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ミッション結果の要約


飛行目的
 スペースシャトル「ディスカバリー号」によるSTS-102ミッション(5A.1フライト)は、国際宇宙ステーション(ISS)組立ての11回目のミッションであり、スペースシャトルによるものとしては8回目になります。
 この飛行は
  • ISSに4ヶ月半滞在していた第1次長期滞在クルーを第2次長期滞在クルーと交代させる。
  • イタリア宇宙庁が開発した多目的補給モジュール(MPLM)にシステムラックやISS初の実験ラックを搭載して輸送し、これらのラックを前回のフライトでISSに取り付けた米国の実験棟デスティニー内部に設置する。
  • 2回の船外活動を実施して、次の6Aフライトで輸送するカナダ製のロボットアームを取り付けるための準備およびその他の作業を実施する。
 などを目的とするミッションです。


実施結果
 このフライトによりISSは次のように変化しました。
  1. システムラックが追加されることにより、デスティニーが本格的に起動され、実験室として十分な機能が発揮できるようになりました。
  2. 初の実験装置のラックが搬入され、ISSでの本格的な実験が開始されることになりました。
  3. 第1次長期滞在クルーと第2次長期滞在クルーが交代しました。ISSとシャトル間のハッチを閉鎖する直前に、ISSコマンダーの公式な引継が行われ、ISSは第2次長期滞在クルーのコマンダーである、ユーリー・ウサチェフの権限下に入りました。
     第1次長期滞在クルーはISSで136日間を、そして打上げから帰還までの141日間を宇宙で過ごしたことになります。
  4. Kuバンドが使えるようになり、カメラの画像や大量の実験データをリアルタイムで地上に送信することができるようになりました。
  5. 次の6AフライトでISSにロボットアームを取り付け、起動するための準備が整いました。
  6. ISSの外部に設置して使用する機器の保管場所(ESP)が、ISSの外部に用意されました。
  7. NASDAの開発した中性子モニタ装置BBND (Bonner Ball Neutron Detector)が搬入され、約7ヶ月にわたり中性子観測が行われることとなりました。


飛行概要
 飛行の概略は以下のとおりです。(明示のない時間は米国中部標準時間です。)
詳細はステータスレポートをご覧下さい。

  1. 打上げと帰還日時
    打上げ2001年3月8日午前6時42分(米国東部標準時間)(打上げ地時刻)
    (日本時間3月8日午後8時42分)
    帰還2001年3月21日午前2時31分(米国東部標準時間)(帰還地時刻)
    (日本時間3月21日午後4時31分)
    総飛行時間12日19時間49分


  2. ISSとのドッキングおよびアンドッキング日時
    ドッキング2001年3月10日午前0時38分(日本時間3月10日 午後3時38分)
    アンドッキング2001年3月18日午後10時32分(日本時間3月19日午後1時32分)
    ドッキング期間8日21時間54分


  3. 船外活動(EVA)
    この飛行では中1日をおいて2回の船外活動が行われました。
    第1回船外活動(飛行4日目)
    開始時刻2001年3月10日午後11時12分(日本時間3月11日午後2時12分)
    終了時刻2001年3月11日午前8時8分(日本時間3月11日午後11時8分)
    作業時間8時間56分
    作業者スーザン・ヘルムズ、ジム・ヴォス
    作業内容
    1. PMA-3を移設してレオナルドを取り付ける場所を確保するための準備作業として、PMA-3の配線の取り外し
    2. 同、ユニティの左舷の結合機構(CBM)の所に取り付けてあった初期通信システム用アンテナの取り外し
    3. 配線トレー(RU)のデスティニーへの取り付け
    4. カナダ製のロボットアームを次のフライトで取り付けるための結合機構(LCA)のデスティニーへの取り付け
    5. シャトルのロボットアームによるPMA-3移設時にトラブルが発生した場合に支援するための待機(エアロック内で待機)
    第2回船外活動(飛行6日目)
    開始時刻2001年3月12日午後11時23分(日本時間3月13日午後2時23分)
    終了時刻2001年3月13日午前5時44分(日本時間3月13日午後8時44分)
    作業時間6時間21分
    作業者ポール・リチャーズ、アンディ・トーマス
    作業内容
    1. デスティニーへの船外保管プラットフォーム(ESP)の取り付け
    2. ESPへのアンモニアポンプ(PFCS)予備品の取り付け(保管)
    3. 電力系統の切り替え作業
    4. 配線トレー(RU)の配線接続(第1回船外活動で延期された作業)
    5. LCAの点検
    6. P6トラスの太陽電池パドルの掛け金の固定(修理作業)
    7. ユニティのヒータ配線のコネクタ接続部の点検(故障原因の絞り込みのため)
    8. プラズマ測定装置(FPP)の点検
    9. 写真撮影(デスティニーの排気口、ズヴェズダの太陽電池パドルなど)


  4. 船内活動
     2000年の11月から常駐していたISSの第1次長期滞在クルー3名と、STS-102で到着した第2次長期滞在クルー3名、それにディスカバリー号のクルー4名はおおよそ次のような作業を行いました。

    • 第1次長期滞在クルーと第2次長期滞在クルーの引継
    • 多目的補給モジュール「レオナルド」のユニティへの取り付け
    • レオナルドからISSへの約4.5トンの機材や物品の搬入
    • 不要となった機材やゴミなど約1.2トンのレオナルドへの積み込み
    • レオナルドの取り外しとディスカバリー号のペイロードベイ(貨物室)への回収
    • レオナルドから搬入したシステムラックおよび実験ラックのデスティニー内への設置および起動


  5. リブースト(軌道高度を上昇させる軌道制御)
     リブーストとは軌道高度を上昇させるための軌道制御のことです。ISSは、空気抵抗で高度が日々下がります。そこで、その次の便が到着するまでの高度低下を見込んで、スペースシャトルをISSから分離する前にISSの軌道高度を予め上昇させて軌道制御を実施しています。STS-102ではリブーストを次のように実施しました。

    実施日(米国中部標準時間)上昇高度
    飛行 7日目(3月14日)2.5マイル(約4km)
    飛行 9日目(3月16日)     2.5マイル(約4km)
    飛行10日目(3月17日)2マイル(約3.2km)


不具合など
 STS-102のミッション期間中にいくつかのハプニングがありました。
  1. スペースシャトルとISSのドッキングの遅れ
     スペースシャトルがドッキングする際のスラスタの噴射の力でISSの太陽電池パドルが力を受けて損傷しないようにパドルの向きをドッキングの前に変更し、固定することになっています。向きを変更したパドルをP6トラス上でしっかりと固定するのに手間取ったため、ドッキングが約1時間遅れることとなりました。

  2. 船外活動中のトラブル
     第1回目の船外活動を開始してまもなく、ヒドラジン検知機のバッグを浮遊させてしまいましたが、運良く捕まえることができ事なきを得ました。

     そのあと、ロボットアームの先端に持ち運び可能な足場を取り付けるための機材(PAD)を浮遊させてしまい、これは宇宙空間に放出してしまいました。ISS外部の保管箱に保管してあった予備品を利用しましたが、これを探すのに時間がかかるなど50分程の遅れをきたしました。
     このPADとISSとの衝突の可能性をなるべく排除するために、リブースト(軌道を上昇させる)制御を予定よりも早めて実施する措置が取られましたが、その後の解析により、そこまで心配することはなかったことが判明しています。

     また与圧結合アダプタ(PMA-3)の配線を取り外すのに予想よりも力を入れなければならなかったというトラブルもありました。

  3. 多目的補給モジュールMPLM「レオナルド」起動時のトラブル
     MPLMを起動しようとしたところ、電力系のジャンパーケーブルが接続されておらず、このケーブルがMPLM内にあることが判ったので、本来は起動されて空気の循環が始まってから入室すべきMPLMに入って取り出し、やっと起動できました。

  4. 冷却水の凍結
     スペースシャトルのラジエータの温度が下がり過ぎて冷却水が凍結するという状況が発生しました。発熱量を上げてこの事態に対応するために、主コンピュータ(GPC-2、4)2台を急遽起動し、90分後には凍結は解消してこの問題は解決しました。

  5. 主コンピュータソフトウエア障害の可能性
     ところが、上記GPC起動時に主コンピュータのソフトウエアが破壊された可能性があるとの指摘があり、ソフトウエアの確認が必要な事態となりました。GPC起動時にはデータレコーダ(MMU)に負荷をかけ過ぎないように、2台目のGPCは10秒の間隔を開けてから起動すべきところを、この注意事項をフライトコントローラがシャトルのクルーに知らせなかったため、6秒の間隔で起動されたのです。結局この10秒ルールには余裕があり、6秒でも問題はないとされましたが、念のためソフトウエアの状態を確認するプログラムを作動させて、問題のないことを確認しました。

  6. 多目的補給モジュールMPLM「レオナルド」への通路部減圧時のリーク
     MPLMをISSから取り外してシャトルのペイロードベイ(貨物室)に収納する作業を行うためには、MPLMとISSとの間の通路部を減圧する必要があります。通路部の均圧バルブに真空ホースを接続してバルブを開くことにより、通路部が減圧されるのですが、この作業中に、下降を続けていたこの通路部の気圧が高くなるという状況が生じました。ジム・ヴォスがホースの接続部のゆるみに気付きこれを締め付けた結果、この問題は解決しました。(5),(6)のトラブルによりMPLMのISSからの取り外しは予定より5時間遅れることになりました。

  7. その他、ドッキング期間が1日間延長されました。これは補給モジュール「レオナルド」で地上に持ち帰る物品を、レオナルド内にどのように配置して搭載するかの解析に予定よりも時間を必要としたためです。


最終更新日:2001年 3月 28日

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