|
||||||
前回の訓練レポートでは、無重量環境訓練施設(NBL:Neutral Buoyancy Laboratory)で船外活動作業者との共同訓練が行われ、船外活動手順の開発や検討を行っている様子をお伝えしました。ロボットアーム操縦者にとって、船外活動作業者との共同訓練はとても大切です。平成12年 6月 7日、若田宇宙飛行士はSTS-92の船外活動作業者の1人、ピーター (ジェフ) ワイゾフ宇宙飛行士と、VRラボ(Virtual Reality Laboratory)を使って訓練を実施しました。 VRラボはヴァーチャルリアリティー(仮想現実)技術を応用した訓練設備です。船外活動作業者は、HMD(Helmet Mounted Display)という特殊なヘルメットをかぶることにより、コンピュータで生成したコンピュータグラフィック(CG)画面の中の世界で訓練を行います。手足には写真のように、特殊なセンサーが取り付けられているグローブを装着し、手足の動きも忠実にCG画面の中に投射されます。 VRラボではロボットアームの動きもCG画面に投射することができます。つまり、若田宇宙飛行士が操縦するロボットアームと船外活動作業者の動きが同じCG画面の中で展開していくわけで、宇宙飛行士たちは仮想現実の世界で訓練をしているとも言えるわけです。 仮想現実といってもVRラボのコンピュータで生成したCG画面のフィデリティー(忠実度)は大変高く、スペースシャトルのペイロードベイ(貨物室)や宇宙ステーションの各エレメントは、細部にわたるまで忠実に再現されています。軌道上でのいろいろなシチュエーションをほとんどの視点から見ることができ、たくさんの乗組員が「軌道上での実際の作業と遜色なかった」とコメントを残しています。 SAFERのDTO STS-92では、4回の船外活動を予定しています。そのうち4回目の船外活動の中で、本来の予定されていた作業が終了して時間に余裕がある時、SAFER(Simplified Aid for EVA Rescue)の開発試験ミッション(DTO:Development Test Objective)を実施することになっています。この開発試験ミッションも、ロボットアーム操縦者と船外活動者が共同で行う必要があるので、乗組員同士の連携プレーとチームワークが要求されています。 若田宇宙飛行士はこの日、このSAFERの開発試験ミッションを実際に軌道上で行うワイゾフ宇宙飛行士と共に、軌道上での協調作業時のロボットアームの軌跡や位置・姿勢、お互いの手順などを確認し合い、技術的な妥当性を評価・確認しました。 VRラボは、時間のかかる特別な準備が特に必要無いため、多忙な宇宙飛行士にとっては時間の節約にもなり、それが利点でもあります。若田宇宙飛行士も、NBL訓練で納得がいかなかった点や再確認したい点などをVRラボで再度実施したり、ロボットアームの操縦をするにあたってのフライトデータの作成などに頻繁に利用しています。
最終更新日:2000年 6月 22日
|