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P6トラス

太陽電池パドル機構 制御機器アセンブリ ロングスペーサ



ペイロードベイ(貨物室)内でのP6トラス
 P6トラスは、太陽光を電力に変換し、蓄え、電圧を安定に保ち、そして電力をISS各部へ供給するなどの機能を果します。

 P6トラスは、P6発電モジュール(P6)、電力を蓄えるバッテリーや電力をコントロールする関連電子機器とその冷却システムから成る制御機器アセンブリ(Integrated Equipment Assembly:IEA)、そしてロングスペーサ(Long Spacer:LS)から構成されます。 ロングスペーサはこれら全てを支える支柱としての役割を果すと共に、将来5Aフライトで米国実験棟が取付けられたとき、初期の段階でその冷却システムとしての役割も果します。
 P6発電モジュールは2つの太陽電池パドル機構(Photovoltaic Array Assembly:PVAA)から成ります。
 なお、P6トラスという名称は、ISSの左舷(Port Side)の6番目のトラスという意味です。


P6トラス主要緒元
P6トラスサイズ
(スペースシャトルペイロードベイ(貨物室)収容時)
4.9m×4.9m×14.9m
P6トラス重量17トン
太陽電池パドルサイズ(両翼展開時)約240フィート×38フィート(約73m×11.6m)
発電電力(最大)約64kw

P6トラス構造



太陽電池パドル
1.太陽電池パドル機構(PVAA)
 太陽電池パドル機構(PVAA)は、マストに取り付けられた大きな太陽電池パドル(Solar Array Wing:SAW)、ベータ・ジンバル・アセンブリ(Beta Gimbal Assembly:BGA)、マスト収納容器(キャニスタ)から構成されます。これが2セットありP6トラスの最上部に位置しています。


1.1 太陽電池パドル(SAW)
 太陽電池パドル(SAW)はマストをはさんで太陽電池ブランケット2枚で構成されています(すなわち、P6トラスは太陽電池ブランケット4枚からなる)。打上げ時には、各太陽電池ブランケットは折畳まれて収納箱(Solar Array Blanket Box:SABB)に収納されています。太陽電池ブランケットを伸展するマストは折畳まれて容器(キャニスタ)に収納されており、マストが伸展されると太陽電池ブランケットもSABBから一緒に引き出されます。

 2つのSAWはP6トラスを挟んで互いに反対方向に伸展し、伸展が完了するとP6トラスの両側に太陽電池パドルが展開された形となります。

 1枚のSAWは伸展すると長さ約110フィート(約33.5m)、幅約38フィート(約11.6m)で、P6トラスをはさむ2枚のSAWの端から端の長さは約240フィート(約73m)となります。各太陽電池パドルは宇宙で展開された構造物では最大のものとなります。

 SAWの重量は約2,400ポンド(約1,089kg)で、8cm四方の太陽電池セル32,800枚と、4,100個のダイオードから構成され、約32kwの発電能力があります。STS-97ミッションでは2セットのSAWを取り付けるので合計約64kwの発電能力が追加されることになります。

1.2 ベータ・ジンバル・アセンブリ(BGA)
 ベータ・ジンバル・アセンブリ(BGA)は、マスト伸展機構(Bearing, Motor and Roll Ring Module:BMRRM)、制御装置(Electronic Control Unit:ECU)から構成されます。


1.3 マスト収納容器(キャニスタ)
 マストはアルミニウム、ステンレススチール、グラスファイバーなどの素材を組み合わせて作られており、筒状の収納容器(マストキャニスタ)に折畳んで収納されています。伸展すると断面が正方形で1辺が77cm、長さが約33.5mの骨組構造となります。
 マスト収納容器(キャニスタ)はマストを伸展して太陽電池パドルを広げたり、逆にマストを再収納して太陽電池パドルを畳んだりするとともに、パドル全体を長軸周りに回転させる機能を有しています。

マスト
マスト収納容器


2.制御機器アセンブリ(IEA)
 制御機器アセンブリ(Integrated Equipment Assembly:IEA)は電力を蓄え、電圧を安定化し、電力をISS各部に供給する機能を果します。
  IEAは電力制御システム、熱制御システム(Photovoltaic Thermal Control System:PVTCS)、コンピュータから構成されています。これらの装置は2セットあり、IEAの上部デッキと下部デッキに収納されています。上部デッキの上には太陽電池パドル機構(PVAA)が、また下部デッキの下にはロングスペーサ(LS)が取付けられています。

2.1 電力制御システム
 電力制御システムは電力供給を行う直流切替器(Direct Current Switching Unit:DCSU)、直列シャントユニット(SSU)で一次的に安定化された電力をさらに安定化する直流変圧器(Direct Current to Direct Current Control Unit:DDCU)、そして蓄電システムから構成されています。

2.1.1 直流切替器(DCSU)
 DCSUは、ISSの主たる電力供給源です。太陽電池パドル機構で発電された電力は直流切替器(DCSU)に送電されます。DCSUは高電力を取扱う装置で、複数の経路を持つ遠隔操作可能な装置であり、制御機器アセンブリ(IEA)内部で消費する電力を供給したり異常時に回路を保護する機能も備えています。

 DCSUは日照時(軌道上の昼間)には太陽電池パドル機構(PVAA)からの電力を直接主電源としてISSに供給すると共に、バッテリーへの充電も行います。日陰(軌道上の夜間)ではバッテリーから電力を供給します。DCSUからの電力は直流変圧器(DDCU)にも供給されます。

2.1.2 直流変圧器(DDCU)
 DDCUは直流切替器(DCSU)から送られた140~160Vdcの電力を123±2Vdcに保ち6.25Kwの電力をP6トラスの各機器へ供給することができます。

2.1.3 蓄電システム
 DDCUからの電力は上部と下部デッキにそれぞれ3セットずつ合計6セットある蓄電システムに供給されます。各蓄電システムはバッテリー充放電ユニット(Battery Charge/Discharge Unit:BCDU)と2基のバッテリーアセンブリから成ります。 BCDUは日照時にはバッテリーに充電し、日陰ではDCSU経由で安定化した電力を供給します。  BCDUの充電能力は8.4kw、放電能力は6.6kwあり、さらにバッテリーの状況をモニタしたり、電源回路の異常からバッテリーを保護する機能もあります。BCDUは制御機器アセンブリのコンピュータにより制御されます。

 各バッテリアセンブリは38個の軽量ニッケル水素電池と制御部から成り、直列に接続した2基のバッテリーアセンブリで8kwの電力を蓄えることができます。バッテリーからの電力はBCDUと直流切替器経由でISSに供給されます。バッテリーの設計寿命は6.5年であり、35%の放電深度で38,000回以上の充放電をすることができます。ニッケル水素電池は重量当りの蓄電能力が大きいことと、ハッブル宇宙望遠鏡でも使用されているなど、1970年代からの使用実績が買われて採用されています。


2.2 熱制御システム
 過酷な宇宙環境下で制御機器アセンブリの電子装置を正常に稼働させるために太陽電池熱制御システム(PVTCS)が使用されます。PVTCSはコールドプレート(冷却板)8枚、2基のポンプ制御システム(Pump Flow Control System:PFCS)、ラジエータ(Photovlitaic Radiator:PVR)から構成され、冷媒としてアンモニアを使用します。

2.2.1 コールドプレート(冷却板)
 コールドプレートは制御機器アセンブリ(IEA)の構造体の主要部分であり、IEAの各装置からの排熱が、コールドプレートとORU(軌道上交換ユニット)双方についているフィンを通してコールドプレートに伝達されます。

2.2.2 ポンプ制御システム(PFCS)
 PFCSは熱制御システムの心臓部です。ポンプ、バルブと、ポンプ制御部からなり、冷媒であるアンモニアの流量を制御して温度を制御します。熱制御システムは軌道を1周する約90分間に6,000ワットを放出することができ、IEAのコンピュータにより制御されます。

2.2.3 ラジエータ
 ラジエータは7枚の放熱板から成り、軌道上で展開されます。上部下部各デッキのIEAからの、独立した冷媒の流路が2系統、7枚の放熱板に組込まれています。このラジエータで合計14kwの熱量を宇宙空間に放出することができます。


3.ロングスペーサ(LS)
 ロングスペーサー(LS)は、米国実験モジュールの初期の冷却システムとしての役割と、今回取り付けるP6トラスの太陽電池パドルと将来取り付けるP4トラスの太陽電池パドルとの距離を保つという2つの役割があります。

 ロングスペーサは制御機器アセンブリ(IEA)の熱制御システム(PVTCS)とほぼ同様な熱制御システム(Early External Active Thermal Control System:EEATCS)を備えており、高出力のポンプ制御システム(PFCS)、ラジエータ各2セットづつで構成されます。このシステムは2001年1月に米国の実験モジュールであるデスティニーがISSに取付けられてから暫くの間、デスティニーの冷却システムとしての役割を果します。
 熱制御システムの排熱能力は軌道を1周する間に4,000ワットであり、制御機器アセンブリのコンピュータにより制御されます。

 一方、今回の4AフライトでP6トラスが取付けられるZ1トラス上の位置は仮の位置であり、P6トラスは13Aフライト以降に本来の位置であるP4トラスの隣りに取付けられる予定です。P4トラスにもP6トラスと同じ型の太陽電池パドルがあるので、P6トラスは相互の距離を保つという役割も果すことになります。


最終更新日:2001年 2月 5日

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