をかける電極があります。ISSは重力がほぼない微小重力環境にあるため、溶融した試料は真球になります。図1の試料は2,300℃程度の超高温になっています。このように静電浮遊炉では、融点の高い試料を溶融させることができます。
図2 試料冷却時の温度履歴
図2に試料の冷却時の温度履歴を示します。試料を加熱しているレーザをOFFにすることで試料が急冷されます(1. 冷却開始)。通常の容器がある状態では、溶融した試料は融点で凝固しますが、静電浮遊炉では容器を使用していないため、試料が溶融した状態を保ったまま融点以下まで冷却されます。これを過冷却と言います(2. 過冷却)。今回は500℃程度の大きな過冷却を実現できていることがわかります。このような大きな過冷却を実現できる点が静電浮遊炉の特徴の一つです。その後、試料の温度は融点まで上昇して、試料は凝固します(3. 融点への復熱)。

Fragilityテーマでは今後は引き続き、高融点酸化物の他の組成や、地球のマントルの構成物質である珪酸マグネシウムを対象とした宇宙実験を実施する予定です。

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