MPLM (1号機のレオナルド)
(写真:NASA KSC HP) |
ISSにMPLMを取り付けた状態 (Lockheed Martin社HPより)
(注:7A.1フライト時には、まだDC-1は取り付けられていません。) |
多目的補給モジュール(MPLM:Multi-Purpose Logistics Module)は、イタリア宇宙機関(ASI)が開発(製造はAlenia
Aerospazio社)した与圧補給品をISSへ運ぶ輸送モジュールであり、3機開発されています。それぞれ、「レオナルド」、「ラファエロ」、「ドナテロ」という愛称が付けられています。今回飛行するのは、1号機の「レオナルド」で、5A.1に続いて2回目の飛行です。
MPLMは、シャトルのペイロードベイ(貨物室)に乗せて打ち上げられ、ロボットアームでISSのユニティの下側の共通結合機構(CBM:Common
berthing mechanism)に結合して、クルーがラックや補給品を搬入/搬出します。作業終了後は、CBM機構を外して再びシャトルのペイロードベイ(貨物室)に積み込み地球へ帰還します。
MPLMの全長は6.6m、外部直径は4.5m、内容積76.4m3(ラック搭載時の内部容積は31.1m3)、自重4,077kg(9,000lb)、ラックなど最大5tの貨物を搭載することができます。このMPLMは、25回の飛行が可能な設計となっており、年間4~5回のミッションが予定されています。
MPLM内には、最大16台のラックを搭載することができます。このうち、最大5台のラックに電力供給が可能であり、(食品や実験試料を運ぶための)冷凍冷蔵庫ラック等の打ち上げ時には電力供給を行う予定です。(注:冷凍冷蔵庫は当面使用する予定はありません。)
- 搭載ラック概要
7A.1では、MPLMにEXPRESSラック2台、RSR 6台、RSP 4台の計12台のラックが搭載されていますが、デスティニーへ運ばれるラックは、EXPRESSラックのみです。
また、MPLM内の保管ラックの中にも、各種機器が搭載されて打ち上げられます。保管ラックはそのまま地球に戻されますが、内部の機器や補給品はISS内に搬入されます。
以下に、7A.1で搭載される機器および物資について示します。
-
EXPRESSラック(写真:NASA) |
EXPRESSラック
EXPRESS(Expedite the Processing of Experiment to the Space Station)ラックは、実験ラック(ISPR)の一種であり、宇宙実験までの準備期間を短縮すると共に、インテグレーション作業を軽減するためにNASA
マーシャル宇宙飛行センター(MSFC)とボーイング社により開発されたラックです。
6Aフライトでは、2台のEXPRESSラック(EXPRESS-#1,#2)がMPLMで運ばれ、デスティニーに設置されました。7A.1フライトでは、さらに2台(EXPRESS-#4,#5)が運ばれる予定です。また、この後も、UF-2,
UF-5(2台), UF-6フライトなどで運ばれる予定になっています。
EXPRESSラックは、実験装置に対して、電力、通信、真空排気、窒素ガス、冷却、および機械的な取り付けインタフェースを提供します。
- 保管ラックなど
7A.1フライトでは、MPLM内に保管ラック(RSR:Resupply Stowage Rack) 6台と保管プラットフォーム(RSP:Resupply
Stowage Platform)4台が搭載されて打上げられます。運搬する物資は、クルーが運び出しやすいようにCTB(Crew
Transfer Bag)と呼ばれる布製のバックに詰め込まれてRSP, RSRに搭載されています。
- 補給品保管ラック:RSR (Resupply Stowage Rack)
RSRは、様々な補給品をISSに打ち上げる際に使用されるラックであり、補給品のみをISSに搬入し、RSR自体はMPLMに搭載したまま回収されます。
-
MPLMに搭載したRSP (5A.1帰還後)
(写真:NASA KSC HPより) |
RSP (斜め前面から見た状態)
(写真:グレン研究センター HPより) |
補給品保管プラットフォーム:RSP (Resupply Stowage Platform)
RSPは、主に大型でかさばる荷物をバッグに収納してISSに運搬する際に使用されます。RSPのフロントパネル側にも、はみ出す形で荷物を搭載することができます。RSP自体はMPLMに搭載したまま回収されます。
RSPは、打ち上げ/再突入時の負荷に耐えるようバッグの周りをフェンスで覆っています。このフェンスは、バッグを取り出した後は、折り畳むことができます。なお、RSPも通常のラックと同様に前面に傾けることができます。
RSPには、最大227kgの荷物を搭載できます。RSP自体の重量は81kgです。
7A.1では、RSR, RSPに次のような機器を搭載して打ち上げます。
- 必要不可欠な予備品
- BMRRM(Bearing Motor Roll Ring Module)
- 実験装置
- OIH(EVA工具:軌道上取付型ハンドレール)11個
- LiOHキャニスター(シャトル用)14個
- 食料品、服、タオル、ナプキン、CHeCS機器など
- CrewのTemporary Sleep station(3人目のクルー用でデスティニー内の空のラックで使用します。)
船外機器キャリア(ICC:Integrated
Cargo Carrier)
(写真:SPACEHAB社) |
ICC(Integrated Cargo Carrier)は、船外に取り付ける機器をスペースシャトルで輸送する際に使用されるキャリアであり、スペースハブ社が開発(インテグレーション)しました。ICCには、最大で約6,000ポンド(約
2,700kg)の荷物を搭載することができます。
ICCは、板状のUCP(Unpressurized Cargo Pallet)と、U字型のKYA(Keel Yoke
Assembly)の2つの要素から構成されています。UCPは、ロシアのRSC-Energia社が製造し、KYAは、ヨーロッパのAstrium
GmbH社が製造しました。
7A.1では、以下の装置がICC上に固定されて打ち上げられ、船外活動でISSに設置されます。
- 初期アンモニア充填装置(EAS:Early Ammonia Servicer) : 1基
- MISSE PEC(Materials ISS Experiment Passive Experiment Container) :
2個
-
ICCに搭載されたEAS(Early Ammonia Servicer)
(写真:NASA KSC HP) |
初期アンモニア充填装置(EAS:Early Ammonia Servicer)
初期アンモニア充填装置(EAS)は、12A.1フライト後に外部能動熱制御システム(ETCS)が起動されるまでの間、初期外部能動熱制御システム(EETCS)及び太陽電池熱制御システム(PVTCS)の冷媒であるアンモニアを緊急時に軌道上で充填する装置で、重量は約634kgあります。EASには、約136kgの無水アンモニアが搭載され、船外活動でP6トラスへ取り付けた後、2本のヒータケーブルを接続し、保温用の電力を供給します。
EASは、13A.1フライト後に行われる予定のP6トラス移設までに取り外す必要があるため、13A.1フライトで回収される予定です。
-
|
|
|
MISSEのPEC(写真:NASA LaRC) |
MISSEの設置イメージ(写真:NASA
LaRC) |
MISSE(Materials ISS Experiment)
ICCには、材料曝露実験装置であるMISSEを収納する容器であるPEC(Passive Experiment Container)2個が搭載されます。
PECは、250種類ものMISSEサンプル(塗料などのコーティング材、潤滑材、太陽電池、光学部品、大型のアンテナやソーラーセイルに使うための膜材料など)を収納するスーツケースのような容器であり、船外活動でISSに取り付けた後、容器を開いて内部に設置したMISSEサンプルを宇宙空間の紫外線や原子状酸素に曝露させます。
今回使用されるPEC2個は、再フライト品であり、MEEP(Mir Environmental Effects Payload)という名称でミールの外部に設置されていました。(STS-76で設置し、18ヶ月後にSTS-86で回収しました。)
MISSEは、NASAラングレー研究センター(LaRC)のプロジェクトであり、将来の人工衛星で使う可能性がある材料を曝露試験することで開発リスクを低減させたり、費用を低減させる狙いを持っており、NASA
JSC(ジョンソン宇宙センタ)、MSFC(マーシャル宇宙飛行センタ)、GRC(グレン研究センター)、空軍研究ラボ、ボーイング社のファントムワークスがこのプロジェクトに参加しています。
PECは、エアロック「クエスト」の先端とHPGTのハンドレールに各1個づつ取り付けて約1年間、宇宙環境に曝露させた後、回収される予定です。
|